第四部☆木星のメイ
第三章☆大団円
ラッカーは人々を操って、太陽系の勢力構図を思うがままに描いていた。
「ミリー・グリーン。お前は随分協力的になったな」
ある日ラッカーがミリーに言った。
ミリーは産後しばらく抵抗ばかり続けていたが、ある日を境に協力的になり、いつしかラッカーの右腕的存在にまでなっていた。
「そうですね。・・・そういえば、以前、メイが、メイとロカワさんの実の父親がラッカー様だと言っていたけれど、本当ですか?」
すると、ラッカーは腹を抱えて笑った。
「メイには催眠暗示をかけてあってな。最近あれはどこかへ姿を消しているが、あの程度の人間ならいくらでも代わりがおる」
「催眠暗示?・・・では本当の子どもではないの?」
「そうだ」
その言葉にミリーはぶるぶると体をふるわせた。
「どうかしたのか?」
「ラッカー‼」
隙を見せていたラッカーはミリーから短剣で急所を突かれた。
「ぐうっ」
ミリーは両手についた大量の血を見つめた後、絶命したラッカーを憎々しげに睨んだ。
「ミリー。早く逃げないとラッカーの部下に狙われるぞ」
ロカワが叫んだ。
「いいえ。もう、ここで終わりにするわ」
そう言って、ミリーは自分で自分の喉を突いて死んでしまった。
「・・・ミリー。その姿は本当に大好きでした」
ロカワはそう呟いて、もう振り返らずに自分の保身を図った。
「メイ。どうかしたの?」
幼い少女が尋ねた。赤銅色の髪と緑の瞳をもつ少女はミリーとリラシナの娘だった。
パイソンがリラシナを手伝って子育てをしていたのだが、ある日メイがひょっこり現れて、少女を目の中に入れても痛くない程の可愛がり方で接して、ここに居ついてしまっていた。
「・・・私の大切な人が今亡くなったの」
メイはぽろぽろと涙を流した。
幼い少女はメイの長い黒髪を撫でてあげながら、泣き止むのを待った。
「私は、彼女のことを本に記しておこうと思うわ」
「私も手伝う‼」
「ありがとう」
涙を拭って微笑んだメイ。
少し離れてそれを見ていたリラシナは、不意にメイを抱きしめた。
「何をするの?兄さん」
パイソンがびっくりして言った。
「わからないのか?このメイは、ミリーなんだよ」
土星の武器商人のロカワ氏がその科学力で、ミリーとメイの中身を入れ換えていたのだった。
「リラシナ!きっとわかってくれるって信じてた」
「ミリー!もう離さないよ」
娘がきょとんとして両親を見上げていた。
第四部☆完