第一部☆火星のミリー・グリーン
第四章☆第二王子ケイン
ミリー・グリーンは攻撃艇の迎撃にあたっていた義兄のケイン王子の元へ向かった。
「ミリー!攻撃艇の掃討完了だよ!」
好青年のケインはミリーを溺愛していた。
「おめでとうケイン。お父様とお兄様に自慢できるわね」
微笑むミリー。
「それで?なんでそんな平民服姿なんだ?」
「これから城下街の視察に行こうと思って」
「手頃な乗り物がないよ」
「メーヴェは?」
「スタビライザが壊れていて、飛行が不安定だよ」
「それで構わないわ」
「全く、無茶するなぁ」
ケインは朗らかに笑った。
ミリーは数ヶ月しか年の違わない義理の兄をいとおしく見つめた。
父王には実子がいない。
長男のアランは戦術の才能を見込まれて養子になった。
続いて、政治に詳しいケイン、気迫のミリー、高貴な血筋のリリア、と迎えられた。
地球のスラム街出のミリーを長兄と妹はさげすんだ目で見ていたが、次兄のケインだけは友愛の情を示してくれていた。
「ミリーは存在感がある。本当に生きているっていうのを体現している」
と、ケインは思っていた。
「行ってくるわ。・・・ケイン!」
「なんだい?」
「また会いましょう」
「?どういう意味」
ミリーは笑顔で手を振り、メーヴェに乗って空に舞い上がった。
ドーム状に大気を包む火星の空。眼下に街が広がっている。
金星からの攻撃で被害が出ているようだった。
「ごめんなさい。今の私は、メイを助けてすぐにでも空港に向かわなくちゃならない‼遠征に出ているお父様たちが王宮に戻ってしまったら、その時点でこの計画は水の泡になってしまう」
ミリーはそうひとりごちた。