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コタロウ救出作戦

 ギルドに帰ると、ミラさんとサラディンさんが迎えてくれました。


「お留守番ありがとうございます。ついでにもう一つお願いがあるのですが」


「コタロウを助けにいくんだな?」


「えっ、サラディンさん達もフィリップ殿下と共謀していたんですか!?」


「えっ、フィリップ殿下って王太子? 国王と話して来たんじゃないの?」


 なんだかおかしなことになっていますが、どうやら二人は今回のダンスパーティーには関わっていないようです。


「顔を見ればわかるさ。ずっと悩んでいたことだろう?」


 とのことです。私、そんなに顔に出てました?


「ダンスパーティーは私と王太子殿下をお見合いさせようとしていたみたいですけど、殿下にその気は無かったようで。私が余計なことを心配しすぎだとお説教されてしまいました」


「よく分かってるじゃない、フィリップ」


 呼び捨てにするのはやめましょうね、ミラさん。


「コタロウを助け出すのはマスターなら容易いだろう。あの男エルフも連れてくるつもりか」


「それなんですけど、コタロウさんのいる牢屋の中に移動するのは簡単ですが、そこから牢を出て隣の牢を開けるのは私にはちょっと……」


「俺がいるじゃあねぇかぁ!」


 うわびっくりした! いきなり背後からゲンザブロウさんが声を上げました。いつの間に来たんですか?


「そうなると帰りは二人増える。一度に何人まで連れて移動できるんだ?」


 さすがのサラディンさん。私が遠くまで運べる人数には限りがあることを覚えていました。


「行きが二人で帰りが四人となると、ここまで帰ってくるのは無理ですね。二人でも無理ですけど」


 城の外に協力者がいればそこまで跳べると説明しました。それはギルドの誰かにやってもらいましょう。私が一人で行ってコタロウさんと二人で帰る場合でも協力者は必須です。


「……私も入れて三人と五人では?」


 おや、サラディンさんも一緒に行きたいんですか?


「ちょっと厳しいですが、出発する場所を北の方にすればなんとか」


「ではそれでいこう」


 サラディンさんが強く同行を希望しています。当然彼のことだから考えがあるのでしょう。おそらく、カリオストロやイーリエルとの交戦があるだろうと。


 確かに、私でもあの二人と戦うのは厳しいです。遠距離移動の魔力を残したままで、となればなおさらでしょう。コタロウさんだけなら安全に助け出せるのですが、どうやらサラディンさんはあのロランという男エルフを助け出すことを重視しているようです。


「ただ、私は一切戦えないと思います」


「それでいい。では出発の時刻を決めようか」


 どっちがギルドマスターか分からなくなりそうですが、こういうことはサラディンさんに頼った方がいいのは間違いありません。殿下にも仲間を頼れと言われたばかりですからね!


 今更急ぐ必要もないということで、準備を万全にして最適な時間を選ぶことになりました。具体的には早朝、陽が昇る前。城の外で待ってもらう協力者は、ユウホウさんとアルスリアさんにお願いすることになりました。ゲンザブロウさんと仲がいいですし、能力的にも信頼できますからね。


「任せとけぇ。牢屋の鍵なんざぁ、30秒もあれば開くさぁ」


 ゲンザブロウさんは盗賊の腕に関しては絶対に曖昧なことは言いません。彼が30秒と言うなら、30秒かかるのでしょう。


「30秒か……各人を別々の部屋に移動させることは可能か?」


 サラディンさんが聞いてきました。言いたいことは分かります。コタロウさんの部屋に私、ロランの部屋にゲンザブロウさんを移動させて二つの扉を同時に解錠するんですね。コタロウさんも盗賊職ですからね。


「できますよ。サラディンさんはどちらに行きますか?」


「可能なら、私は牢の外側に送ってくれ。敵は外にいるからな」


 なるほど。もし敵が丁度こちらを見ていたら、鍵を開ける前に外から攻撃されるかもしれません。サラディンさんが外側に行って、解錠の時間稼ぎをするということですね。


「あの鳥女がいたら、危ないわよ?」


 ミラさんが心配そうに言います。魔法を斬られてからずっと意識していますね。実際とんでもない相手ですからね。


「……ふっ、俺を誰だと思っているんだ、ミラ」


 んん? なんかカッコつけたこと言ってますけど、そんなキャラでしたっけ? ミラさんも妙に気遣うような表情です。


 そういえば、この二人けっこう気が合うし、よく一緒に行動してるんですよね……あやしい。


 それにしても、最短で30秒もあのイーリエル(とカリオストロ)と一人で戦うような危険を冒してでもロランを助け出すことにこだわる理由は何でしょう。ただの同情で、自分だけでなく仲間の身も危険に晒す人ではありません。必ず重大な理由があるはず。


「そんじゃあユウホウ達も呼んでくるぜぇ。どうせならハイネシアン帝国領まで行こうぜぇ」


 ゲンザブロウさんの提案で、まずハイネシアン帝国領まで全員が馬車に乗って移動し、そこにユウホウさんとアルスリアさんを残し、準備ができたら作戦開始となりました。予めコタロウさんにも計画を伝えます。


「ではギルドの留守番はお願いしますね、ミラさん」


「任せといて。絶対無理しちゃ駄目よ!」


 よし、コタロウさん救出作戦の開始です!

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