■その100 転校生は問題児・彼が経験した初めての朝 ■
トントントン… クツクツクツ…
なんだ? いいにおいがする。味噌汁か? 腹、減ってきたなぁ…
「… どこだ、ここ?」
ゆっくり起き上がって、ぐるっと周りを見ても… 薄暗いし、見覚えがない。カーテンの隙間も暗い。… 何時だ? ただ、左右のキッチンで、誰かが料理を作ってるのだけは分かった。
「大家さんちのリビングですよー。おはよう」
「おはよう、佐伯君。朝ごはんまでもう少し時間あるから、待っててね」
女の声だ。… ああ、左が東条で、右が白川か。双子も犬も… 皆、寝てる。
… 目が覚めてきた。そうだ、昨日は結局、先生達とここで寝たんだ。痛み止めが効き始めたら、眠くて眠くて、勉強するどころじゃなくて… 胡坐のままウトウトしてたら、どこからか布団が出て来たんだった。こんなふうに起きるなんて、テレビドラマみたいだ。
「先生達、最近ずっと忙しくて寝不足だから、まだ起こさないであげてね。
昨日のお夕飯も、本当に久しぶりに、皆でゆっくり食べれたぐらいだから」
「甘やかしちゃダメよ、
二人とも、母親みたいだな。口と一緒に、手も動いてるんだな。料理してる音が聞こえる。ぼーっと、そんなことを思ってたら…
ピピピピピピ…
どこからかスマホのアラームが聞こえた。
「ほら、鳴った。先生方―、時間ですよー!! 兄さん、起きてアラーム止めて」
東条が料理をしている手を止めて、リビングの電気を付けた。ついでに、カーテンも開けた。
… 暗いはずだ、まだ、5時じゃんか。壁の時計を見て、損したと思った。
先生たちは、唸りながらモゾモゾ動いて… 東条先生と笠原先生は、そのまま風呂に這って行った。水島先生は…
「
白川が、俺に背中を向けて動かない水島先生の枕もとで、そっと声をかけてた。
「三鷹さん、今日頑張れば、早番終わりでしょ? 出汁巻き卵、作りましたよー」
白川、トントン肩を叩いてるけどさ、それ、優しすぎて逆に寝かしつけになってないか?
「うぐっ…」
「あら、ごめんなさい」
カーテンを開けて戻ってきた東条が、容赦なく水島先生の横っ腹を踏んだ。うん、俺にも分かる、ワザとだな。
「おうめぇ…」
「はい、おはようございます」
ズルズル起き上がった水島先生は、直ぐに崩れて白川の膝に頭を落とした。先生、白川の小さな尻、抱え込んでないか?
「シャワー浴びて、お
「… んー」
起きてない。白川、先生の横っ面を撫でてるけど、伸びた髭でくすぐったいのか? 白川、笑ってる。
「髪も、整えないと。寝ぐせ、ついてますよー」
今度は、頭を撫でてる。先生、動かないし。なんだあれ? 剣道やってる時と、全然違うじゃん。
「三鷹くーん。風呂、空きましたよー。寝ぼけたふりかどうかは聞かないけれど、それ、コンプライアンス違反。捕まるからなー。そろそろ、先生になる時間だよー」
そんな水島先生の尻を、風呂上がりで上半身裸の東条先生が踏んだ。
「久しぶりの触れ合いは微笑ましいけれどさ… そろそろ、修二さん呼ぶぞ」
東条先生、踏み踏み踏み踏み… って、リズムよく水島先生の尻、踏んでるし。
「そんなに吸いたいなら、秋君どうぞ。
東条妹が寝起きの微妙な顔した犬を連れて来て、水島先生の頭に置いた。犬、すっごく迷惑そうな顔してるけど、いいのか?