「皆さまお待たせいたしました。
… そこに男はいらない、戦うのは強く美しい女のみ! 勝った者が女王! 勝者の肉体が一番美しい! 今年の女王はいったい誰に!!
プログラム4番・キャットファイト改め、学年混合女子による棒倒しを始めます!」
実況アナウンスは引き続き、放送部の佐々木先輩です。校内で一番大きい中央運動場に、円形に女子生徒の山が8つ。其々の山の中央から、太い棒が伸びて、その先端にはそれぞれクラスカラーの旗が立っています。
僕の主、
主、桃華ちゃん、松橋さん、大森さん、田中さんは体格と身体能力から、オフェンスに選ばれました。
「ルールは簡単、勝負は1回! 他のクラスの山頂の旗を取って、トラックを1周してゴール! 各クラス、8色入り乱れての勝負です。妨害は自由ですが、間違って仲間の妨害はしないようにしてくださいね。女の子なので、お肌に傷がつく行為は反則となりますから、気を付けてください。
では… 今日、今この時、いつもの子女の仮面は脱ぎ捨てて、本能のままに敵を蹴散らせ!
よ~い… スタート!!!!」
パァン!!!
とピストルが鳴った瞬間、女の子達が一斉に運動場の中心に向かって走り出し、交差して目的の山に登り始めました。
「各山、ディフェンスのメインは3年生の様です。さすが3年生、コツも体格もがっちりしているので、手前が崩れて行っても、中央はがっしりしています。特に、スポーツ科が一番の安定感ですね。並みの男子では歯が立たないでしょう。
オフェンスは、身軽な子が有利ですね。一部でつかみ合いの喧嘩が始まっていますが、
おっと、C組の青い旗が大きく揺れています。ディフェンスは派手に揺さぶりを掛けられていますね。
おっと… F組の山をスルスルと登る小さな影があります。赤です。赤い鉢巻が確認できました。速いです! 体重移動が上手いのでしょうか? いや、スポーツ科の安定感が仇になっているようです。足場がしっかりしているから、登れるようです! あっと、下の山が崩れ始めたようです。棒が倒れ始め、すかさず小さな影が一気に… 登った!! まるで小動物です。子猫の様に傾いた棒を一気に登って、黄色い旗と見事にゲットしました! しかも、一気に飛び降りて、何と見事な一回転着地! ニャンダフル、実にニャンダフル!! バランスを崩すことなく、トラックを走り始めました。顔が見えます、とても可愛らしい顔が見えました。ニャンと、一連の素晴らしい動きを見せてくれたのは、2年B組の白川さんです! 軽やかな走りで、今、ゴールしました!」
主はゴールテープを切ると、嬉しそうに手にしていた旗をフリフリしながら、救護テントの一番前で見ていた梅吉さんと三鷹さんに、小さくピースしてみせました。そんな主に、二人は右の親指を立てて「グー!!」と、合図を返しました。
「続いて、E組・F組のスポーツ科クラスのタックルに敗けて、C組A組B組の山が崩されました。旗を取って… 今、トラックに待機していた二人に旗が託されました。スポーツ科のオフェンスは、2段構えです。
E組は2年の女子バスケット部、
そして今、B組の松橋さんが黄色い旗を握って、トラックを走り始めました。が、後ろから来たD組の川西さんが接触、おっと、これは大きく転倒しました。怪我は大丈夫でしょうか? 川西さんは直ぐに立ち上がり走り始めましたが、大森さんはようやく上半身を上げました。大森さんが落とした旗を、クラスメートの田中さんが拾って走り始めました。大森さんは、お友達が手を貸しているようです。田中さん、この子も早いです! 眼鏡がズレる暇すらなく、川西さんを抜いてゴールしました! 続いて川西さん、A組の細川さんが今、ゴーーーーール!!!
そして、互いに健闘を称えあっています。美しいスポーツマンシップです!」
いや… 桃華ちゃん、相当悔しいはずですよ。胸の差で勝負が付いた事も、2位になれなかったことも… ほら、主に抱き着いて涙ぐんでますもん。
そんな桃華ちゃんを見て、梅吉さんはハラハラしながら、大森さんが連れてきてくれた松橋さんの手当てをています。けれど、退場するときは桜雨ちゃんと手を繋いで笑っていたので、とりあえず一安心しました。
「いや~、今年の棒倒しも白熱しました! これは、午後の学年混合男子により騎馬戦が楽しみです」
この棒倒しの結果によって、毎年、午後の種目への力の入れ方が変わってきます。主のクラスは、松橋さんを倒された事によって、メラメラと闘志が湧いていました。