大家
現代ファンタジー異能バトル
2024年08月26日
公開日
30,773文字
連載中
無法都市の治安維持方法
数年前、突如として全世界に出現し始めた【能力】という概念。人が意のままに炎や風を操ることができたりするその力は神の力とまで言われた。
だが、そんな力は善人にも悪人にもいきわたり全世界の治安は崩壊した。それを日本政府はとある方法で沈めることにしたのだ。
【異能都市】
能力者に階級制度を作り、一定の階級以上の能力者を強制的にその都市に移動させることで異能都市外の治安の維持に成功したのだ。
では異能都市は?
日本政府は異能都市に8人の人物を派遣し治安の維持を図ったとされている。だがそのうちの7名は失敗し命を落とすことになったのだ。
だが残った一人の圧倒的な能力と人望によってとある組織が形成された。それが【治安維持局】である。
本来の法律が守られないこの能力至上主義の都市においてその組織は独断で治安の維持を図っているのだ。
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「いたぞ!」
治安局の男が叫ぶ。
「クッソがぁ!」
俺は治安局の人間から逃げていた。
妻を殺され娘を殺され、生きる目的を復讐へと変え、妻と娘を殺した奴らを殺すことに尽力してきた。
だが結果は失敗に終わった。
後ろを振り返ると俺を発見して叫んでいた男たちがいる。
(違う…あいつらじゃない)
殺すべき相手の情報をつかみ、いざ根城へと侵入するとそこには信じられない光景があった。
武装した暴力団たちだったものがそこら中に倒れていたのだ。
(なんだったんだよ…畜生!)
その死体の山の真ん中にはとある男が立っていた。
「ここまでくれば…」
追っ手を撒くことができたと判断した俺は小さながれきの山に腰を下ろす。
その時だった。
「お前だな」
「!?」
俺はがれきの山から転げ落ち、急いで声のするほうを見る。
そこには特徴的な白服を身にまとった男…ついさっき、暴力団の亡骸の山。それを踏みつけたっていた男が目の前にいた。
「ああ…俺もそっちに行けるのか…」
最後に愛する妻と娘の顔が脳裏に浮かんだ。これほど明確な死を目の前にしてわかる。俺の能力を使ったところでこいつには傷一つも付けられやしない。
頬に涙がつたう感覚を最後に俺の意識は消えたのだった。
無法都市
目の前には涙を流しながら息絶えた男がいた。
部下からの報告を受けとあるビルに暴力団の拠点があるということで乗り込んでいた時だった。
何やら覚悟を決めた顔で入ってきた男がいたのだ。
暴力団の残党かと思ったのだがおそらく違うのだろう。男には弱いながら殺気が感じ取れた。
「お前は被害者側だったか…」
俺はポケットからスマホを取り出し部下たちに指示を出す。
出し終えたところで、俺の後ろから一つの声がした。
「お疲れ様ね」
その声に振り向き声の主を確認する。
「なんだ、お前かシャーウィット」
そこには腰にサーベルを刺し茶色のマントを身に着けた女がいた。さながら女騎士の格好をしているコイツはシャーウィット。
俺と同じ治安維持局の人間だ。
「なんだとは何よ…私はあなたが単独行動してるって聞いて探したって言うのに」
シャーウィットがやれやれと首を振る。そういえば単独行動するって報告してないな…
「報連相は組織の基本でしょ?あなたにもきっちりやってもらわないと」
「悪かったなシャーウィット」
俺は頭をかきながら申し訳なさそうに言う。
「思ってないわね」
「なぜバレた」
見破られてしまった。
さすがはランクAの能力者治安局員というのだろうか。
この世界には能力という概念があり、危険度によってランク分けされている。
存在するランクはD~Sだが、Sランクというのはとびぬけている能力者に与えられる称号なため一般的にはAがトップとされている。Bランクの能力者が一番多く、順にC、D、A、Sの順で数が多い。
一番数が少ないSランクは現在治安維持局の幹部である7名のみといわれている。
もっとも手配されていない犯罪者の中にSランク能力者もいるかもしれないが…
「まぁいいわ」
様々なことを思考しているとシャーウィットがそんな言葉をこぼす。
「いつものことだし…次からちゃんと気をつけなさいよ?」
そう言い残し少女はぼろぼろの建物の上に飛び乗り、建物から建物へ飛び移ってどこかへ行ってしまった。
「飯でも食うか」
そんなことをつぶやきながら取り残された俺は本部へと帰還するのだった。