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第88話 きてみろゾンビ!(後)

■その88 きてみろゾンビ!(後) ■


 そうこうしているうちに、トロッコ列車は広い空間に出ました。イワシの群れのようにゴチャっとしたゾンビの中に、列車は突っ込んでいきます。襲ってくるゾンビのスピードも、今までで一番早いです。先に出たトロッコ列車がポツン… ポツン… と、ランプの明かりに照らされて2本確認できました。


「このステージ、他のトロッコ列車の人が撃った流れ玉、飛んでくるからね。ヘッドギア、胸、肘のセンサーに当たったら、ゾンビに掴まれたのと一緒で、ポイント無くなるし、1分は銃使えないから、気を付けて」


 線路は、蛇行しているみたいです。ゾンビの間を縫って、他の人の撃ったレーザーも、たまに襲ってきます。

 梅吉さん、説明しながらどんどん撃って、どんどん命中させて、どんどんポイントを稼いでいきます。夏虎かこ君を抱えながら。


「「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」」


 主と桃華ももかちゃんは、悲鳴を上げながらもどんどん撃っていきます。ゾンビがいっぱいだから、当たる確率も上がります。


「あ、やられた」


 列車から身を乗り出していた夏虎君が、流れ弾に当たりました。


「あ、僕も」


 冬龍とうりゅう君も、1分の休憩です。二人とも、ぴったりと梅吉さんにくっつきました。

 向かってくるゾンビ、飛び出している内臓とか血糊とか、けっこうリアルなんですよね。銃がないと、確かに不安になりますよね。


「笠原先生、間に合わないわー」


 桃華ちゃん、向かってくるゾンビに、プチパニックになり始めてます。


「なんなら、しゃがんでいてください」


 笠原先生、一回転しながら乱射です。全部、命中!


「すごいわ…」


 その腕前に驚いた桃華ちゃんの背後に、一体のゾンビが来ました。黒ずんで皮膚が爛れた腕を、桃華ちゃんに伸ばします。


「触らないで」


 パン!と、額から小さな赤い光を放って、桃華ちゃんを狙っていたゾンビの動きが止りました。


「レディの髪に許可なく触るなんて、失礼なんだから」


 パン! もう一体も命中しました。桃華ちゃんが声の方を見ると、主が銃を構えていました。


桜雨おうめぇー」


「任せて~」


 半ベソの桃華ちゃんに、主は可愛くガッツポーズです。


 パン!


 そんな主の真後ろのゾンビが倒されました。


「任せろ」


 三鷹みたかさん命中です。表情一つ変えず、次々とゾンビを倒していく三鷹さんに、主は最初からドキドキしているんですよね。だから、今なんか、さらにドキドキです。心臓、痛いぐらいです。そんな主の心情を分かっているのかどうか… 笠原先生に負けじと、三鷹さんも命中率100%の乱射です。


 そうこうしているうちに、双子君達も1分経って、復活です。


「もう少しで出口だよー」


 梅吉さんの一声で、皆で最後の乱射です!


 トロッコ列車のスピードも上がって、一気に不気味なゾンビの広間から、光溢れる空間に出ました。


 ゴールです!無事に、ゴールに到着です。トロッコからおりた双子君達は、疲れてはいますが大満足みたいですが、主と桃華ちゃんはへとへとです。

 皆で、他のお客さん達と一緒に、壁に設置された大画面を見上げました。ゲーム中に撮られた記念写真一覧の中から、自分達が写っているものを探します。


「受付番号Aの1番、2番、3番のお客様~。こちらにお願いします」


 パークスタッフの女性の呼びかけに、皆で受付に向かいました。


「おめでとうございます。獲得ポイント1万点越えでしたので、当パークで使える商品券の贈呈です。有効期限は1年間となっていますので、お気を付けください。またのチャレンジ、お待ちしております」


 3人合わせて、1万5千円分の商品券を貰いました。


「「すごーい!」」


 双子君達は、目をキラキラさせて保護者組を見上げています。


「あんなに張り切っていたのは、このためね」


 保護者組の張り切りに、納得の桃華ちゃんです。


「凄~い。あ、フルネームでも頭文字でも、名前残せるみたい。笠原先生、歴代2位ですよ」


 主は、受付の横に飾ってあるプレートに気が付きました。


「… あと2体倒せば、首位タイでしたね」


 笠原先生、少し悔しそうです。


「『ユウイチ・T』って… まさか、父さんじゃないわよね?」


「『シュウジ・S』が2位にあるから…」


 桃華ちゃんと主が、1位と2位の名前を読み上げます。


「うわ、父さんたちじゃん!俺も、あと6体ぐらい倒せば、修二さんに並ぶのかー」


「あら、笠原先生が2位よ」


 悔し声を出す梅吉さんに、桃華ちゃんが突っ込みました。


「勇一おじさん、すご~い!」


「お父さんも、すごいね!」


 双子君達は、興奮気味です。


「1位は勇一伯父さん。2位は笠原先生。3位が父さん。4位が三鷹さん… あら、1体差ぐらい? 5位が梅吉兄さん… 私も頑張れば10位ぐらいには入れるかなぁ?」


 凄いです。上位5位、身内で固まっていました。主も、仲間に入りたいようです。


「ねぇねぇ、お腹空いた!」


「お昼食べたい」


「あー、私も騒いだら、お腹ペコペコ」


「私も~」


 皆、お腹を摩りながらアピールします。


「よし! 臨時収入あったから、豪華に行こう!!」


 梅吉さんは、獲得した商品券を掲げて、皆を引き連れてレストランブースへと向かいました。




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