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第15話 体育祭・戦いは子猫のように

「皆さまお待たせいたしました。

 … そこに男はいらない、戦うのは強く美しい女のみ! 勝った者が女王! 勝者の肉体が一番美しい! 今年の女王はいったい誰に!!

 プログラム4番・キャットファイト改め、学年混合女子による棒倒しを始めます!」


 実況アナウンスは引き続き、放送部の佐々木先輩です。校内で一番大きい中央運動場に、円形に女子生徒の山が8つ。其々の山の中央から、太い棒が伸びて、その先端にはそれぞれクラスカラーの旗が立っています。

 僕の主、おうちゃんと従姉妹のももちゃんのクラスのB組は、赤です。1年生から3年生のB組がまとまって、オフェンスとディフェンスに分かれています。

 主、桃華ちゃん、松橋さん、大森さん、田中さんは体格と身体能力から、オフェンスに選ばれました。


「ルールは簡単、勝負は1回! 他のクラスの山頂の旗を取って、トラックを1周してゴール! 各クラス、8色入り乱れての勝負です。妨害は自由ですが、間違って仲間の妨害はしないようにしてくださいね。女の子なので、お肌に傷がつく行為は反則となりますから、気を付けてください。

 では… 今日、今この時、いつもの子女の仮面は脱ぎ捨てて、本能のままに敵を蹴散らせ!

 よ~い… スタート!!!!」


 パァン!!!


 とピストルが鳴った瞬間、女の子達が一斉に運動場の中心に向かって走り出し、交差して目的の山に登り始めました。


「各山、ディフェンスのメインは3年生の様です。さすが3年生、コツも体格もがっちりしているので、手前が崩れて行っても、中央はがっしりしています。特に、スポーツ科が一番の安定感ですね。並みの男子では歯が立たないでしょう。

 オフェンスは、身軽な子が有利ですね。一部でつかみ合いの喧嘩が始まっていますが、はけ校長がご自身の寂しくなった頭を押さえて泣きそうになっているので、髪の引っ張り合いは止めてください。そろそろ警備の先生が投入されますね。それまでの短時間で、どこまで日頃のうっぷんを晴らせるでしょうか?

 おっと、C組の青い旗が大きく揺れています。ディフェンスは派手に揺さぶりを掛けられていますね。

おっと… F組の山をスルスルと登る小さな影があります。赤です。赤い鉢巻が確認できました。速いです! 体重移動が上手いのでしょうか? いや、スポーツ科の安定感が仇になっているようです。足場がしっかりしているから、登れるようです! あっと、下の山が崩れ始めたようです。棒が倒れ始め、すかさず小さな影が一気に… 登った!! まるで小動物です。子猫の様に傾いた棒を一気に登って、黄色い旗と見事にゲットしました! しかも、一気に飛び降りて、何と見事な一回転着地! ニャンダフル、実にニャンダフル!! バランスを崩すことなく、トラックを走り始めました。顔が見えます、とても可愛らしい顔が見えました。ニャンと、一連の素晴らしい動きを見せてくれたのは、2年B組の白川さんです! 軽やかな走りで、今、ゴールしました!」


 主はゴールテープを切ると、嬉しそうに手にしていた旗をフリフリしながら、救護テントの一番前で見ていた梅吉さんと三鷹さんに、小さくピースしてみせました。そんな主に、二人は右の親指を立てて「グー!!」と、合図を返しました。


「続いて、E組・F組のスポーツ科クラスのタックルに敗けて、C組A組B組の山が崩されました。旗を取って… 今、トラックに待機していた二人に旗が託されました。スポーツ科のオフェンスは、2段構えです。

 E組は2年の女子バスケット部、相楽さがらさん。F組は陸上部短距離走選手、河野こうのさんです。それを追うのが、C組の青い旗を持っている2年B組の東条さんです。おっと、その後を追うのは3年D組の高畑さんだー!! 高畑さんは特進科留学コースでも、上位の成績の持ち主ですが運動も出来ます! 留学先の学校でも毎朝のランニングと軽い運動は欠かさないらしいです。スポーツ科の相楽さんと河野さんを追う東条さん。それを追う高畑さんは、その距離を確実に詰めていきます。が、やはりスポーツ科! ラストスパートで東条さんを引き離し、相楽さん河野さんの順番でゴーーーーール! そして、並んだ、並んだ、並びました! 高畑さんが東条さんに並び、今、胸の差で高畑さんが4着で、東条さんが5着でゴーーーーールっっっ!!! 高畑さん、3年の意地を見せました。

 そして今、B組の松橋さんが黄色い旗を握って、トラックを走り始めました。が、後ろから来たD組の川西さんが接触、おっと、これは大きく転倒しました。怪我は大丈夫でしょうか? 川西さんは直ぐに立ち上がり走り始めましたが、大森さんはようやく上半身を上げました。大森さんが落とした旗を、クラスメートの田中さんが拾って走り始めました。大森さんは、お友達が手を貸しているようです。田中さん、この子も早いです! 眼鏡がズレる暇すらなく、川西さんを抜いてゴールしました! 続いて川西さん、A組の細川さんが今、ゴーーーーール!!!

 そして、互いに健闘を称えあっています。美しいスポーツマンシップです!」


 いや… 桃華ちゃん、相当悔しいはずですよ。胸の差で勝負が付いた事も、2位になれなかったことも… ほら、主に抱き着いて涙ぐんでますもん。

そんな桃華ちゃんを見て、梅吉さんはハラハラしながら、大森さんが連れてきてくれた松橋さんの手当てをています。けれど、退場するときは桜雨ちゃんと手を繋いで笑っていたので、とりあえず一安心しました。


「いや~、今年の棒倒しも白熱しました! これは、午後の学年混合男子により騎馬戦が楽しみです」


 この棒倒しの結果によって、毎年、午後の種目への力の入れ方が変わってきます。主のクラスは、松橋さんを倒された事によって、メラメラと闘志が湧いていました。



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