「あれ? でも
白い少女が話を締めた後、リベルラはこの話のおかしい点を上げる。
保持者となれば、それ以前の記憶が無くなるはずなのだが、インフェリアイはその前の記憶を朧気ながら思い出しているという状況だ。
「確かに……リベルラの言う通りだな。劣った眼の名前がなんで『劣った眼』なのか、その理由は分かった。が、この世界に連れてこられる以前の記憶が戻り始めたっつー話はおかしくねえか?」
探偵局員二人の視線を受け、白い少女は淡々と答える。
「戻ったのはインフェリアイがアナタ方に記憶を植え付けられる前の記憶ですよ」
「ややこしいんだよ……」
ラロックはしかめっ面で答える。
「ねえ、当事者である私を置いて私の話をしないでほしいのだけれど」
白い少女とラロック間にインフェリアイは割って入る。
「私のことは分かったわよ。それで、私達にどうしろと?」
隣で寝息をたてる美少女の手を握りながら、インフェリアイはラロックに問いかける。
ラロック達の目的のために必要なのは、インフェリアイ達『保持者』だ。しかし、この世界の神という白い少女すら、ラロック達のやろうとしていることが解らない。
「簡単だ。この世界の神に成り代わろうとする馬鹿をこの世界から引きずり出す!」
「さっきまで、この世界で戦う方法が――とか言ってなかったっけ?」
「それ言ったのお前だよ、あとさっきまでは調べてる最中! 調べ終わった結論がこれだってことだよ!」
「痛い痛い痛い痛いっ」
リベルラの顔面を掴んで激しくシェイクするラロック。
「引きずり出すのなら、まだしばらくインフェリアイをここに匿う方がいいですね」
相変わらず感情の無い声音で白い少女はラロック達に言う。
「まだここにいないといけないの?」
インフェリアイはその言葉に反応を返す。
「そうですよ。あの二人が来たのでややこしくなりましたが、元々ワタシがアナタ達をこの場へ呼んだのですよ」
「そういえばそうだったわね……」
「まあ私の用は美少女が起きてからでもいいでしょう」
白い少女が美少女を一瞥する。
「んじゃあたしら一回帰るわ」
ラロックとリベルラはなにか話していたのだろうか。
「私を攫わなくてもいいの?」
「また後で攫いに来る。それまではここでいりゃあいい」
攫ったり後で攫いに来るだのなかなか物騒なことを言っているが、今までの短時間で、探偵局員の二人はインフェリアイと美少女に危害を与える気が無いことが分かった。
また後で美少女と話す必要がある。だからここにしばらく滞在することにも異論はなかった。
「また後で」
「またねー」
そう言うと、リベルラとラロックは見えない空間にめり込むように姿を消した。
「アナタも疲れたでしょう? 少し休憩でもしましょう」
「ええ……」
ややこしい話に頭を使ったインフェリアイは、白い少女の言葉に甘えて、美少女と肩を寄せ合って少しの間休むことにするのだった。