「あいつ……やっぱり、自殺だったんですかね……?」
第二目標のマンションの一室を仲間が物色している間、俺は窓際で周囲の警戒をしながら、隣で一緒に見張りをやっている刺又持ちの倉田さんに問い掛ける。
調達部隊の第一陣として、朝一に出掛けた第一目標のマンション前で起きたトラブル。小学校の避難所にも、病院の連中にも属していないらしい生存者から向けられた言葉。
俺のせいで死んだと聞かされた。知らないおっさんが事故で怪我したとか、その後死んだとか聞いても、何も思わなかった。
今の世の中じゃあ仕方の無い事、よくある事としか考えてなかった。
でも、名前が分かった。
何をして来た人なのかが分かった。
黒田って名前だったらしいあのおっさんは、不死病に効く血清を作って、病院に届けに行く途中だったって、あいつは言っていた。
自分のした事に、急に実感が湧いた気がして、怖くなった。
死体共を呼び寄せて、自らその群れの中に消えて行ったあいつ。あれじゃあきっと助からない。何故あんな事をしたんだろう。俺達に——こんな世の中に絶望したのだろうか。
俺は、本当に取り返しのつかない事をしてしまったんじゃないかって、朝からずっと、その事ばかり考えている。
「気にするな、お前はやるべき事をちゃんとやっている」
倉田さんはそう言って俺の肩を叩くと、続けてこうも言った。
「だが確かに、手違いとは言え、無闇に人を死なせるのは褒められたものじゃない。今度から武器の扱いにはくれぐれも気を付ける事だ」
「……はい」
これまでにも散々注意はされていたけれど、今ほど強く意識したのは初めてだと思う。どこかゲーム感覚でいたのかもしれない。でも、これは現実なんだ。
このボルトを当てると、相手は死ぬ。俺は、人を殺せる道具を使ってるんだ。
あいつが死体共に交じって現れた時、俺はやるべき事をやれるだろうか。愛用のクロスボウを抱え直しながら、ただそんな事を考えていた。