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第44話 大人たちの反省会2

 「コンプライアンス守ろうってのは結構ですけれど、知らないわよ、横からかっさらわれても… まぁ、その心配は低いだろうけど。

 手は出さないけど、自分から逃げない様に心理的に囲っておくなんて… それはそれで、イヤらしいやり口よね。そんなんなら、両家の親に許可貰って、婚約でも結婚でもしちゃえばいいじゃない。女の子は16歳で結婚できるんだから。じゃないと、この顔に似た男が、攫って行くかもよ」


 って、先輩が俺の事を指さした。俺に似た顔…


「今日、桜雨おうめちゃん達を囲っていたギャラリーの中に、居たわよ。

アンタにそっくりの顔。他と違う顔つきで見ていたから… ちょっと、注意した方がいいかもね」


 先輩、早くも5杯目。ってか、皆、箸が進まないね。代わりに、アルコールが進んでる。


「この顔ですかね?」


「よく、撮る気になったな、この顔」


「何となく。多分、俺の『何となく』と坂本さんの『ちょっと』は、同じようなものかもしれないですね」


 笠原が、スマホを見せてきた。そこには、体育祭の時の小暮先生が映っていた。


「そうそう、この顔。ほんと、そっくりよね~」


「我慢するのが、精一杯だ…」


 あ、三鷹みたかのスイッチ入った。先輩が、笠原のスマホをしげしげと見ていたら、三鷹の口が開いた。


「何を我慢しているのよ?」


 いや、先輩、それ聞いちゃ駄目でしょう…


「病院でも、夜の美術室でも…」


「あああああ~分かってる、分かってるから、三鷹。せっかくここまで我慢したんだから、もう少しだ。ここで言葉にしたら、もうたがが外れちゃうぞ」


 ってか、聞きたいようで聞きたくない、同僚と従姉妹のそんな話。慌てて、俺の生中ジョッキを、強制的に三鷹に呑ませた。


「このままハッキリしないで泣かせても、箍を外して泣かせても、結局は泣いてるな」


「なんで言うかな、笠原~!!」


「気持ちは良く分かってるつもりだ。だから、泣かせたくないんだ…」


「分かってるってば、三鷹! いいか?! お前の泣き言はいくらでも聞いてやるが、手塩にかけて育てた妹や従姉妹の『そんな』場面を想像するような話、聞けるわけないだろう!

 俺、お兄ちゃん!! お前は『学校の先生』、コンプライアンス守るの偉いよ! だから、もう、日本酒やめろ。お前、最近、ピッチ早すぎだぞ!」


 俺の生ビール一気に呑み干して、また自分の酒に戻るし。ってか、気が付かなかってけど、隅に空のお銚子4本も転がってんじゃん!


「やだ、この子達ってば、面白い」


 ええ、そうでしょうよ、はたから見れば面白いでしょうよ。その刺身も、美味しく食べれるでしょうよ。

 その笑いが憎いです、先輩。でも、助けて、先輩!!


「あのね、私が言いたいのは、何でとっととカットしに来ないのかってことよ! 放れるのを嫌がるなら、一緒に連れて来ればいいでしょうが。桜雨おうめちゃんも、うちの御贔屓ごひいきさんなんだから」


 あ、そこに戻る?


「結婚…」


 あ、三鷹も戻るの?


「あのな、うちの妹達は3月生まれだから、ようやく16になったばかりなんだってば。16になったばかりで、あの修二さんが結婚に大人しくOK出すとおもうか? OKどころか、血の雨が降るだろうが!」


 なんか、吞んでも呑んでも、冷静になっていくのはなんでかなぁ…


「真剣じゃなければ」


「そうね、竹刀ならよくて内出血、でも、突きはなしよ… って、違う!」


 三鷹みたか、修二さんと真剣でやり合うなよ、ホント頼むから。

 俺が突っ込んでいる間も、笠原はマイペースに呑んでるし。助けてよ!


「バッカ! まずはデートなさいよ、デート。二人っきりなんて、なかなかなれないでしょう? 高校生なんだから、清く正しいデート」


「デート…」


「分かった! 三鷹、今年は皆で花火大会に行こう。二人っきりは、コンプライアンスがまずい。でも、皆で行けば大丈夫だし、少しぐらいは二人っきりになれるだろう?」


 これが、今日の妥協案。修二さんが、後輩で坂本先輩の店のスタッフの岩江さんも連れて、合流したからね。さすがに、修二さんの前で、愛娘の恋バナは出来ません。そこは、先輩も空気を読んでくれたので、ありがたい。


 そして翌朝、俺と三鷹と笠原は、妹達の『二日酔いメニュー』を有難く頂きました。

 もう、暫くは呑みたくない…



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