今回は戦闘員だけでなく開拓の主軸となる工芸者の皆さんも馬車に乗っています。馬車は数台あるので、一緒の馬車に乗っているのはヨハンさん達に護衛される予定のソウタさんだけですけど。ソウタさんは銀色の髪と左右の色が違う目が特徴的な人間の工芸者で、前はソフィーナ帝国の支部にいたのですが最近アーデンの本部にやってきました。
「工芸者って色々いるっすけど、ソウタはどんな工芸者っすか?」
「ああ、俺は石組師だよ」
なんですかそれ、ちょっと聞き慣れない職業ですね。ソフィーナ帝国には本当に変わった職業の冒険者さんが多いです。
「いしぐみしって何する人っすか?」
「その名の通り、石を組み合わせて建造する仕事だよ。どこの大通りも石畳が敷いてあるだろ? ああいうのを作るのさ」
おー、あれ専門の工芸者さんですか。フォンデールでは石畳を作るのも他の仕事を専門としている工芸者さんがやっていますからね。やっぱり仕事ぶりが違ったりするんでしょうか?
「そういえばネーティアの海岸線に道作ってたわよね。あれにも参加したの?」
ありましたね。これから通りますけど、通りすがりのドワーフが道を整備してくれたんじゃないかって話してましたし、そこに参加していたならドワーフについて何か知っているかも?
「あれね、俺の力作だぜ。ドラゴンが歩いても壊れない道に仕上げたからな」
「ソウタさんが中心になってあの道を作ったんですか?」
なんか物凄い自慢げなのでちょっと気になりますね。どこまでがソウタさんの仕事なのでしょうか。
「中心っつーか、設計図を作った。作業したのは帝国の工芸者総がかりだけどな」
ほうほう、あのやたらと豪華にアップグレードした道はソウタさんの設計なのでしょうか。それとも後からドワーフが付け足した? あまりしつこく聞くのもなんですね。
「作業の参加者にドワーフが混じっていたりはしませんでしたか?」
「いや、いないと思うけど。ドワーフには人間の姿に変身できる奴もいるから、断言はできないな。俺は魔法が使えないし」
まあ、そうでしょうね。ドワーフが作業していたら絶対に話題になりますし。というかギルドに冒険者登録されてないですし。魔法書庫の力である程度は種族も見抜けますけど、完璧じゃないんですよね。人類側に情報のない種族は反映されないので、情報の少ない魔族や天人と誰も見たことのないハーフエルフや謎の古代種は判別できないという欠点があり。登録実績のないドワーフが魔法で種族を偽っていたら判別できるかはちょっと怪しいところですね。
私が真実の目で直接確認すれば見つかるでしょうが、今はいるかどうかも分からないドワーフを探すより確実に分かっているドワーフの国に行って仲良くなれそうな人を探した方が早いでしょう。
そんなこんなで数日かけて大陸の南側を進み、噂の道をまた通ります。
「なんかまた凄くなってないっすか?」
海岸沿いの道は外見こそ前回と変わっていませんが、海側の崖や森側の地面を丈夫に補強されていました。
「これもソウタの設計なの?」
シトリンさんが不思議そうに聞くと、ソウタさんは顎に手を当てて考える素振りをしながら歯切れ悪く答えます。
「うーん……俺が設計したのとは……ちょーっと違うかなー」
なるほど、だいぶ違うんですね。やっぱりソウタさんが設計した道を後から謎のドワーフ(?)が改造していったということでしょうか。最初の道も十分立派でしたよ!
「世の中、変わり者がいるっすからねー」
そうですね、ヨハンさんを筆頭に。
その後は特に事件もなく、ブタさん達の集落に到着しました。ここからが私達の仕事ですね。交渉チームと開拓チームに分かれて行動します。交渉チームも私のパーティーとソフィアさんのパーティーで後から分かれるのですが、ドワーフの坑道に入るまでは一緒に行きます。
「例の酒好きなブタさんはいるでしょうか?」
「きっと前みたいに酒樽にしがみついてるのよー」
マリーモさんが前にラージ・ホワイトさんを見つけたという酒屋へ私達を案内してくれます。向こうもよく知っている顔がゾロゾロやってきたら何らかの反応をするでしょうね。怖がって逃げるかもしれません。
「こんにちは、ホワイトさん」
酒屋に入ると、マリーモさんが言った通りにラージ・ホワイトさんが酒樽を抱えていました。ソフィアさんが挨拶をします。前回は皇帝陛下だって知らなかったみたいですけど、捕まったのでよくご存知でしょう。
「ブ? 皇帝陛下だブゥー、こんなところで遊んでていいのかブゥー?」
特に怖がる様子もないブタさんから、とてつもない正論パンチが繰り出されました。もっと言ってやってください。
「遊びじゃないですよ! これは人類とドワーフの関係を良好にするための大事な外交の任務なんですから!」
それやるの私ですけどね。ソフィアさんはドワーフの国を観光でもしててもらいます。特にやってもらうこともないので。
『どうせ交渉するのは姐さんだし、皇帝サマはドワーフの国で遊ぶだけだろ』
トウテツが茶々を入れます。何気にソフィアさんアルベルさんと一緒にダンジョン探索などをしていたので気心が知れているようですね。アルベルさんも特に反応なしです。
「ドワーフの国に行くならここで酒を買っていくといいブゥー」
「お酒はジュネヴァを沢山持ってきましたよ。フォンデール王国自慢の火酒です」
ここで売っているお酒はドワーフの皆さんも飲み慣れているでしょうし、喜ばれるでしょうけど新しい関係を結ぶのには向かないと思いますね。するとラージ・ホワイトさんがチッチッと舌を鳴らしながら手の蹄を揺らします。人間で言うところの人差し指を立てている感じなのでしょうか?
「それはラウゴットに渡す酒だブゥー? ドワーフはみんな酒飲みだからいくらあっても足りないブゥー」
む、それは確かに。ラージ・ホワイトさんはお酒好きだからドワーフの皆さんと気が合いそうですし、彼の忠告には耳を傾けておく価値がありそうですね。
「それじゃあここにあるお酒を全部買いますわ!」
金銭感覚のおかしいソフィアさんが本気でお酒を買い占めそうになるのを全員で止め、店主の勧めに従って荷車に乗せた酒樽をトウテツが引いていくことになりました。
「ここの酒は焼酎っていうブゥー。北東の海を越えた先にある東鸞王国から仕入れてるブゥー」
「東鸞王国! コタロウさんの故郷ですね」
「そうすね。焼酎は芋や麦で作るすけど、ジュネヴァに比べてアルコール分は低めすよ」
なるほど。お酒好きのドワーフは強さはこだわりとかあるのでしょうか? 強すぎたら逆に嫌がられたりしませんかね。それよりコタロウさんの故郷についてもっと聞いてみたいのですが。ネコ忍者とか。
「はやく行くのよー」
そんな話をしているとマリーモさんに急かされてしまいました。今は任務中ですからね、世間話はまた別の機会にしましょう。