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第184話 『ありがとう』を形にして・協力助っ人坂本さんの指導

■その184 『ありがとう』を形にして・協力助っ人坂本さんの指導■


 坂本さんの指導その1 『レディの準備は念入りに』


「レディのお肌や髪はデリケート。ウエディングフォトなんて、一生に何回も撮るものじゃないんだから、一番美しい一瞬を収めたいじゃない? なら、お肌や髪の準備を念入りにしなきゃダメよぅ。ヘアースタイルやお化粧、ネイルは当日だけど、やっぱり基礎を磨かなきゃね」


 高橋さん家のリビングは、主達7人でギチギチです。工藤さんの用意してくれたお夕飯は、お野菜と豚肉とお豆腐のたっぷり入った胡麻豆乳鍋。大人の飲み物はアルコール、主と桃華ちゃんは麦茶です。


「という事で、美和さんと美世さんのブライダルエステは、高橋に任せるわよ」


「いぇっさー」


 高橋さん、良く冷えた日本酒の入ったグラスを少し上げて答えました。


桜雨おうめちゃんと桃華ももかちゃんの作るお料理は、栄養バランスが良いから、東条家と白川家は肌艶もいいし吹き出物もないから、楽だわね。食事は大切なんだから。肌も髪も爪も、食べるものが体を作っているんですからね… って、あなた達二人はちゃんと分かっているものね。このお鍋も合格ね。栄養バランスも味も、いう事ないわ」


 坂本さんに言われて、主と桃華ちゃんは顔を見合わせて恥ずかしそうに微笑みました。工藤さんも嬉しそうにサラダを食べています。



 坂本さんの指導その2 『サプライズのターゲットは出来るだけ小人数で』


「これは単純。何人にも内緒で事を運ぶのは、難しいわ。生活を共にしている人なら、尚更よ。だから、ターゲットは絞り込むことね」


 坂本さん、ビールの500のロング缶、3本目です。


「父さんと修二叔父さんには、計画を話す… ってこと?」


 桃華ちゃん、お豆腐が気に入ったみたいです。主がせっせとお豆腐を、お鍋から小皿に入れてくれます。そして、工藤さんがせっせと、お豆腐をお鍋に追加していきます。先生組は、後学のためにと真剣に聞いています。


「そうね。修二さんが、ついポロっと言わないか心配だけれど『言っちゃったら、お父さんの事嫌いになっちゃうから』って、桜雨ちゃんが言えば、必死で気を付けるでしょう」


 坂本さんの言葉に、梅吉さん達が激しく同意しました。



 坂本さんの指導その3 『サムシングフォーを取り入れましょう』


「サムシングフォーってね、欧米の結婚式にまつわる風習の一つなの。次の4つの物を結婚式で身に着けると、一生幸せな結婚生活を過ごすことが出来ると言われているのよ。


1つ、サムシングニュー

何か、新しい物を身に着ける事。

これから始まる新婚生活に向けて、決意を新たにするため何か新しい物を用意するの。新しいことを始める時、良い事ばかりじゃないでしょ? 苦難も乗り切れるようにという意味合いがあるの。下着類やハンカチ、アクセサリーなんかでいいのよ。この日に、新しいのを下ろせばいいの。


2つ、サムシングオールド

何か、古い物。

花嫁の人生を今日まで導いてくれた母親や祖母が身に着けているものや、代々家族に伝わるものがあれば、それを用意。祖先の代から続く幸せを引き継いで、末永い夫婦生活を営めますようにという意味合いがあるの。母親が身に着けているものを花嫁が付けるのは、「代々続く幸せを引き継ぐ」っていう意味があって、イヤリングやネックレスが多いかな。もしくは、新郎新婦の思いでの玩具とか写真とか… 会場の飾りに入れてもいいのよ。


3つ、サムシングブルー

何か、青い物。

青は聖母マリアのモチーフで、清純な色とされているわ。青を表現することで、新郎に対する忠誠を表現するという意味合いがあるわ。これは、最近ポピュラーになって来たわよね。カラードレスやブーケをブルーにしたり、会場の花や飾りをブルーにしたり… これが一番簡単じゃないかしら。


4つ、サムシングボロー

何か、借りた物。

すでに幸せな夫婦生活を営んでいる先輩夫婦の持ち物を借りることで、その幸せにあやからせてもらうの。その夫婦が結婚式で使った小物などを借りるのがおススメね。リングピローやドレス用小物なんかが人気みたい。


 そして、サムシングフォーと合わせてやる幸せのお呪い、『6ペンス銀貨』。これは、花嫁の左靴の中に6ペンス銀貨を入れるという幸せのジンクスなの。あ、ペンスって、イギリスの補助通貨ね。今はこのコインは通貨として使われていないから、別の銀貨やレプリカを代用することが多いわね。この1つでも取り入れたらどうかしら?」


 滑らかに説明を終わらせた坂本さんに、皆は拍手を贈りました。


「てんちょー、ブライダルに転職っすか?」


 高橋さんなんか、ため息ついちゃいましたよ。


「何言ってるのよ!結婚式なんて、乙女の一大イベントでしょう!! 自分が主役! 自分が一番美しく輝く日よ! これぐらいの知識は乙女として当たり前じゃないの!!」


坂本さん、お酒、回ってます? 結構、興奮してますよね? 飲みきった缶を片手で握りつぶして、天井を見上げて叫びます。


「てんちょー、嫁に行くんすか?」


 でも、そんな坂本さんは珍しくはないから、皆は食事の手を止めません。高橋さんなんか、グラスのお酒2杯目です。


「行きたいわ! 美味しいうちに、誰か貰ってくれないかしら」


 坂本さん、4本目のビール缶のプルタブを開けました。


「熟したら、あとは腐るだけっすもんね」


「高橋、口から出た言葉は戻らないと、身をもって覚えなさい!」


 へらッとお酒を呑みながら笑った高橋さんに、坂本さんは襲い掛かります。皆は、ササっと阿吽の呼吸でテーブルを持ち上げて、見事な避難。アルコールの入った高橋さんは、逃げ遅れて坂本さんにコブラツイストをかけられました。


「ロープ! ロープ!!」


 体格差も手伝って、ぎっちり決まってます。


「サムシングフォーかぁ…」


「全体的に、練り直したほうがいいね」


 そんな坂本さんと高橋さんを見ながら、皆は楽しく食事を続けています。

そんな中、梅吉さんは…


「… このイベント終わったら、勉強してね」


 この言葉を、緑茶ハイと一緒に飲み込んでいました。



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