■その199 休日のご馳走作り■
8月5日、日曜日。今日は、主のアルバイトはお休みです。アルバイトを始める前に、この日だけは確実にお休みをくださいとお願いしていました。
主、今朝も早起きで
今は夏休みですけど、学校で受験生用の講習会や、図書室を解放しているので、桃華ちゃんや佐伯君はいつも通り学校に行きます。ついでに、ストレス発散に、やっていれば部活にも参加してきます。3年生担当の梅吉さん達先生組も、講習会や個別指導のために学校へ。大人組はお店でお仕事、双子君達はお友達と遊びに行きました。
主にとってはいつもの休日です。洗濯して、家中のお掃除をして、双子君や大人組の昼食を作って… 最近、アルバイトに集中していた主は、どこかホッとした気持ちになりました。
お昼が終わった後、クーラーが効いてるリビングで双子君とワンコの秋君はお昼寝です。それを優しく見守りながら、主は腕によりをかけて夕飯の仕込みとケーキ作りです。
調子外れの鼻歌を歌いながら、主の手は止まりません。自分家のキッチンだけじゃなく、東条家のキッチンも使っています。
「お姉ちゃん、オヤツ食べたいー」
いつの間にか起き出した双子君達にオヤツをおねだりされて、主は冷蔵庫から桃のゼリーを出しました。もちろん、手作りです。
主は双子君達とオヤツのゼリーを食べて、ひと休憩。その後、双子君達は秋君と一緒に庭で水遊びを始めました。
夕方、皆が学校から帰って来ます。皆、それぞれにエコバックを下げて。
「おかえりなさーい」
「ただいま~。笠原先生達、シャワー浴びてから来るって。私も、汗流してくるわ」
「ただいまー。良い匂い~」
夕飯の準備も佳境です。桃華ちゃんと梅吉さんは、主に頼まれた買い物を所定の場所にしまいながら、美味しそうな匂いにお腹を鳴らしました。
「お風呂、沸いてるよ。母さんや美世さんも、今日は早めにお店を閉めるって言っていたから、梅吉兄さんも先に汗流しちゃってね」
豪快なお腹の音にクスクス笑いながら、ローテーブルを片付け始めました。
「はいはい。
「「はーい」」
「わん」
「よし、秋君も入るか!」
テレビゲームをしていた双子君達は、秋君と一緒にお風呂に向かいます。秋君は、一緒に入る時はちょっと大きめの洗面器風呂です。それを見届けて、主は急いでお部屋から小さなモノを抱えて、家を飛び出しました。
行き先は、目の前のアパートの2階の一番端のお家…
「はい」
低く小さな声と共に、お風呂上がりの三鷹さんが出て来ました。髪は濡れっぱなし、上半身はタオルが肩にかかっているだけの裸で…
「あ… あの、その… これ!」
プールとか海とか、今まで何回か皆で行っているから、三鷹さんの半裸を見るのは初めてじゃないはずなんですけれど… 主は目の前にある三鷹さんの逞しい胸元に、一気に首まで真っ赤っかにして、胸元に抱きかかえていた物を勢いよく差し出しました。
「
「こ、これは、私のサンタさんに、渡してね。三鷹さんのプレゼントは、いつも通り美味しいご飯作ったから。早く来てね」
それは、目が覚めるような青くて丸い小鉢に植えられた、純白のホトトギスでした。三鷹さんが勢いに押されて受け取ったのを確認すると、主は勢いよく走って帰りました。そんな主の後ろ姿を見送って、三鷹さんは嬉しそうに微笑んで、ドアを閉めました。… 主、何でこの笑顔を見てから帰らなかったんですかぁぁぁ。
そんなこんなで、皆がリビングに揃う頃には、ローテーブルに所狭しとご馳走が並びました。
手毬寿司と手巻き寿司
ラムチョップ
ジャガイモ、カボチャのコロッケは丸く一口サイズ
ローストビーフ
鶏むね肉の大葉チーズ挟み焼き
桃とモッツァレラのビネガーサラダ
大葉とトマトの和風サラダ
ハニーマスタードチキンのグリル野菜サラダ
鮭と茸のマリネ
秋君には、いつものドックフードに味付けなしのお肉が追加
そして…
レモンムースケーキ
桃と紅茶のベイクドチーズケーキ
ブラックペッパーを効かせたクリームチーズタルト
「三鷹君、お誕生日、おめでとう!!」
皆で声をそろえてお祝いです。三鷹さん、大きく頷くのは毎年の事ですね。
美味しいご飯に、アルコールも会話も弾んでいます。主の力作は、見る見るうちに皆のお腹の中に消えていきました。皆で仲良く食卓を囲めること、皆が美味しくご飯を食べてくれる事に、主はとっても喜んでいました。
後片付けは美世さんと美和さんがしてくれると言うので、主は甘えて秋君のお散歩に行こうとしましたが…
「あ、梅兄ちゃんと行ってくるよ」
って、双子君がそこそこアルコールの入っている梅吉さんを、引っ張っていきました。秋君は自分のリードを咥えて、3人の後を付いて行きます。なので、主はゆっくりバスタイム。ミントを効かせたバスソルトを入れて、一日の疲れを取ります。
目を閉じると、美味しそうにご飯を食べる三鷹さんの顔が思い出されて、主はウフフフ… と声を出して喜んで、次の瞬間にはお風呂上がりの逞しい胸元を思い出して、体温を上げていました。
主、鼻血、出さないでくださいね。