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第3話

メールを見終えた私は静かに息をつく。


「このメール…違和感がある」


書いてあるレースという単語。これは今盛り上がっているカギが商品になったレースで間違いないだろう。

だけど『誰が最初にクリアすることができるか…楽しみにしております。』という文。

まるで最初にクリアしたプレイヤーに何かしらあるような言い方だ。

そしてメール内で強調されている様々な言葉に、『新たなステージへ導ける人材』…


「やっぱりメールは重要そうだね」


いろいろと考察していると、レースを終えたプレイヤーたちのつぶやきだろうか…全体チャットが更新されていた。



ーーーーーーーーーーーー


「無理無理」


「あれクリアできる奴いないだろ」


「そんなにやべぇの?」


「マジでヤバイ」


「誇張してるだけだろ?ID違うし」


「死んでリセットされてんの」


「リタイアは?」


「できないから今のレース参加者全員死んだだろ」


「全員!?スタダ勢はガチ勢多いだろ?」


「それだけヤバイってことだよ!ったく…アカウント育成してくるわ」


ーーーーーーーーーーーー



「なるほど…」


スタートダッシュ勢が全員アカウントロスト…どう考えたって普通のレースじゃない。


「うーん…レースゲームで運営を超える…」


運営がテストプレイをしたクリアルートをなぞれば基本的にどのゲームもクリアできる。

だが、今回は当たり前だがクリアルートは公開されていない。だとすれば…


「初見で予測するしかない…か」


そんなことを考えるととある通知を受け取る。


『レース時間になりました』


どうやら、思っていた以上に時間がたっていたらしい。

レース会場にリンクを踏みワープする。


「ここがレース会場…」


(視点が強制的に一人称視点に固定された)


レースまで少しの準備期間がある事を確認して私はスタート地点の観察に入る。正面に見えるのはスタートラインとレースルートになるであろう廃墟の町並みが広がっていた。

そして後ろは断崖絶壁の崖になっている。レースというからにはこの崖は、この位置にとどまるとは思わないほうがよさそうだ。


(車も決めなきゃな…)


車の選択画面を開きすべての車のステータスを見る。


「うん?」


一つ、不審な車があった。

このゲームは見たところ、【安定性】【スピード】【耐久力】の3つのメーターが存在する。

上に出てくる3つの車はそれぞれのステータスが特化している車、そしてもう一つ、すべてのパラメーターが均等になっているもの。

だが一つ、異様なものがある。


「安定性0スピード38耐久力0…?」


安定性と耐久力が皆無。かといってスピードが突出しているわけでもない。

しかもこの車だけパラメーターが数値で指定されている。


「どう考えても異常…これにしてみるかな」


私が車を選んでいると、どうやら他プレイヤーがスタート地点の前のほうを取ってしまっている。


「なら…試してみるかな」


私は一番後ろの位置につく。


「この大会…私が取る」


そんな私のつぶやきは、レース開始のブザーにかき消されるのであった。

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