「おっと…前言撤回…らしいね」
銃声が鳴り響いたと同時、私は即座に回避行動をとり銃声の方向に障害物を作る。
「どうやらPKが来たようだね」
普段この時間帯は人が少ない。運が悪いのかそれとも…
「おっと…」
身を隠していた大木を貫通させる攻撃が次々と飛んでくる。相手の攻撃は確実に隠れている私の位置が見えている動きだ。
「なるほどね」
足音からして敵は5人パーティ
そして今の配信の同時接続数は6になっている。
「まぁ関係ないけど」
私はまたもや的確に私の居場所めがけてくる攻撃をかわす。
この攻撃はおそらく対物ライフルによるものだろう。
「位置がわからない後衛を前衛をかわしながら落とすのは得策じゃないな」
数々のゲームでは前衛のサポートをするのが後衛の仕事であるのが一般的だ。だが、今回の相手は前衛が後衛をサポートしている。よほど腕の立つ後衛なのか、前衛に自信がないかの2択だ。
「まずは…位置特定が先か」
私は先ほど着弾した弾痕を見る。
「方角的にはあっちか…リーンでかわせるかな?」
リーンとは、上半身だけを左右にずらし索敵や打ち合いを有利に進めるテクニックだ。
(スナイパーのような単発武器のミスショットをリーンで誘発することができればどこから補足されてるかがわかるんだけどな。)
注意点としては弾速が早いため即座に身を引かないと被弾してしまうことだろう。
「前衛の足音も聞き逃さないようにしないと…」
前衛の足音はいまもなおなり続けている。
ヘッドフォンから伝わる音に神経を注ぎ射線の隙間を縫うように先の射撃が放たれた方向に詰める。
すると前衛がこちらの動きを共有したのか高レートの対人用銃による弾幕が展開された。
向こうはこちらを一方的に視認してる状態での奇襲射撃。さすがにそれをかわすことは困難だ。
「まぁ…位置がわかればなんてことないけど」
あくまで困難なのは奇襲攻撃であって、弾幕じゃない。そもそもこの狭い森のマップで弾幕を張ったところでたいていは木に判定を吸われることになる。
「この方向で壁が出てきたってことは…本命はこの先か…」
万が一にも備えて先に壁を消すことにしよう。
そう結論を素早く出し私は、愛用の
「私は音でフィールドを索敵できるからね。一番相性のいいのがこの銃なんだよ」
私は総配信で宣言しその銃口をすぐそばの大木に向け射撃した。
その弾丸は木にめり込むことなく
その銃はこのゲームにおいてその超弾性と殺傷能力の低さからゴム弾といわれる弾丸を射撃できる。
他の銃の威力は使用弾薬によってダメージが決まるが、ゴム弾1発のダメージは銃のレアリティに依存する。
「まぁ私はこの銃を手に入れてから銃の修繕スキルばかり上げたからね。全サーバー1位のスキルの高さだと自覚してるよ」
私はどの銃も反動制御が大きくエイムが合わせられない。だが、このハンドガンは反動がほぼないのだ。かといってこのハンドガンが強いというわけではない。本来のダメージは土の対人用武器よりも弱く、人に当たるか一定回数跳弾し続ける特性のせいで見方や地震にも被弾の恐れがあるのはもちろん、そもそも敵に当てるのに相当な連弩と知識がいる武器でもある。
「まぁ…使いこなせたら強いっていうのはどの武器にも言えることだからさ」
そう詠唱し、私はその弾丸を後ろから聞こえてくる被弾音の方向に射撃するのだった。