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62 来賓を迎える。

 次の日から就任パーティ前日までに、リオネルの領地をあちこち見に行った。

 リオネルが風魔法で連れて行ってくれるので、行きたい場所にはすぐ着いた。


 いくつかある街は綺麗だったし、農村の畑も整備が行き届いていた。


「なんていうか、心象の良い領地だねえ」

「でしょう。良いところをたまわったと思うよ」


 寒いものの、自然があまりにも綺麗なので、リージョ達も連れてピクニックしてみたり、乗馬してみたり。

 楽しい日々が過ぎていき――そして、リオネルが領主になって初めてのパーティが、開かれる日が来た。



 両親に加えて、近隣の領地の貴族がやってくる。

 訪問客リストを見ると、リシュパンの領地と地続きなので、昔から知ってる貴族が多かった。

 なので、新たに覚える相手はそれほど多くなく、手間取ることはなかった。


 夕暮れになる前からお客様たちは、ぽつぽつ訪れる。


 遅い時間にパーティは解散となるため、宿泊される方々も多いが次の日には帰られる。

 その後の新年明けるまでの数日はしばらく親子水入らずで過ごす予定だ。

 楽しみ。



 ◆



 ――就任披露パーティ当日。


 リオネルと私は来賓らいひんを迎える為に、エントランス先のポーチで出迎える。

 数組受け入れたところで、見慣れた馬車が来た。――両親だ。


「マルリース!! ああ、会いたかったよ! マイエンジェル!!」

「まあまあ、マルリース!! 久しぶりね!!」


 両親が馬車から降りてきて一目散に私に抱きついた。


「お父様、お母様……私も会いたかったよ!!」


 私も二人を交互にハグ仕返した。


「僕もいるんですけど?」


 気づけば背後でリオネルが1人ポツンとしていた。


「やあ、リオネル。おめでとうー」


「棒読み!?」


「だってお前色々勝手する子なんだもーん。それにわりとウチに帰って来ること多いじゃーん。だからレア度が違う。レア度が。マルリース、リオネルが嫌になったらいつでも離婚して私達のところへ戻ってくるんだよ」


「父上、まだ結婚もしてないのに離婚話しないでくださいよ!! てか離婚なんてしませんから」


「まあまあ、お父様は口が悪すぎね?」


「母上、僕に扇子、貸して」


「まあまあ、いいわよぉ~」


「やめい! リオネルにはたかれたら、扇子でも首が飛ぶわ!!」


「さすがに飛ばないよ!?」


 使用人達からも笑いが溢れている。


 そんな事をしていると、他にも馬車がいくつか着いた。


「あらあら、忙しいわね。私たちは一旦、お部屋を案内してもらいましょうか。ね、貴方」


「そうだな。お前たち、ちゃんと挨拶してお迎えするのだよ」


「わかってるよ。ほら、父上。ちゃんと使用人のあとついて行くんだよ? 大丈夫?」


「人を既にボケ老人扱いか!?」


「ちょっと、騒がしいよ。お客様が馬車からまだ降りてないからいいもののー!」


 来賓には間一髪見られなかった。


「(危なかったー)」

「(危なかったね、でも楽しかった)」


 来賓と来賓の挨拶の間にヒソヒソ話した。


 25組くらい挨拶したころだった。


「よぉ、リオネル……と、マルリース嬢だったか」


 空から高速で移動してきた光球が降りてきた。


 剣聖のウィルフレド辺境伯だった。


「わ、光魔法。そういえばウィルフレド閣下は光魔法でしたね。空に浮かぶ光球は美しいです!」


 剣聖ウィルフレドが光魔法所持者だというのは有名な話だ。

 私が言うと、ウィルフレド閣下はニカっと歯を見せて笑った。


「おう、ありがとう。見てくれが派手でなぁ、ちょっと恥ずかしいんだこれが。この度は領主就任パーティに招待頂きありがとうございますよ、と。……うん、すまんなー。もと平民だから挨拶が粗雑だ」


「気にしません。来てくださりありがとうございます、閣下」

「はい、私も気にしません! 私なんて、いま本当に平民ですし!」


「ははは! こりゃ気楽でいいや。良い娘だな! マルリース嬢。良い婚約者ゲットしたなー。リオネル」

「はい、最高の気分ですよ」

「惚気やがってこのー!」


 リオネルの頭をコツっとするウィルフレド閣下。

 微笑ましい。


「あ、閣下。そういえばご同伴は……」

「ああ、妻なら不参加だ。だから光魔法で飛んできた。辺境は遠いからなー」


「そうですよね。あんな遠いところから、こんな年末迫った時期にお越し頂いて本当にありがとうございます」


「いやいや、新年になるとあちこちでパーティ開かれるからな。この時期の方が招待客も来てくれやすいだろう。実際オレも休暇で暇だったし」


「ふふ。今日は美味しいものもたくさん用意してますし、楽しんでいってください」


「おう、むしろ食事しにきたんだぜ、オレは。楽しみだ。じゃあ、会場に入らせてもらうぜ」


「よろしくお願いします」


 二人で閣下を見送った。


「さて、マルリース。もう時間だ。ここは使用人に任せて僕たちは会場へ移動しよう」

「うん」


 わー。パーティで主賓挨拶とか滅多にやることないから、とても緊張するなぁ。

 まあ、私よりも緊張するのはリオネルだろうけど。


 リオネルは涼しい顔をしている……頼もしい。



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