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第12話

「相手のスナイパーはリロードに時間がかかるタイプだからね。一発撃たせて近づくのが理想の動きだね」


私は真下に銃口を向け詠唱する。


「エンチャント:ノックバック」


ただでさえ反動が強い銃にノックバック効果を重ね掛けをし、真下に銃口を向けている私を見ればなにをしようとしているかぐらいわかるだろう。


「あいきゃんふらーい~」


片言ですらない英語でそうつぶやくと私は思いっきりトリガーに割り当てられているキーをたたいた。


生い茂る木々より高く上がったアバター。この位置を特定できるのは離れた位置で私を見ていたスナイパーだけだろう。

前衛4の後衛1ならば弾は1発だろう。


そう考えていた刹那が張られた。

しかもその弾幕は下から張られている。


「これを待ってたんだよ」


私はアバターの下側にシールドを張り、耳を澄ます。

相手は身動きの取れない空中、そのうえシールドを張るために壊死している腕で無理やりシールドを張っており使えるのは片腕のみ。

狙撃手から見てみれば絶好の狙撃チャンスだ。


目をつむり視覚情報を消す。音のみに集中するために。

下から撃たれる銃の音。弾幕がシールドに当たる音。宙を舞うアバターに当たる風の音。そして…



私は即座に目を開きナイフをとっさに装備し音と自分の間に置く。

うまくいく保証もなければうまくいった後どうするかなんて考えちゃいない。


ノリと勢いでその作戦を決行した私の面日飛び込んできたのは、鈍い音を立て形を崩しながらも弾道を必死にずらし終えたナイフの姿だった。


「成功~」


私はナイフを回収しつつそう宣言した。

一発撃ったスナイパーはリロードに大きなスキが生じる。壁役はいま自分の真下に陣取っており狙撃役の周りにはいない。そして空中ここからなら狙撃手がいる場所に届く。


ノックバックをエンチャントした銃を加速装置として使い、狙撃手までの距離を一瞬でつめる。


「なん…なんなんだ!お前は!」


狙撃手が顔をゆがませながら言う。


「ただのゲーマーだよ?」


そんなことを口にしつつ私は曲がったナイフを敵の首に刺す。

その瞬間敵のアバターは光り、消えていった。


「ドロップは狙撃銃か…かっこいいねこの銃。けっこうカスタムされてる」


4つの足音をどうするか考える予定だったがこの銃がドロップしてくれるのなら考える必要はなさそうだった。


「あのナイフ結構お気に入りだったんだよなぁ…まぁこれはお詫びとして使わせてもらうよ」


私はそうつぶやくと狙撃銃を向かってくる足音に向けるのだった。

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