沢山の魚料理に舌鼓を打ち、満足したところでメヌエットに聞きたかったことを聞いてみます。
「ずっと気になっていたんですけど、メヌエットさんはどうしてそんなに色々なことを我々に教えてくれるんですか?」
メヌエットは異様に口が軽いというか、むしろ積極的に冒険者に情報を提供してきました。それで彼女の得になることがあるとすれば、情報を聞いたギルドが動くことで彼女の目的が達成しやすくなるというところでしょうか。我々は彼女の情報を基にダンジョンコアなるモンスターを調べたりしました。
「遠く故郷を離れて一人で行動していると、話し相手が欲しくなるものさ」
「なんだ、メヌエットは寂しがり屋だったっすか」
「まあ、そんなところだ」
なんですか、その打算とか関係ない理由。損得勘定ばっかりしてた私が性悪みたいじゃないですか。
「盗んだ小麦粉はどうしたっすか?」
「ボガートに与えて一芝居うってもらった。若い人間を騙して
あー、あんなのに引っかかるのはヨハンさんぐらいですからねぇ。
「あの時には既にユダと取引していたのではないか?」
サラディンさんがメヌエットの行動を指摘します。そういえばソフィアさん達の偽者が現れた後で下手な芝居をしていましたね。そこんところどうなんですか?
「あの時はユダも純粋に失踪した皇帝を探していたよ。私は偽者を派手に動かして皇帝をおびき寄せる策を提案して、恩を売ったのさ。その後でユダが自分の偽者を出してくれと言ってきたんだ」
そういう流れなんですね。その見返りに人間の男を東の大陸へ送ったわけですか。その人達は今どうしているんでしょう?
「それで、あなたの使命ってなんだったんすか?」
コタロウさんが口の中の魚を飲み込んで聞きます。まだ食べ足りないのか、次の焼き魚に手を伸ばしました。意外と食いしん坊さんですね?
「私の使命は、
「捕まえたんですかっ!?」
あまりにも簡単に言うから一瞬聞き流しそうになりましたが、ダンジョンコアは破壊神と取引できる超上級モンスターだったはずです。メヌエットはそこまで強かったのでしょうか。
「話が通じるということは、騙すこともできるということだ」
私が驚いた様子に満足したのか、ニヤリと笑って言います。どうやら力ずくで捕まえたわけではないようですね。
「メヌエットは人を騙すのが得意っすからねー」
そうでしょうか? 彼女に騙されるようなのはヨハンさんぐらいだと思いますけど。ヨハンさん並のアレなモンスターだった可能性が高いかと。
『そのダンジョンコアって奴はどこにいるんだい?』
ずっと魚を貪り食っていたトウテツが話に参加してきました。魔族とは闇の軍勢繋がりで親近感が湧くのでしょうか。私も気になりますけど。
「今は圧縮空間に封印している。さすがに私一人では手に余る怪物だったのでね」
あー、そんな魔法もありましたね。外界と完全に断絶した空間を作ってその中に閉じ込めておくんですね。そうすれば破壊神ですら接触することはできません。
「なるほど、ダンジョンコアも破壊神にドンケルハイトを捧げないと何も生み出せないみたいですしね」
「は?」
何気なく言った私の言葉に、メヌエットが何か凄く驚いた顔を向けてきました。そういえばこれは私のギフトで得た情報でしたね。あまり詳しい情報は誰にも伝えていませんでしたっけ。
「ドンケルハイトってなんか聞いたことあるっす!」
ヨハンさんが柄にもないことを言い出しました。ヨハンさんなのに、そんなこと知ってるんですか?
「そうだ、ソクレース様が仰っていたわ! ドンケルハイトをリヒトブリクに変換してるって!」
ここぞとばかりにシトリンさんが騒ぎ出します。そういえばサリエリ先生がそんなことを言っていましたね。
「私の知らない情報をずいぶんと持っているみたいだな。創造神と対話したのか?」
「海で顔を出してきたっす」
「……それをされると普通は海の藻屑になるのだが。本当に変わった奴だなお前は」
メヌエットが呆れた様子でヨハンさんに目を向けています。実際とんでもない冒険をしてますからねこの人。
「情報交換をする時間はいくらでもある。この辺で一旦話を止めて、そろそろ船に向かわないか?」
話が盛り上がり始めたところでサラディンさんが止めに入りました。長い話になりそうですしね、もう結構長居してますし。
「一度海に出たら、ここに戻ってこれるのは数週間後だ。十分な準備をしておくといい」
切り替えの早いメヌエットが忠告してきました。大陸間を往復するわけですからね。帰りはメヌエットが抜けて先輩と
ここにきて、やっと私の胸が高鳴り始めました。ついに、ずっと会いたかった先輩を迎えに行くんですから!