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第42話 使えるコネ、見~つけた!

 皆さん、こんにちは。桜雨おうめちゃんが御贔屓にしてくれている理容室店長、オネエの坂本優一さかもとゆういちです。


 今日は定休日なので市場調査もかねて、隣町までランチに来てみたりしたら… たまたま、本当にたまたま入ったカフェで顔を合わせたのは、職場の後輩の高橋。

 聞けば、恋人と待ち合わせだとかで、アイスコーヒーを買った後、半ば強引にテラス席に連れていかれたわけ。


「で、菅井さんが試供品で持って来たシャンプー、あれ、コスパ的にはどうっすかね?

俺としては、カラーの後のシャンプーで使いたいんすけど… オーナー、最近、経費削減ってうるせぇから…」


 成人済みの言葉使いとしては、マイナス。けれどまぁ、仕事に関しては、とっても真面目なのよね、この子。ストロベリーフラペチーノなんて、可愛いの飲んでたりするし。


「店長、聞いてるっすか?

 ん? んー… 店長、あれ、桜雨おうめちゃんと桃華ももかちゃんじゃないっすか?」


 高橋は少し先の人込みに、御贔屓のお客様を見つけたみたい。ストロベリーフラペチーノを持ったまま、指さす方を見ると…


「あら、本当。

 うちのお姫様達と、女の子は学校のお友達かしら?」


「男の方は、お友達って感じじゃないっすね?」


 女子高生はいいわ~。身に着ける物は可愛いし、たまに背伸びしてるのも微笑ましいし、笑顔がキラキラ輝いていて、お肌ピチピチで、甘酸っぱい恋もして… ああ、羨ましいわ。

 でも、確かに、周りにいる男どもは『お友達』って感じじゃないわねぇ… 1,2,3… 6人は居るわね。あんなにくっついて… どうなっても、知らないんだから。


「ナイトの2人が居ないなんて、珍しいわね…」


 辺りを見渡しても、東条や水島の影も無し。友達とだけで買い物に行きたいって、ごねたのかしら?


「あ、飛ばした」


 高橋の言った通り、桜雨ちゃんがしつこく絡んでいた男を1人、ポーンと飛ばすさまは気持ちがいいわ。あの子達に手を出そうなんて、ホント、おバカちゃんだわ。


「あ、もう1人も行った。店長、俺、加勢してきますわ」


 今度は、桃華ちゃんに絡んでいた男が、桜雨ちゃんに飛ばされたわね。それを見て、高橋がストロベリーフラペチーノを持ったまま、駆けだしちゃったんだけれど。


「保護者~… って、私なわけね」


 あの子をほっておくと、事が大きくなるから… 


 重い腰を上げて、お姫様達の所に行くまでに、うちの高橋が2人殴り倒してるし。


「はいはいはいはい、そこまでにしておきなさいよ。

 そろそろ、お巡りさん来るわよ。それとも、お巡りさんより、もっと怖い人、呼びましょうか?」


 私の制止、ちょっと遅かったみたい。タイミングよく、高橋が3人目をアスファルトに沈めたわね。ギャラリーも集まり始めたし… あら? 東条、来てるじゃない。ギャラリーの中で何してるのかしら? …って、違うわね。よく似てるけど…


「てめぇら、このまま済むと思ってんのか!」


 チンピラキャラって、どうしてこうもボキャブラリーに乏しいのかしら? 眉、中途半端だし、私好みの顔も居ないわね、残念。


「あん? てめぇらこそ、このまま帰れると思ってんのか? 誰に手ェ出してんのか、分かってんだろうなぁ?」


やだ、高橋ったら、一番ガラ悪いわ。桜雨ちゃんと大して身長変わらないくせに、下から睨み上げながら低音で脅すなんて… 場慣れし過ぎよ。


「だ、誰って…」


「おい、まさか、ヤバいのバックについてんじゃないのか?」


「ヤバいのって、誰だよ…」


 男たちは高橋のハッタリにコソコソし始めたけれど… まぁ、あの2人は確かにヤバいわね。


「なに? お前ら、誰の女か知らないで声かけたのかよ?」


 狼狽する男たちに、高橋は人相の悪い笑みを向けるのよね。この顔、恋人に見せた事あるのかしら?


「まぁ、今なら見逃しましょう。それとも…」


 私が言い終わる前に、男たちは庇いあって逃げて行っちゃった。ギャラリーも、少しづつ散り始めたし、東条のそっくりさんも居なくなっちゃった。


「「坂本さん、サクさん、ありがとうございます!」」


 代わりに、お姫様達が飛びついてお礼を言ってくれたけれどね。


「ナイトの2人… あ、今は3人だったかしら? どうしたの? 見かけないけど?」


 高橋、ストロベリーフラペチーノを桜雨ちゃんに預けてたのね。受け取って美味しそうに飲んでる顔は、実年齢より若く見えるわ。こういう顔は、可愛いのよね。


「今日、学校なの、部活。私達、文化祭の準備の買い物に来たんだけど…」


 桃華ちゃん、何かを思いついたように私をジィーっと見つめてる。今日も、綺麗な顔してるわね。


「坂本さん、メイク、教えてください!!」


「え?」


 桃華ちゃんのお願いに、正直、面食らったわ。


「文化祭で、ファッションショーをすることになったんだけれど、舞台メイクがなかなか難しくって…」


 まぁ、そもそも、桃華ちゃんも桜雨ちゃんも普段からメイクはあまりしないしねぇ… 必要ないしねぇ…


「今日も何か使える物がないか、ここまで足をのばしてみたんだけれど、見当がつかなくて」


 桜雨ちゃん、今日の白フワワンピのコーディネート、ポイントのグリーンのリボンが効いていて、良く似合ってるわ。男どもが声かける気持ち、わかるわ~。


「あのね、この人、理容師さんなんだけれど、メチャクチャ美容やお化粧に詳しいの。笠原先生、使えるコネは使い倒せって言ってたじゃない? 言われた通り、使い倒しましょう!!」


あ、そう。そう言う事… さすが、東条の妹だわ。


「お仕事あるのに、いいんですか?」


 あら、スリム美人なこの子は常識的ね。胸の大きさが、羨ましいわ。眼鏡もコーディネートに組み込んでて、センスいいじゃない。難を言うなら、ちょっと、大人っぽすぎるかしら?


「プロに教えてもらえるなんて、チョー、嬉しい!!」


 こっちの子は、『ザ・JK!』って感じで可愛いわ。パッと、派手に見えるけれど、よく見れば控えめお洒落さんね。


「あ、あの…」


 あら、別の意味で可愛らしい。まだまだ、これからお洒落に…


「やだ、原石、見つけたわ」


 一番オドオドして、所在なさげに下を見ていたその子がようやく顔を上げたと思ったら… 久しぶりに、腕が疼いちゃった!




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