まったくいい世の中になったもんだ。つまらねー勉強も押し付けられねーし、ガッコーにも行かなくていい。うぜーポリ公もいねぇ。
何でも好き放題出来るってワケでもねぇが、町中うろついてる死体ぶっ潰して物資を持ち帰りゃあ喝采を浴びられるんだぜ。
このぶっ潰れた世界で死体を狩りまくる生活は、サイコーに楽しい。生きてる実感ってやつだな。
まあ、二週間くらい前にこの世の終わりが始まった時は、俺もちょっとはビビッたケドよ。今はこうして自警団の
大抵の奴は動く死体にビビッて外も出歩けねぇ中で、避難民の食いもんやら服やらを調達して来られる俺達は特別待遇されてるってワケさ。女もあてがわれるしな。
「おい、武器をそんな風に引き摺るな。音で奴等が寄って来たら面倒だろ」
おっと、柴崎さんから御小言が飛んで来たぜ。このヒトは小学校に籠城してる避難民のリーダーで、俺達自警団の外回りにも同行するナイスガイなアニキだ。
安全なところから喚くだけのクソ野郎共とは違う、本物のリーダーだぜ。
「えー? そんときゃコイツでぶっ潰しゃいいじゃねーすか?」
別に口答えするつもりはねーけど、実際ノロマな死体共はぶっ潰す方が手っ取り早いんだよな。どの道この町の物資を根こそぎ集めようと思ったら、全部の死体共を狩る事になるんだから。
そんなこんなで柴崎さんの取り巻き共とやいやい言ってたら、死体共が集まって来ちまった。
この通学路は集めた物資を小学校まで運ぶ為のルートだ。俺達戦闘員は、建物に突っ込んで物資を運び出したら、通学路の先にある広場にまとめる。
そこに集まった物資を校舎内に運び込むのは、非戦闘員達の仕事だ。だからこの辺りで死体共にうろつかれるのは困るんだ。運搬役がビビっちまって働かねぇからな。
サブリーダーの福部のおっちゃんが狩りを提案した。俺も賛成だ。柴崎さんもオーケーを出した。さあ、狩りの時間だ!
街路樹を抜けて車道に出た瞬間、いきなり垣根の陰から何かが飛び出して来やがった。低い位置で素早かったからイヌころか何かと思ったが、よく見たら人間じゃねーか。
脅かしやがって、何でこんな場所に潜んでいやがった。
文句を言ってやろうとソイツに向き直った時、俺は唖然とした。
「な、なんだ、あいつは!」
柴崎さんの取り巻きが「止まれ!」とか言ってるケド、今の見てなかったのか……? あいつ、今さっきまで目の前にいたんだぞ? 何でもうあんなトコ走ってんだよ……ありえねぇ。
俺も世界が終わる前は改造バイクとか乗り回してたから、感覚で分かる。いくら足が速いつってもアレはありえねぇ。時速60キロくらい出てんじゃねーのか?
「こっちの処理が先だ。
おっと、死体共を片付けねえと……あいつ、本当に人間だったのか……?