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第五章☆俺のリラ

   第三部☆水星のキオ

      第五章☆俺のリラ

「ねー、水星降下したら、ショッピングしたいー」

マリラがねーねーとさっきからうるさい。

キオは知らん顔で地上の管制塔と連絡をとった。

「ストロベリー号、着陸許可出ました」

「待ってました」

両手を握って小躍りせんばかりにキオとマリラははしゃいだ。

「久し振りの水星だから、おやっさんに会いに行けよ」

「えー」

「そしたらショッピングでもなんでも好きにすりゃいい」

頑固な父親に会いに行くように勧められて、マリラはぶすっとした。

「一人で会いに行きたくないよ」

「じゃあ俺もついていくから」

「何で?」

「何ででも!」

しょーがないなーとマリラは折れた。


「革命軍の残党の隠れ家に用があるんです。僕らはそちらへ向かいます」

リラシナたちはそう言って地上に降りるとキオたちと別れた。

「おい、マリラ。報酬ははずむって言われたけど、予想以上にたんまりくれたぞ」

「水星に寄った後、木星まで行くから、余計に気を使ってくれたんだよね。今回は良い客乗せたね」

「お前もそう思うか?」

二人は軽装でマリラの実家へ向かった。

無口で無愛想なマリラの父親は、娘の帰郷を喜んでいるようだった。

「酒を付き合ってくれ」

キオはマリラの父親と杯を交わした。

マリラは久し振りの台所に行き、何かつまみになるものを作ろうと思って、がさごそ材料を探した。

「辛いものと甘いもの両方用意すりゃいいよね」

赤いジャムの壜を開けようとしたがなかなか開かない。

「く・・・この・・・」

力をこめて蓋をこじ開けようとした時。

ばんっ。

大きな音が響いた。


心配したキオが台所に駆けつけた。

「おい、マリラ」

マリラが倒れている。胸が赤く染まり、意識がない。

キオはてっきり撃たれたのだと思い、マリラの服を脱がせ、傷口を見ようとした。

「何・・・してんの?」

「えっ⁉」

気がついたマリラの胸には傷なんてどこにもなかった。

ばちん。

キオの顔に手形がくっきり残った。

マリラの父親は何も言わなかった。


「ショッピング」

「行くのか?」

「うん。何か買って」

「何を?」

「何かを!」

「例えば?」

「アクセサリー欲しい」

いつもだったら『豚に真珠』とか言って済ますのに、今日はやけに素直に宝石店へ向かった。マリラはキオをまじまじと見た。

「金・銀・プラチナ、どれだ?」

「プラチナ」

「一個くらい良いだろ」

「うっそ⁉」

「気が変わらんうちに買え」

「きゃーっ」

目移りしていざというとき選べないマリラに、キオは自分が選んだペンダントを買ってくれた。

「ありがと」

「いや」

そっぽを向いて歩いて行くキオ。遅れたマリラは小走りに追い付くと、マリラはキオと手を繋いだ。

「本当に死んだかと思ったぞ。びっくりした」

「・・・ごめん」

「俺のリラ。リラ、マイ、リラ」

「えっ」

いつか言ってた話、ちゃんと聞いてたんだ。とマリラは胸が一杯になった。

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