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*第二十一話:裏話・終わりを継ぐ者





 予定通りA.N.T部隊が病院に突入するのを見計らって脱出したのに、計画と違い過ぎる。坂城め、あれだけ大口を叩いておきながらこのザマか。

 所詮は革命家気取りのアマチュア軍事マニアでしかなかった訳だ。まあ、そんなモノに期待した私も浅はかだったが。

 しかしこれであの大学病院にも戻れなくなった。関根院長とその周辺を固める邪魔者を排除して、最高権威の座を得る機会を逃してしまったな。


(しかし、あの適応者さえいなければ、アマチュア軍事マニアでも上手くいっていたはずだ)


 このアンプル弾が完成したら、必ずあの怪物を始末してやる。そんな事を考えながら中洲地区に続く橋の近くで、井堀達と合流した。


「まったく、何て体たらくだ」

「仕方あるまい、今回は運が悪かった」


 開口一番罵る私に、井堀はそう言って肩を竦めて見せる。


「それよりも、これからどうするかだ」

「ふん……支部の者でも集めるか?」


 そんな私の返答に、井堀は首を振る。


「支部に残った連中は、坂城総長の言う事しか聞かないだろう」


 紛いなりにも組織内では人望があるカリスマ指導者だったという。くだらない。人望などコネの一種に過ぎん。全てを従わせる権威こそが、人による人の支配を最も強固にするのだ。


「坂城総長が居なくなった今、A.N.Tは解散だ。俺達は俺達でやっていく」


 彼はそう言って戦闘服からA.N.Tのワッペンを剥がして捨てた。現在はフリーになったという事だ。周りの部下達も、彼に倣ってワッペンを捨てた。そして井堀は続けてこう告げる。


「しかし、どこか帰依きえ先が必要だ。俺達のような戦闘に特化した集団は、優れた指導者の元で動くべきなんだ」

「ふむ。その持論には同意出来る」


 私はそう言って頷く。あの避難所にはもう近寄れない。他の避難所なり、武装組織なりがあれば、そこに売り込むつもりだと彼は言う。


「とりあえず、中洲地区にはあの適応者ススムが本拠にしているらしい病院があると聞く。我々が活動するのは危険だ」


 確か、調達部の者が里羽田中央病院とか言っていたな。


「だから、中洲地区の向こう側まで行ってみようと思う。埠頭やその近辺の町なら、また別の組織があるかもしれない」

「中洲地区の向こうか……確か、高校などの施設があったな。あと総合病院もあったはずだ」


 不死者の彷徨う今の世は、戦える力が必要とされる終末の刻。適当に避難所を巡れば、自分達の力を必要とする集団や、仕えるに値する組織の指導者に出会える事もあるだろう。


「あんたのソレも、俺達の切り札になるはずだ」

「ふん、コレを完成させる為にも、ちゃんとした研究設備のある避難所を選んでほしいね」


 こうして私は、井堀をリーダーとしたフリーの戦闘集団に同行して、新しい帰依先を探す事になった。





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