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第9話 金貨の使い道

「では、川原には、鞄を探しに行ったのね?」


「はい。マーサと一緒に作ったものだったから」


「マーサ?」


「わたしによくしてくれた、メイドのおばあちゃんです」


 捨ててと言われたカーテン生地をとっておいて、カバンや、床敷にしたり、隙間風が入ってくるところを塞ぐのに使い、大活躍した話をした。

 中に大したものは入ってなかったけど、思い出のものだから残ってたらいいなと思ったのだと。

 それからポッサムの巣を見つけたので、レイと一緒にお宝をいただいた。


「ポッサムって獣がいるの? 私は知らないんだけど」


「鼻が出ている、小さい茶色い獣です。土の中に巣を作って、キラキラしたものをため込むんです」


 わたしはキラキラが好きで巣に持ち込むけど、光が入ってこないから光らなくなって、永遠にキラキラを集めるんだ説を話した。

 ひかり玉と呼ばれる、川で長年晒されて石がまあるく輝くように光る石。それも集めるから、それが川中でなく他の場所にあると、ポッサムの巣が近くにあることが多い。巣に持ち込むときに落としてしまったのだろう。


 それでレイと一緒に巣を探してみたら、あったので、巣のそばでジャンプをした。家が揺れるとポッサムは驚いて出てくる。人を見てさらに驚ろき、臆病だからしばらく帰ってこない。そのウチに、ポッサムの宝物をいただいた。

 ポッサムにしては巣の中だと光らないので、ガラクタと認識されてるみたいなんだけどね。


 それで手を入れてもらったら、硬貨、指輪、ブローチ、カフスボタンが出てきた。


「まぁ、そんなものまで?」


 わたしは預けていた金貨を出してとレイにいう。

 レイがテーブルの上に、金貨を置いた。


「こ、これは」


「わたしたちじゃ盗んだとか言われそうだから、買い物ができなかったんです。先生、これで食糧を買ってきて欲しいです」


 先生は目をぱちくりとした。


「これはとても高価なものよ? ふたりが見つけたのだから、ふたりで使ったらどうかしら? 見つけた銅貨で今日の食料を買ってきてくれたんでしょう?」


 先生は金貨をわたしたちの方に押し戻す。

 レイと目が合う。


「レイはどうしたい?」


 わたしは尋ねた。


「俺はなにもしてない。ひかり玉のこともポッサムのことも知らなかった。全部お前がしたことだ。だからお前が決めればいい」


「わたしはみんなで毎日、ちゃんと食べたいです。だから先生、この金貨で買い物をしてきて欲しいです。畑で野菜を作りましょう。森に罠を張って獣を取りましょう。それから小さな子でもできる内職をしましょう。

 先生がダンジョン屋さんで相談してください。絶対力になってくれるから!」


「そんな子供を働かすなんて……」


「先生、立ってるものは親でも使えっていうでしょう?」


「え? 親でも?」


 あれ、前世で聞いたことか。


「働くってほどでもありません。ただ食べるためには、しなくちゃいけないこともあります。働かないでいいのは、優雅なお金のある人だけです!」


「え、ええ」


 先生はわたしの迫力に押されている。


「こき使うつもりはありません。協力してくれる人がいれば嬉しいけど。わたしはやるから、先生、お願いします」


 と言った瞬間、ドアが開いて、子供たちが雪崩れ込んできた。

 な、なにごと?

 下の方の子は潰れている。


「これ、あなたたちなにをしていたの?」


「ごめんなさい、話が気になって」


 とナンが謝った。みんなでドアの向こうで盗み聞きしていて。押しやられドアが開き、雪崩れ込んでしまったみたいだ。


「お、俺、罠仕掛けてみたい!」

「俺、ポッサム見たい!」

「野菜、育てる!」

「ないしょくって、なにをするの?」


 みんな暮らしをよくするために、なんでもしたい考えのようだ。

 わたしはヒロインのしていたことを思い出しながら、きっとここでもできることを挙げて、みんなと計画を練っていった。


 次の日、わたしは先生とジーク、それから体の大きめの男の子たちと一緒に街へと行った。その間、レイはポッサムの巣を探すそうだ。何人かと一緒に。

 ナンは掃除や、畑にするところに今日は水を撒く作業をしてくれると言った。


 ダンジョン屋に入ると、店の亭主が立ち上がる。


「ホーリーお嬢さま!」


「まぁ、ガウダスさん、あなたのお店だったのね」


「お元気そうで安心しやした。口の達者な娘っ子、本当にすぐに連れてきてくれたな」


 えへへとわたしは笑った。


「今日はなにをお求めで?」


 先生は予算を言ってから、わたしが頼んだもののことを相談してくれた。


「んー、苗はばっちゃんのとこの方がいいのが育つな」


 などボソボソ言って、買い物ができるよう算段してくれた。

 その上、重たいものは後で運んでくれるというではないか! ガウダスさん、いい人! というか、ホーリー先生大好きだね。

 これから子供たちで買いに来ても、ホーリー先生が顔を見たがっているとか言ったら、孤児院まで荷物を届けてくれそうだ。

 わたしは善意につけ込んだ悪いことを考えながら、ニヤッとしていた。



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