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第165話 修学旅行・ハウステンボス

■その165 修学旅行・ハウステンボス■


 修学旅行最終日は、ハウステンボスです。主と桃華ももかちゃんと佐伯君は、昨日のごたごたで皆に合流できたのは、お昼の少し前でした。



「大変だったねー。私、茉里奈まりなね」


 ランチのチーズフォンデュを頬張りながら、大森さんは言いました。


「ご、午後からだと、す少ししか遊べませんが、いっ一緒に回りましょう。

松橋有紀ゆきです」


 フワフワのオムライスを食べながら、松橋さんがニッコリ笑いかけてくれました。


「本当、白川さんにそっくりね。田中真希まきよ、よろしく」


 モッツアレラいりのトマトスパゲティを味わっているのは、田中さんです。


「皆、ありがとう」


 主は、チーズフォンデュを食べる手を止めて、深く頭を下げました。


「良かったね、和桜なおちゃん。お母さんがお迎えに来るまで、お姉さん達と遊ぼうね。こっちの2人のお兄さん達も怖くないから大丈夫よ」


 桃華ちゃんが、小皿にキーマカレーをよそいながら言います。


「で、こっちの大きなお兄さんが近藤君。目つき程、怖くないから大丈夫よ。で、こっちが… 昨日、会ってるから大丈夫よね?佐伯君よ」


 近藤先輩は、ハンバーグドリアとミートソースパスタを豪快に食べています。佐伯君は、ローストチキンと厚切りベーコントマトパスタを、こちらも豪快に食べています。


「白川和桜なおです。… あ、ありがとうございます」


 本日2回目の自己紹介です。和桜ちゃんは、オムライスを注文しました。因みに、秋君は主のリュックの中でいい子にお昼寝です。


「わ、悪いのは、誘拐犯です!」


「せっかくの長崎の旅が怖い思い出で終わっちゃうの、可哀そうだもんね。半日だけだけど、お姉さん達と遊ぼうね」


 緊張している和桜ちゃんに、松橋や大森さんがニコニコと言いました。


 和桜ちゃんは、住んでいる商店街のくじ引きで長崎の旅行券を当てて、お母さんと旅行に来ていたようです。和桜ちゃんがさらわれたのは、お土産を選んでいる時でした。ほんの少し、お母さんと放れた瞬間で、お母さんは必死に探しまわった時に階段から落ちて、足の骨を折ってしまったそうです。この事は、和桜ちゃんを攫ったあの男の人の上司、浜川さんがちゃんと把握していました。夜に、和桜ちゃんはお母さんの入院している病院に行って、お母さんと再開できました。けれど、階段から落ちているので、検査をしなければいけないとかで、一泊は入院するとのこと。和桜ちゃんは桃華ちゃんに懐いたようだったので、梅吉さんが高浜先生にお願いしてくれたんです。ハウステンボスは自由行動だから、その間だけ一緒に行動させてくださいって。


「それにしても、本当に白川さんにそっくり」


 大森さんに言われて、和桜ちゃんと主は顔を見合わせて微笑みます。2人とも、右頬にご飯が入っていてぽっくり膨れていました。


「で、小暮先生は? 朝食の席には居たようだけれど」


「兄さんが手配していた救急車に乗って、病院に運ばれたわ。5針縫ったらしいけれど、内臓まで行ってなかったから、大丈夫みたいよ」


 田中さんの質問に、桃華ちゃんが答えました。


「こ、小暮先生って、何者ですか? ま、まるで、推理小説の登場人物みたい」


 松橋さんの質問に、桃華ちゃんはちょっとおどけて肩をすくめて見せました。


「さぁ? でも、私や桜雨おうめより、私達の事を知っているのは確かっぽいわ。それが、兄さんや水島先生は気に入らないらしいわ」


 和桜ちゃんは、主と桃華ちゃんの間で一生懸命に食べています。その食べ方がとても綺麗で、主達女子は、思わず近藤先輩と佐伯君と見比べてしましました。


 お昼の後は、遊びの時間です。

 トリックアートの照明や遠近法で出来た錯覚の世界は、皆で夢中になりました。特に主は、平面の世界を立体的に描いた楽しい空間に、とても興味津々でした。最初は遠慮がちだった和桜ちゃんも、直ぐにトリックアートの世界に引き込まれて、主達と一緒になって大興奮でした。そんな興奮を落ち着かせようと、次に入ったのはカカオの香りが漂う館です。

 チョコレートがテーマの館では、見て触れて味わって… リュックのなかでいい子にしている秋君には、ちょっと可哀想かな。帰ったら、いつもより高いオヤツをあげよう。って、主は思っていました。

 もっと遊びたかったんですけど、1つ1つをじっくり楽しんだので、アトラクションは2つしか入れませんでした。その代わり、お土産屋さんでも楽しみました。

 アジアン雑貨、ビードロ、ヨーロッパの文房具や雑貨、ベネチアンアクセサリーや万華鏡… たくさんのお土産屋さんで、色とりどりのお土産。もちろん、近藤先輩や佐伯君は荷物持ちです。

 レジを終わらせた大森さんが、和桜ちゃんに小さな紙袋を差し出しました。


「和桜ちゃん、これどうぞ」


「あ、ありがとう」


 遠慮がちに受け取った和桜ちゃんに、田中さんが言いました。


「皆からよ」


「皆、お、お揃いです」


 松橋さんが、ニッコリ笑いながら、顔の横でそれを揺らします。ステンドグラスのように奥が透けるカラフルな、小さな風車のリングホルダーでした。


「ありがとう」


 今度はニコニコ笑って、もう一度お礼を言いました。


「また、一緒に遊ぼうね。和桜ちゃん可愛いから、一緒にお買い物行って、色々みたいなぁ~」


 大森さん、和桜ちゃんを気に入ったみたいで、ギュッと抱きしめながら良い子良い子と頭をナデナデしています。


「ま、また、遊んでくれるの?」


「もちろん。遊園地でもいいし、甘いもの好きみたいだからスイーツの食べ放題でもいいし… また、遊ぼうね」


「あ、ありがとう」


 和桜ちゃんは、嬉し恥ずかしそうに、照れながら俯きました。


「あの子見ていると、東条先生の『妹萌え』、何となくわかるわね」


「わ、私もです」


 そんな和桜ちゃんを見て、田中さんと松橋さんがキュンキュンしていました。





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