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第145話 3年B組は問題児揃い、担当教員も問題教員揃い

■その145 3年B組は問題児揃い、担当教員も問題教員揃い■


 皆さんこんにちは。桜雨おうめちゃんの折りたたみ傘の『カエル』です。


 今日は春休み最後の日、クラスはいつも通り賑やかです。3年生のクラスは2年生のまま持ち上がりなので、グールプで固まって席に座っています。主達はいつも通り、窓際の後ろの席で固まっていました。午後からのホームルームで、新しい教科書が配られたり、明日の入学式の説明等があるんですが…


「近藤先輩、いつまでいるんですか? この後、松橋ッチとデートするんでも、ここ(教室)じゃないとこで待ちなよー」


 食後の棒付きキャンディを舐めながら、今日発売の雑誌を見つつ、大森さんが言いました。クラスがざわついていた理由の一つに、3月に卒業したはずの近藤先輩の姿が教室にある事でした。まぁ、卒業するまでは、主のクラスに時間があれば遊びに来ていたので、クラスメイトの皆は顔見知りなんですけれど…


「卒業、したよね?」


「大学生が、教室に居る…」


「え? 何しに来た?」


と、何気に注目の的でした。まぁ、ホームルームが始まる前、主達は中庭でお花見ランチを楽しんでいて、そこから近藤先輩は参加していたんですけれどね。で、皆が気にしていることを、大森さんがズバっと言ったんですが…


「ああ、言っていなかったか?」


 近藤先輩のあっけらかんとした声に、クラス中の音がピタっ! と止まって、クラスメイトの耳は近藤先輩に集中しました。


 綺麗に切り揃えられた角刈り頭に、浅黒い四角い顔に乗った大きな目と、存在をこれでもかと強調している黒い眉。筋のしっかりした大きな鼻と、上下ともに分厚い唇。体も筋肉質な四角で、白い学ランで更に膨張して見える近藤こんどうたけし先輩が、野太い声で続けます。


「スポーツ推薦で入学したんで、授業より試合を優先しても今までは差し支えなかったんだが、去年の怪我で単位も点数も足りなくなってな、つまり、留年だ。スポーツ科では無理だから、このクラスで1年勉強することになった」


 そこまで言うと、近藤先輩は立ち上がって、クラスの皆に聞こえる大きな声であいさつをしました。


「近藤武です。これから1年、宜しくお願いします」


「はいはいはい、そう言う事なので、皆さんよろしくお願いしますね」


 近藤先輩がお辞儀をしたタイミングで、教室にパンパンパンと手を叩く音が響いて、クラス中が良く知る白衣を着た先生が入ってきました。


「やった!ヨッシー(義人先生)、担任?」


「ウメちゃんは?」


 笠原先生の登場に、クラス中は沸きました。


「笠原せ・ん・せ・い、ですよ。はい、近藤は着席。皆さんの予想通り、今年も担任になりました。最後の一年も、よろしくお願いしますよ。副担人は皆さんの希望通り…」


「今年も、宜しくなー。資料配るからなー」


「…」


 大量のプリントを抱えた、大きな男の人が2人、入ってきました。ドア側の一番前の席に、ホチキス止めされたプリントの束を3つ置くと、次は隣の席に移動します。


小顔に、気持ち目じりの下がった甘めな黒い瞳。乳白色の肌に、たっぷりレイヤーの入ったミディアムロングの茶髪。バランスの取れた長身を黒のジャージに包んでいるのが、体育教師で去年はバスケ部顧問だった東条とうじょう梅吉うめよしさん、主の従兄で桃華ももかちゃんのお兄さんです。

 もう一人、梅吉さんに続いて入って来たのは、三鷹みたかさんでした。やっぱり、両腕でプリントの山を抱えて、三鷹さんと同じように一番前の席に置いていきます。


「ウメちゃん、今年もバスケ部の顧問? 私の妹が女バス入りたいって言っててさー」


「あー、残念。俺、今年はバスケ部の顧問じゃないのよね。女バスなら、顧問は三島先生かな?」


 梅吉さん、プリント配りにちょっと苦戦しています。後ろの三鷹さんもですね。笠原先生は、黒板に何やら書き出しました。


「えー、残念。あの先生、バスケ出来るの? トロそうじゃない?」


「ってか、走る時、あの胸は邪魔だろうなー」


「バスケボールぐらい、あるなー」


 さすが、年頃の男の子です。数人がニヤニヤしながら、卑猥な手つきで空中をもんでます。よだれ…


「ウメちゃん、やっぱ、三島先生の胸、ブルンブルン?」


「いやいや、俺が答えたらセクハラだから」


 話を振られて梅吉さん、冷や汗をかきながら、桃華ちゃんと主をチラチラ見ていました。つられて、男子たちもそっちを向きます。… 桃華ちゃんの張り付いた笑顔が、とても怖いです。その後ろで、主が制服の上から自分の胸に手を当てていました。ちょっと、ションボリ… しています。


「白川っチ、気になるなら、揉んであげるってー」


 そんな主に、大森さんがニマニマと近寄りました。数人の男の子達は、ごくっと生唾を飲み込んで… 三鷹さんと梅吉さんにプリントで頭を叩かれていました。


「ハイハイハイ、セクハラはそこまでです。異性の体の成長が気になるのは、貴方達の年頃では正常ですが、対象とされる人の気持ちをきちんと考えるように。… 白川さん、手は膝へ」


 教室を見渡しながら窘めていた笠原先生でしたが、相変わらず主が自分の胸に手を当てているのを見て、ちょっと溜息が出ました。三鷹さんは、あえて見ない様にしています。


「プリント、行きわたりましたか? 東条先生が配ったものは、保護者の方用です。水島先生が配ったものが…」


 笠原先生、言いながら黒板に体を半分向けて、トントンと指で鳴らしました。


「『修学旅行』の詳細になります。今日はこれからの時間、修学旅行の説明等になりますので、昼寝はしないように」


 皆、一気にソワソワドキドキしながら、ホチキス止めされたプリントをめくり…


『長崎―!!!』


 クラスメイト全員の、息のピッタリ合った絶叫は校舎内を駆け巡り、学年主任の高浜先生が飛んでくるのは時間の問題でした。


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