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第233話 赤ずきんちゃんと狼男さん3

■その233 赤ずきんちゃんと狼男さん3■


 ミタカさんのワンコの秋君です。オウメちゃん、今日は本屋さんのお手伝いなんです。だから、皆で駅の横の本屋さんに来たんですけど…。この本屋さんがこんなに混んでるの、始めて見ました。お店入るのに、1、2、3… 10人ぐらい並んでます。皆、お化けの格好した子どもです。


「白川の姉ちゃん、やっぱ人気だな」


「お菓子、残ってるかな?」


 黄色のクマさんの心配は、やっぱりお菓子ですね。それにしても、駅から出てくる人も、ほとんどお化けですねぇ~。


「なあなあ、ああいうの、いいのかな?」


 クモ男君が、本屋さんの近くにある街灯に隠れながら、本屋さんを見ている人に気がつきました。身体中、包帯だらけ。病院から逃げてきちゃったんですかね? とっても大きなカメラで、お店の中を覗いてますよ。


「盗撮だ!」


 お化けの子が慌てても、トウリュウ君は慌てません。


「タカ兄ちゃん一緒だから… ほら、出てきた」


 トウリュウ君の言う通り、お店から大きな人が… 人…


「うわああああ」


「キャインキャインキャイン」


 お友だち達もボクも、悲鳴をあげちゃいました。カコ君、カコ君、 もっとしっかり抱っこしてください!


「ちょ、ちょっと秋君、爪、爪痛いよ」


 でも、でも、とっても大きなワンコですよ! しかも、カコ君達みたいにお洋服着て、後ろ足だけで立って歩いてるんですよ! お耳もピンとしてるし、尻尾も大きいです。


「秋君、落ちついて」


 カコ君、そんなこと言っても、怖いんですよ~。


「タカ兄ちゃん、相変わらず瞬殺だ」


「狼男、つえええ-!!」


 ほら、あの包帯だらけの人、一回お腹蹴られて動かなくなっちゃいましたよ。次は、ボク達が食べられちゃいます! ううん、それはダメです! トウリュウ君とカコ君は、ボクが守るんですから!


「秋君、あれ、タカ兄ちゃん。秋君の、ご主人様」


 … トウリュウ君、今なんて? わわわ、カコ君、大きいワンコさんに向かって行かないでください。ボク、まだ戦う準備が… ボクの牙と爪で、敵うかなぁ…


「タカ兄ちゃん」


「お疲れ様~。スッゴい人気だね」


 カコ君もトウリュウ君も、ご主人様の名前呼んでますけど、ボクは騙されないんだからな! 包帯だらけの人から、早く足をどけて、取り上げたカメラを返してあげてください。


「オウメがな。… 秋は、何で俺に威嚇してるんだ?」


 それ以上、カコ君やトウリュウ君に近づくな! 咬んじゃうぞ!


「ぜったい、タカ兄ちゃんって分かってない」


 トウリュウ君、騙されちゃ駄目です!


「… 匂い」


「タカ兄ちゃん、今日は特殊メイクしてるから、ムリじゃないかな? 商店街の匂いも違うみたいで、秋君、さっきからお鼻気にして触ってるから」


「秋君、落ちちゃ… った」


 落ちたんじゃないですよ、下りたんですよ。これ以上トウリュウ君とカコ君に近づいたら…


「皆、いらっしゃい」


「お姉ちゃん、お疲れ~」


「わんわん」


 お店から、赤ずきんちゃんの格好をしたオウメちゃんが、かっごを下げて出てきました。朝、オウメちゃんがお仕度してる時、トウリュウ君が絵本を見せてくれて、


「赤ずきんちゃん、読んであげるね」


って、教えてくれたんです。ハッ! この狼は、赤ずきんちゃんを食べるつもりですね! オウメちゃん、危ないです!


「お姉ちゃん、お店は?」


「イベント参加の子が多くて、お店が回らないから、おじさんに戻ってきてもらったの。お店、そんなに広くないからね。お菓子配りとスタンプは、外でやるね」


 オウメちゃん、ニコニコしながらボクを抱っこしてくれました。うふ、オウメちゃんの抱っこ、落ち着きます。オウメちゃん、今日はクッキーの良い匂いがします。


「秋君、龍虎りゅうこを守ってくれて、ありがとね。この狼男さん、三鷹みたかさんだから大丈夫よ。

 梅吉兄さんと笠原先生も、今日はお化けの格好してるんだよ。先生達、テストの採点で三鷹さんのお家にお泊り中だから、朝会ってないでしょ?」


 オウメちゃんが言うなら… でも、いくらクンクンしても、ご主人様の匂いしないです。ウメヨシさんやカサハラ先生も、今日はお化けですか…


「三鷹さん…」


「ああ」


 オウメちゃんが駅の方を指さすと、狼男のご主人様はススス… って通行人のお化けにまぎれちゃいました。


「ギャッ!!」


「ギャッ!!」


 で、すぐに男の人の悲鳴が聞こえました。2人分。


「こういう日はね、変な人も出て来るから、本当に気を付けてね。梅吉兄さん達が警備で回ってくれているから、まずは逃げるのよ」


 ご主人様、また一人やっつけたんですね。


「はーい」


 皆、片手をあげて、素直にお返事です。トウリュウ君とカコ君は、腰に下げた防犯ブザ-も見せました。


「じゃぁ、お菓子をあげるから、列に並んでね」


 ニッコリ笑う赤ずきんちゃんは、とってもとっても可愛くて、気が付いたらお化けの子ども達だけじゃなくて、大人もオウメちゃんに見とれています。それを、オウメちゃんの横に戻って来たご主人様が、静かに威嚇していました。ご主人様、本当に番犬ですね。





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