目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
25 ツガイだから?

 でも、それって……と。

 私はここで考えてしまう。


 『運命のツガイ』というものに対して、以前から疑問を持っていた。

 屁理屈かもしれないのだが。


 運命ってなんなのよ、と。


 私は今、たしかにリオネルに対する気持ちが高まっている。


 でも、リオネルだから好きなのか。

 それとも、リオネルがツガイだから好きなのか?


 前者ならば問題ない。だが、後者の場合。

 それは果たして本当に彼を愛してると言えるのだろうか、と。


 多分こんな風に考えてしまうのは、私が今まで人間として生きてきたからだと思う。

 純粋な妖精族であれば、迷わないし、当たり前だと思うのだろう。


 迷わない人間だっているかもしれないけど、私は理解が及ばず悩んでしまう。


 さらに……その自分の気持ちを受け入れたとして、どうすればいいのだろう。


 好きっていえばいいの?

 昔、振ったのに? 今更……?


 散々、弟だと思ってきたのに、ツガイだとわかったとたん、いきなり恋愛対象として見るなんて、誠意のない気持ちのように感じてしまう。


「姉上。工房に着いたよ」


 ……やっぱり姉上に戻ってしまってる。


 ちょっと気持ちがしょんぼりする。

 名前で呼ばれることがとても心地良かったのだと、気がついてしまった。


「あ、ありがとう。もう大丈夫だから、下ろしてくれる?」


「だめだよ、2階まで運ぶよ」


「もう大丈夫だよ。歩ける。それに1階で顔洗ったりしたいから」


「……わかった。でも今日は、泊まるからね。この前みたいにソファを借りるよ」


「えっ。も、もう大丈夫だよ。ちゃんと寮に帰って、ちゃんとベッドで寝なさい」


 帰ってくれないとリージョと話がしづらい……そう思ってなんとか帰らせようと思案していたら、リージョから声が聞こえた。


《――ツガイのしたいようにさせてあげなさい。君が心配なのだよ》


「……っ」


「ほら、また顔が赤くなった」


「いや、これは違うというかなんというか」


「病人の言う事は信じない」



 そう言うと、また横抱きされ、ベッドまで連行された。


 せめて、シャワーを浴びさせてほしい!



 ◆



「り、リオネル。あなたもシャワー浴びてきなさいよ?」


「姉上が寝たら、借りるよ」


 リオネルをなんとか説得し、シャワーを浴びて夜着に着替えることはできた。

 しかし、ヤツは私のベッドに腰掛け、私が眠るのを見張っている……。


「そんな風に見られてたら逆に寝れないわよー。大丈夫よ。ここは2階だし、抜け出してどっか行くってわけでもないから」


「……まあ、たしかにね。じゃあ、シャワー借りて僕は1階のソファで寝てるから、気分悪くなったりしたら呼んでよ?」


「過保護すぎるよ! もう大丈夫だったら。もしそんな時はちゃんと呼ぶよ!」


「わかったよ……」


 リオネルは諦めた顔で頷くと私の額の髪をなで上げた。


 や、やめてくれ。ツガイとわかった今、そういうのは、心臓にくる。


「ごめんね、姉上」


「え、なにが」


「僕が名前で呼びたいって言ったせいで、負担をかけてしまったのかなって」


「あ、いやそれは」


「この話は、一旦なかったことにして。今まで通り、当分姉上って呼ぶね……また折をみて相談させて」


「え」


 え、ちょっと待って、それはそれで、ショックですよ?

 言いたいことを言えず、口をパクパクしているうちに、額にキスされた。


 うあああ!!


「じゃあ、おやすみ」

「お、おやすみ」


 微笑んでお休みを言って、階下へ降りていくリオネル。


 わ、私に負担かけたとか言いつつ、額にキスするとかやめてください。

 弟から姉への親愛なるキスだとはわかるけれども!! 嬉しいけど……!!


 ――ツガイだとわかったリオネルからの、そ、そういうのは……威力が強すぎる!


 寝れるか! いや、まだ寝ないんけども!




コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?