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ドワーフの国へ

「私と一緒に行くパーティーはサラディンさんとコタロウさん、コウメイさんにミミックを連れてきてもらいます。ドワーフとの交渉が主目的なので交渉を阻害しそうな要因のあるシトリンさんは参加するならルート確保の要員になってもらいます」


 シトリンさんというか相方のヨハンさんは異種族と仲良くなるのが得意なのですが、シトリンさんの特性として土の中では力があまり発揮できないので地上での活動に専念してもらいたいところです。


「それ以外のパーティーは?」


「好きに組んだらいいんじゃないですかね? 指名の必要があるならマスター代行にお任せします」


 そもそも交渉に複数パーティーが関われるわけでもないので、行きたいっていう人を満足させるために参加してもらうだけですからね。報酬はどうせクレメンスさんがいくらでも出してくれますし。フォンデール王国はずっと世界のゴタゴタには巻き込まれずにギルドの生んだ利益を得ているので、いま世界で一番お金持ちな国なんだそうですよ。あのカーボ共和国よりも裕福とは驚きですね!


「じゃあソフィアさんアルベルさんマリーモさんトウテツくんでドワーフの国を探索してもらおうかな。マリーモさんが盗賊技能を身に着けているからいけるよね。ヨハンくんとシトリンさんはジョージさんと一緒にドワーフの国までの道を作る工芸者の護衛をしてくれるかい?」


 せんぱいがテキパキとごねるメンバーをいい感じに参加させるパーティーを指定しました。ジョージさんが物凄く強いから護衛は安心ですね。ミラさんみたいに周りを巻き込んだりしませんよね? 不死王の魔力でそれやられるととんでもないことになりますからね?


「あの辺の敵はオークとコボルトかの。コボルトは蒼銀コバルトの装備に身を包んでいるから相当手ごわいぞ、若者よ覚悟したまえ」


 なんかジョージさんがヨハンさんに警告的なことを言っていますが、そういうのはヨハンさんが喜ぶだけだと思います。


「蒼銀か……捕まえて装備を奪うことは可能だろうか?」


 サラディンさんが何やら考えながらジョージさんに聞きます。蒼銀製の武具は凄く強いって聞きますからね。ドワーフが作る装備より……おっと、彼等が聞いたら怒りそうなことを考えてはいけませんね。


「コボルトが出てきたら獲ってきてやろう。じゃが儂を見たら襲ってこずに逃げ出すかもしれんな。奴等は魔力に敏感なのでな」


 そうなんですね。さすが娘のために世界を旅した人は物知りです。


「ドワーフの国の入り口はムートンのあの集落から近いらしいですわ」


 ソフィアさんが集落のブタさんから聞いたドワーフの国の場所を地図で教えてくれました。ふむふむ、ドワーフは坑道を掘って鉱石を採掘しながら、その坑道内で冶金と鍛冶を行って金属製の武具を作っては他国に売っているようですね。商売相手は人間だけじゃないそうですよ。商売で得たお金はだいたい酒代に消えるとか。


「ドワーフはあの広大なネーティアの森全域の地下に広く地下道を作って大陸中を移動しているそうだよ」


「……そう考えると、ハイネシアン帝国とドワーフの協力関係はそこまで強くはないのかもしれないな。カーボ共和国へ攻め入るのに地上の森を迷いながら進んでいるのだし」


 せんぱいの言葉にサラディンさんが腕組みして言います。それはどうでしょうか?


「どうでしょう、ハイネシアン帝国は単にネーティアを侵略する口実としてカーボ共和国に宣戦布告したフシがありますからね」


 私は先ほど考えていた件を伝えます。


「ドワーフはお酒を飲むことしか考えてないわ~」


 そこにミもフタもないことを言う恋茄子です。ドワーフのことにも詳しいのでしょうか。植物だから土の中のことはよく知っていそうですが。


「じゃあ帝国より美味しいお酒をドワーフにあげれば解決っす!」


 ヨハンさんがいつものように深く考えずに発言しますが、実はそれが今回の交渉内容だったりします。ハイネシアン帝国がドワーフにどんな利益を提供しているのかは分かりませんが、こちらはそれ以上にドワーフが喜ぶものを手土産にすればいいのです。それ以上に難しいことはクレメンスさんがドワーフのラウゴットでしたっけ? と話し合って決めてもらうことになりますからね。


「美味しいお酒ねー、ドワーフが喜ぶお酒って言ったら火酒かしら」


「カシュって何っすか?」


「とても強いお酒のことですよ。火を近づけると燃えるから火酒と呼ばれます。いくつか種類がありますが、フォンデール王国の火酒はジュネヴァが有名ですね」


「ジュネヴァって何から作るの?」


 シトリンさんが興味津々といった様子で私に聞いてきます。私もそんなにお酒に詳しいわけではないのですが……。


「ジュネヴァは大麦を発酵させてできたお酒を蒸留して作るらしいですね」


「美味しそう!」


 麦と聞いて以前食べたパスタを思い出したのか、シトリンさんが目をキラキラさせました。実年齢はかなりいってそうですけど、外見的にお酒を飲む姿が想像できませんね。いつもヨハンさんと一緒にジュースを飲んでますし。


「ドワーフが気に入ってくれるといいんだけどね。ギルドの馬車に積んでおいたから、陸路で向かってね」


「陸路以外にどうやって行くのよ」


「エスカなら瞬間移動で行けるでしょ」


 せんぱいが何やら寝言を言っていますが、みんなで大陸の反対側まで行くのにそんな移動方法は取れません。


「世迷言はいいから、もう出発するね。皆さんも準備はいいですか?」


「問題ありませんわ!」


「オッケーっす!」


 特にやる気のある二人が元気よく返事しました。他の人達も大丈夫とのことなので、さっそく馬車に乗り込んで出発します。ギルドのことはせんぱいに丸投げしていきましょう。あー、解放感!


「それじゃ、留守番よろしくー!」


「気をつけてね」


 特別製の馬車とはいえ、大人数が乗り込んで荷物もたくさん積み込んだ荷台はかなり重く、心なしかスピード抑えめで出発するのでした。いいですね、こういうの。

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