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第五章☆革命を起こそう

   第二部☆金星のリラ

      第五章☆革命を起こそう

 「リラシナ、お願いここを開けて!」

貯水池の柵のゲートの前でミリーがインターホンに向かって何度も叫んでいた。

・・・カタン。

中から憔悴した顔のリラシナが現れた。

「何の用だい?」

「皆、おかしいの。一見普通に見えるんだけど、突然喧嘩を始めたり・・・殺気立ってる」

「・・・。中に入って」

 二人は貯水池の横の土手に並んで座った。

草が風になびいて揺れている。

「政府からの要請で、ナノマシンを水の中に大量に投入したんだ」

「何ですって?」

「人々が争うように器機をセットしてある」

「リラシナ!」

ミリーはリラシナを押し倒すと、その首筋に両手をかけた。

「僕を殺すかい?そして一人で政府の目論見を阻止するつもりでいる?」

「わた・・・私は・・・」

ぽたぽたぽたっ。

ミリーの両目から涙が溢れて、倒れているリラシナの顔の上に落ちた。

「何で泣く?火星の王女」

「私は・・・できない。あなたを殺せない」

「なぜ?」

「だって・・・」

大粒の涙がぼろぼろこぼれた。

「だって、あなたを愛しているもの」

「⁉」

リラシナはまじまじとミリーを見上げた。

ミリーの中に入っていたナノマシンは涙の中にまぎれて外に出た。彼女は平静を取り戻そうと一生懸命だった。

ミリーの両手が離れて、リラシナは上半身を起こした。

「ミリー」

リラシナはそうそっとささやいて、二人は口づけを交わした。


 「僕の予知能力の未来が変わってしまった」

そう言って、リラシナはミリーの髪に何度も触れながら微笑んだ。

「君は地球にいたことがあるんだってね?」

「ええ」

「地球では、1日24時間、1年12ヶ月。だから火星や金星と時刻が・・・暦が・・・全く違う。地球で25時とか13月とか言うと不思議な感じがして、その時間の間隙で特別な何かが起こるような予感がする。『午前0時の合わせ鏡』とか『大晦日の真夜中に一年の旅』とかいろんなお話があるらしい。・・・しかし、ここは金星だ。しかも今はれっきとした13月。13月には革命が似合うと思わないかい?」

二人は微笑み合った。

「私たちなら革命を起こせる」

「ああ。さあ、行こう」

二人は立ち上がった。

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