良く晴れた、爽やかな風が吹く5月某日。
高等部の生徒全員が集まるのは、校内で一番大きい中央運動場。まだ5月と言っても、紫外線は半端ない強さです。お年頃の生徒の健康状態とお肌を考慮して、各クラスの応援席と中等部有志、保護者応援席にはテントが設置されています。最近の男子は女子同様、美肌に熱心な子が多いのか、日焼け止めを念入りに塗っている子が目立ちます。けれど、中途半端な日焼けは嫌なのか、体操着の袖をまくり上げ、ハーフパンツ丈のジャージもまくっている子も多いです。
今日は、『カエル』こと
「開会式を始めます。生徒の皆さんは、各クラステントにお戻りください」
係活動やお友達と話していた子達が、ざわざわと各テントへと戻っていきます。5分もすると、大きな運動場は怖いぐらい静まり返りました。
「え~… テスト、テスト…」
一瞬、キィーン… とハウリングするのはお約束ですね。
「皆さん、おはようございます。校長の
体調や怪我に気を付けて、頑張ってください。はい、終わり」
何処からともなく、しわがれたおじちゃんの声が、マイクに乗って運動場に響き渡りました。校長挨拶は、どんな行事でも短いので、生徒たちは校長先生が大好きです。
「はい、校長先生、ご挨拶有難うございました。
ここから先は、騎馬戦の練習中に落馬して左手左足を骨折しました私、放送部3年・佐々
なお、本日の記録は中等部高等部両放送部の全勢力を上げて記録・DVD及びブルーレイ等各種メディアへの編集・皆様への配布まで担当させていただきます。もちろん、この編集は高等部3年生の卒業制作となりますので、妥協は一切ございません。ご安心ください。また、写真に付きましては、こちらも中等部高等部両写真部の撮影となります。こちらも後日、学校専用アカウントにて現像希望をとりますので、お知らせをお待ちください。
なお、先日お配りしました『体育祭のお願い』にもありますが、本日の様子をご自身の各メディアで撮影されるのは構いませんが、本人承諾のない画像や動画のSNSへのアップはお控えください」
どこで呼吸をしているの?と思うぐらい、ペラペラペラペラと流れる声を聞きながら、皆さんは各係の準備や応援準備に勤しんでいました。
「桜雨、私、1番のリレーだから行くね」
主の従姉妹の
今日の桃華ちゃんは、勇ましく体操着の袖とジャージの裾をまくって、自慢の長い黒髪を高いポニーテールにしています。
「頑張ってね、桃ちゃん」
主はテントの中央、一番前で応援です。
「では、プログラム1番、全学年混合クラス対抗リレーです。
頭っから大盛り上がり間違いなしですが、今年のプログラム組んだ先生はどなたでしょうか?今後の盛り上がりを考えてるんでしょうか?
おっと、そんな心配をしている場合ではありませんでした!今、ピストルの音でスタートが切られました!
体力的には3年生が有利ですが、スポーツ科1年H組は陸上部の新星・
おっと、そんな団子4兄弟を華麗に避けて、B組白桜の歌姫・東条さんが出てきました!小平君の後ろにピッタリついています。合唱部で鍛えた腹筋は
それにしても、その他の選手は団子状態です。状況を見ていられる距離でもありません! そんな事を言っているうちに、小平君と東条さんはバトンタッチです! バトンを渡す姿もスマートだ!!」
この実況をしている先輩の将来の夢は、きっとアナウンサーだ。生徒も皆慣れているみたいで、各クラステントは応援で大盛り上がり。主も、立ち上がって、声を張り上げてました。
「ゴーーーーールゥゥゥ!!!!
やはり強かった! やはり強かった! スポーツ
もう少し粘りたかったが健闘したぞ、スポーツ科1年H組!」
この先輩、最初からこんな調子で、今日一日もつんでしょうか? そんな心配をよそに、実況は次々とゴールするクラスを発表していきます。
「東条さん、凄いね」
「うん、桃ちゃん凄いの」
係で席を外れていた松橋さんが、主の隣に座りました。主は自分が走ったかの如く、汗拭き用のタオルを握って、大興奮です。
「プログラム4番、棒倒しの準備、お願いします」
テントの後ろで、進行係が声を上げていました。
「白川さん、行かないと」
「うん」
まだ、興奮冷めやらない主を促して、松橋さんは席を立ちました。
「さ、私も頑張ろ~」
主は立ち上がると、首からリボンにして下げていた鉢巻を、キュッと頭に巻き気合を入れて、集合場所へと向かいました。