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第11話 魔法

 夕飯は、臭みをとったお肉と野草たっぷりを炊き込んだご飯と、ゴロゴロ野菜を入れたスープ。

 お腹にたまるご飯はみんな喜んだ。お肉が入っているとご馳走感が増す。

 いつかお肉を単品で、おかずとして出したいね。


 食事の後片付けをしてから、わたしはカバンを丁寧に洗った。

 夜に干しておいて平気かなと心配していると、ジークが乾かしてくれるという。


「乾かすって?」


「風魔法で」


「ジーク、魔法が使えるの?」


「え、ああ、大して魔力があるわけじゃないけどね」


 魔法を使えるのは5歳から。教会で魔を通してもらうのが5歳で、わたしは魔力が多いみたいだし、属性も複数あった。だけど、お金にものをいわせフライングで見てもらった半分だけ妹の魔力は、わたしより少なかったみたいで、それがシャクに触ったらしく、魔法を習わせてもらえなかった。

 魔法はいつか習得したい。


「魔法を使うところを見たい」


 といえば、ジークは頷いた。

 じゃあ行くよと言って、カバンに掌をかざすようにした。

 掌から風が出たかのようだ。

 少しの間続けると、カバンが乾いた。

 ええ? もう? すっごく早くない?


「大切なカバンだったんだって? 見つかってよかったね」


「うん。ジークも乾かしてくれてありがとう」


「どういたしまして」


「ジークはどうやって魔法が使えるようになったの?」


「人から教わった」


「ねぇ、わたしに教えてくれない?」


「教えるって魔法を?」


「そう!」


「風属性なの?」


 わたしは唇を噛んだ。


「魔力は通した?」


 遠慮がちにジークに聞かれる。


「うん、教会に行って魔力を通してもらった。属性が複数あったみたいなんだけど、……属性も教えてもらえなかったんだ」


「そっか。僕が使うのは風だけだけど、一緒に明日やってみる?」


 わたしは大きく頷いて、お願いした。

 魔法が使えたら、可能性がグッと広がる気がする!



 わたしは部屋に戻ってから、先生に借りた裁縫道具で、ショルダーストラップをしっかりと縫い付けた。

 そしてカバンをしっかり抱き込んだまま眠ってしまった。



 鳥の鳴き声で目が覚めた。

 カーテンの隙間から日が入ってきている。

 スッキリした目覚めだ。

 ベッドを整え、掃除が終わったら、食事の用意だ。

 ノシシの骨のところについていたお肉をこそぎ落として集めたものを、塩と野草に漬け込んでおいた。それを先生に焼いてもらう。

 いい匂いがしてくると、子供たちが炊飯場に集まってくる。

 粉を溶いた生地を先生に焼いてもらう。

 まあるくクレープみたいに焼いてもらって、そこに野菜とお肉を包み込む。

 お肉が入っているからか好評。

 おいしーと歓声をあげながらあっという間に完食。

 満足度が高かったみたいだ。


 後片付けの後は、洗濯班と畑の世話、森へ行く子と班を分けた。

 森に行くのは、ジーク、レイ、獣を仕留めてくれた9歳のモク、7歳のイックス、わたしの5人だ。

 斜めがけしたわたしのカバンには、収穫の際に必要となる布や、獣が掛かっていたら持ち運ぶための紐、予備のナイフなんかを入れてある。


 最初に川原にいき、ゴミなどが残されるカーブのところを見て回る。

 蔦で編んだような籠があり、これはいいとモクはそこに紐を通して、バッグのように斜めがけした。

 野ネズミ用の罠の1箇所はかかっていなくて、もうひとつの方は何かに追われていたのか7匹も入っていた。


 モクは躊躇うことなくシメていき、自分の腰にある籠の中に入れていく。

 落とし穴式の罠も、何もかかっていなかった。

 かかること、かからないこともあるわけだから……罠を多くしていこうと、ジークとイックスが落とし穴を掘った。わたしもやったけど、重労働だ。すぐに座り込んでしまった。

 なんとか小さめだけど穴を掘り、そして上に枝や草を撒き、穴を見えなくする。


 それからわたしたちは野ネズミを捌くために川原に戻った。

 モクとイックス、ジークがお互いに確かめあいながら捌いていく。


 わたしとレイはポッサムの巣を探すことにした。けれど、新しい巣を見つけることはできなかった。

 戻るとまだ捌いていたので、わたしは血のついたモクの籠を川の水につけて洗うことにした。洗うといっても、ただ川に入り口を向けて置き、籠が流れないよう手で押さえていただけだ。

 そこに何か当たった気がして覗き込むと、小魚が入っていた。

 え。

 あ、そっか。こうやっても取れるか。


 わたしは籠を水から出してレイを呼ぶ。


「どうした?」


「魚取れた!」


 レイが籠を覗き込む。


「ねー、魚を取る仕掛けを作らない?」


「仕掛け? どうやって?」


「ほら、あそこ緩やかでしょ?」


 流れが緩やかなところがある。カーブの前あたりだ。


「あそこにね、石を置いて別の流れを作るの。ここをプールにしちゃう。こっちに迷い込んだ魚は戻れないでしょ?」


「プール?」


「ええと、こっちは堰き止めて魚を出さない溜池?にするの」


 そしてプールには野ネズミの皮を少し置いておく。

 レイはわたしの説明じゃわからなかったみたいだけど、石を運ぶのを手伝ってくれた。

 川の流れを激しく変えるわけではない。

 緩やかなところにちょっとだけ、違う流れを作るだけだ。

 大きな石でまあるいプールを作る。一方向だけ石は置かずにね。

 すると作っているうちに、魚が1匹プールに飛び込んできた。

 わたしとレイは顔を見合わせる。

 ふたりで捕まえようと格闘したけれど、80センチ四方もないプールなのに、捕まえられない。

 とわたしは尻餅をついて、服がびっしょりになってしまった。


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