皆さんこんにちは、カエルです。今さっき、お友達のお家にお泊りに行っていた主の弟君達が、バタバタと帰ってきました。けれど、昼食の準備をしていた主と
「
桃華ちゃんは料理をする手を止めて、キッチンのドアを開けました。階段下の二人に声を掛けましたが、何やら慌てている二人の会話が途切れ途切れにしか聞こえてきません。
「龍虎~?」
「桃ちゃん、僕たち、タカ兄ちゃんのとこでお昼食べるね」
「行ってきます!」
桃華ちゃんの呼びかけに、サンダルを引っ掛けて、パンパンのリュックを背負った双子君が答えて、玄関を飛び出しました。
「水島先生んち?」
「どうしたの、桃ちゃん?」
変な声を出した桃華ちゃんの後ろから、エプロン姿の主が声を掛けました。
「龍虎、なんか、水島先生の所でお昼食べるって言って、大きな荷物しょって行ったんだけど… 何か、聞いてる?」
「
主と桃華ちゃんは顔を見合わせて、首をかしげました。
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主、とりあえずと、5人分の冷たいトマトスープが入った大きなボールを持って、
「どうせなら、あっちで作った方が早いのにね」
なんて言いながら、とりあえずお昼を作ったのですが… 実は主、今、ちょっとモヤモヤしています。
呼び鈴を押すと、玄関のドアを開けてくれたのは笠原先生でした。
「先生、皆、こっちでお昼ですか? 一応、5人分のスープ、持って来たんですけれど」
「ああ、お手数かけて、すみません。ありがとうございます。
今…」
笠原先生、主からスープのボールを受け取って、チラッと後ろのダイニングの方を見ました。
「手が、放せそうにないんですよね」
「… うちの弟達、お邪魔じゃありませんか? 三鷹さん、お仕事があまり進んでないって…」
確かに。朝食の時、笠原先生が三鷹さんに言っていましたね。
主は細い笠原先生の横から、ちょっと斜めに、中をうかがいました。皆、集中して何かをしているんでしょうか? とても静かです。
「三鷹自身が言い出したので、大丈夫でしょう」
また、主の気持ちがモヤとしました。
「白川?」
ほんのちょっと、本当に、ほんのちょっとの表情の変化でした。主に近しい人でも、気が付かないかもしれないぐらい、微かな変化。それを、笠原先生は何となく気が付きました。さすが、担任です。
「どうしました?」
「いえ…」
足元に、弟君達のサンダルがきちんとそろえてあるのを見て、またモヤモヤ…
「サラダ… 桃ちゃんが作ってるんです。持って来ますね」
戻ろうとした主の手を、笠原先生が素早く取りました。
「三鷹を呼ぶから、待っていなさい。スープ、ありがとう」
主が頷いたのを見て、笠原先生はスープのボールを持って、ダイニングの方へ向かいました。主は、自分の気持ちがなんでモヤモヤしているのか、分かりません。ただ、双子君達のサンダルから目が放せなくて、でも、見ているとモヤモヤが大きくなって…
「なんか、イヤだな…」
「
玄関先で、双子君達のサンダルを見つめて固まって、小さく呟いた時でした。奥から出てきた三鷹さんが、主に声を掛けました。
「あ… 三鷹さん…」
名前を呼ばれて、弾かれたように顔を上げた瞬間…
「
目尻の下がった焦げ茶色の瞳から、ポロポロと涙が零れました。その涙を見た瞬間、
「桜雨!」
主を追いかけようとした三鷹さんですが、動転し過ぎたのか、サンダルを上手く履けない上に、足がもつれて転びました。顔からです。
「… はぁ。留守番、しておきますから」
影で一部始終見ていた笠原先生は、大きなため息をついて、シッシッと手を振りました。