「では、川原には、鞄を探しに行ったのね?」
「はい。マーサと一緒に作ったものだったから」
「マーサ?」
「わたしによくしてくれた、メイドのおばあちゃんです」
捨ててと言われたカーテン生地をとっておいて、カバンや、床敷にしたり、隙間風が入ってくるところを塞ぐのに使い、大活躍した話をした。
中に大したものは入ってなかったけど、思い出のものだから残ってたらいいなと思ったのだと。
それからポッサムの巣を見つけたので、レイと一緒にお宝をいただいた。
「ポッサムって獣がいるの? 私は知らないんだけど」
「鼻が出ている、小さい茶色い獣です。土の中に巣を作って、キラキラしたものをため込むんです」
わたしはキラキラが好きで巣に持ち込むけど、光が入ってこないから光らなくなって、永遠にキラキラを集めるんだ説を話した。
ひかり玉と呼ばれる、川で長年晒されて石がまあるく輝くように光る石。それも集めるから、それが川中でなく他の場所にあると、ポッサムの巣が近くにあることが多い。巣に持ち込むときに落としてしまったのだろう。
それでレイと一緒に巣を探してみたら、あったので、巣のそばでジャンプをした。家が揺れるとポッサムは驚いて出てくる。人を見てさらに驚ろき、臆病だからしばらく帰ってこない。そのウチに、ポッサムの宝物をいただいた。
ポッサムにしては巣の中だと光らないので、ガラクタと認識されてるみたいなんだけどね。
それで手を入れてもらったら、硬貨、指輪、ブローチ、カフスボタンが出てきた。
「まぁ、そんなものまで?」
わたしは預けていた金貨を出してとレイにいう。
レイがテーブルの上に、金貨を置いた。
「こ、これは」
「わたしたちじゃ盗んだとか言われそうだから、買い物ができなかったんです。先生、これで食糧を買ってきて欲しいです」
先生は目をぱちくりとした。
「これはとても高価なものよ? ふたりが見つけたのだから、ふたりで使ったらどうかしら? 見つけた銅貨で今日の食料を買ってきてくれたんでしょう?」
先生は金貨をわたしたちの方に押し戻す。
レイと目が合う。
「レイはどうしたい?」
わたしは尋ねた。
「俺はなにもしてない。ひかり玉のこともポッサムのことも知らなかった。全部お前がしたことだ。だからお前が決めればいい」
「わたしはみんなで毎日、ちゃんと食べたいです。だから先生、この金貨で買い物をしてきて欲しいです。畑で野菜を作りましょう。森に罠を張って獣を取りましょう。それから小さな子でもできる内職をしましょう。
先生がダンジョン屋さんで相談してください。絶対力になってくれるから!」
「そんな子供を働かすなんて……」
「先生、立ってるものは親でも使えっていうでしょう?」
「え? 親でも?」
あれ、前世で聞いたことか。
「働くってほどでもありません。ただ食べるためには、しなくちゃいけないこともあります。働かないでいいのは、優雅なお金のある人だけです!」
「え、ええ」
先生はわたしの迫力に押されている。
「こき使うつもりはありません。協力してくれる人がいれば嬉しいけど。わたしはやるから、先生、お願いします」
と言った瞬間、ドアが開いて、子供たちが雪崩れ込んできた。
な、なにごと?
下の方の子は潰れている。
「これ、あなたたちなにをしていたの?」
「ごめんなさい、話が気になって」
とナンが謝った。みんなでドアの向こうで盗み聞きしていて。押しやられドアが開き、雪崩れ込んでしまったみたいだ。
「お、俺、罠仕掛けてみたい!」
「俺、ポッサム見たい!」
「野菜、育てる!」
「ないしょくって、なにをするの?」
みんな暮らしをよくするために、なんでもしたい考えのようだ。
わたしはヒロインのしていたことを思い出しながら、きっとここでもできることを挙げて、みんなと計画を練っていった。
次の日、わたしは先生とジーク、それから体の大きめの男の子たちと一緒に街へと行った。その間、レイはポッサムの巣を探すそうだ。何人かと一緒に。
ナンは掃除や、畑にするところに今日は水を撒く作業をしてくれると言った。
ダンジョン屋に入ると、店の亭主が立ち上がる。
「ホーリーお嬢さま!」
「まぁ、ガウダスさん、あなたのお店だったのね」
「お元気そうで安心しやした。口の達者な娘っ子、本当にすぐに連れてきてくれたな」
えへへとわたしは笑った。
「今日はなにをお求めで?」
先生は予算を言ってから、わたしが頼んだもののことを相談してくれた。
「んー、苗はばっちゃんのとこの方がいいのが育つな」
などボソボソ言って、買い物ができるよう算段してくれた。
その上、重たいものは後で運んでくれるというではないか! ガウダスさん、いい人! というか、ホーリー先生大好きだね。
これから子供たちで買いに来ても、ホーリー先生が顔を見たがっているとか言ったら、孤児院まで荷物を届けてくれそうだ。
わたしは善意につけ込んだ悪いことを考えながら、ニヤッとしていた。