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第9話 妹が教えてくれたこと

「おっはよー、親友。今日も相変わらず昼飯に持ってきてるのは幼馴染の愛妻弁当かー? 爆発しろなー、マジ」


 言いながら、バシ、と俺の背中を叩いてくる雄太。


 俺はそんな雄太を無視し、自分の席についたまま、ボーっと前を眺めるばかり。


「……? おい。どしたよ成哉? 生きてるか?」


「………………っ」


「なんかあったんか? もう少しで地球に隕石が落ちるんじゃないかって怯えてる陰謀論信者みたいな顔してるぞ? 大丈夫だ。今日の天気は晴れ。落ちてくるものは雨だって何もない。ま、しいて言えば俺は可愛い理想の女の子が空から降って来ねーかな? とか思っちゃってるんだけどよ。ゲヘヘ」


「………………っっ」


「おいおい、無視かよ。なんか反応してくれよ成哉。そりゃ俺が朝からうぜーのは自覚済みだぞ? わざとウザ絡みしてんだもんよ。ほら、言うだろ? ウザ絡みできるのは親友の証ってよ。俺とお前、もう親友なんだよ。ズッ友なんダヨ」


 べらべらと訳の分からないことばかり言う雄太を無視し続け、俺は椅子から立ち上がる。


 そして、壊れかけのロボットみたいにギギギと首を回し、隣に立ってる親友の方を見た。


「おっ。やっと反応してくれたな。おはよーさん」


「…………けんだ……」


「けんた? おいおい。勘弁してくれよ。俺の名前は雄太だって。いつからコ●ンに出てくるデブ小学生になったんだ俺は」


「いや、それを言うならあの太ましい小学生の名前は『ゲンタ』な。『けんた』じゃねーよ、勘違いするな」


 言うと、雄太はビシッと俺を指差し、「ナイスツッコミ」とテンション高めに返してきた。


 いつも以上にイラっときてしまうのは、きっと今の俺に余裕が無いからだろう。


 動揺してるんだ。さっき、成実からあんなことを聞いたから。


「しかし、いっつも朝はテンション低いとはいえ、今日は格別だな成哉。なんかあったのか?」


 空いていた前の席に腰を下ろしながら雄太が問うてくる。


 俺はため息をつきつつ、「いや……」と歯切れ悪く返した。


「何もない……ってわけじゃないんだ。けど、簡単に言える話でもないっていうかさ」


「ふむふむ。訳アリか? ただ、これだけはわかる。また幼馴染ちゃんのことだろ?」


「……ぅぐ」


「ぬっふっふ。言うまでもないな。散るがよいぞ、リア充が」


「いや、なんでそこで罵倒なんだよ。こっちは真剣に悩んでんだぞ」


「うるさいわい! こちとら非リア過ぎて女の子に関する悩みもクソもねえんだぞ! 悩めるだけ幸せだと思え! この贅沢者が!」


「って言ってもいつもはお前の方が恋愛話多めだろ……。俺なんていつも聞き役だったし」


 そうなのだ。


 だから、どっちかというと本当のところ非リアは俺。


 かかわりのある女の子は灯璃しかいないし、その灯璃も少し前まで俺の子を邪険に扱ってた。


 故にどの女の子とも接点が無かったんだ。贅沢者はむしろ雄太の方。


 今ちょっと彼女がいないくらいで騒ぎ過ぎだ。


「関係ない関係ない! 幼馴染と恋仲になるとか王道過ぎて眩し過ぎてって感じなんだよ。俺は今、猛烈に成哉が羨ましいの。嫉妬してるの」


「んなこと言われたって……。てか、恋仲にはまだなってねぇ……」


「うわぁ、『まだ』って……。余裕あるぅ……」


「言葉の綾だよ! 何が『うわぁ……』だ! やめろ、その反応と言い方と表情!」


「成哉、お前さてはなんか進展あったろ?」


「っ……。な、無いよ別に!」


「嘘。その反応はあったな。何だ? 話してみ?」


「っっっ~……!」


 モテ男の目は誤魔化せないというやつだろうか。


 ちょうどよかったし、誰かに相談したかったのも事実だ。


 俺は一呼吸置いて切り出す。


「……なんか、妹から灯璃が俺のこと好きなんじゃないかって聞いてさ……」


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