「成功だ!」
「よし! 予定より少ないようだが問題あるまい!」
床に転がっている俺達の周りから、少し離れた所で何やら喜んでいる魔法使いみたいな服を着た、白い髭の爺さんと、カッコ良さげな鎧を着た短い金髪のイケメン?
それに、数人の魔法使いみたいな人が、100メートル走した後みたいに膝に手をつき肩で息をしている。
「おい! そこの白髭の爺さん! 帰れないってどういう事だよ!」
おぉ! 糞ガキ、俺もそれ聞きたいと思った所だ。ナイスだ! ちょっと+補正しておいてやるぞ!
神様も最後に爆弾放りやがるし······ん? にしては俺落ち着いてるな? どうしてだ?
っと、白髭爺さん何か答えるな。
「ようこそアモルファス王国へ、勇者の皆様」
左手を後ろにまわし、右手を左胸に当て軽くお辞儀。
「帰れないとは?」
糞ガキの質問に、『なに言ってんの?』って顔で顎に手を。
「召喚されたけど、元に帰れないって神様に言われたぞ! なにしてくれてんだ!」
「ふむ、そういう事ですか。もちろん帰れますよ」
おっ、帰れるんや。
「なっ! 本当か爺さん!」
「はい。召喚とは送還と2つで1つの魔法になります。それには膨大な魔力が必要になりますので、すぐにとは参りません、最短で約1000日程度必要になります」
「1000日······」
マジかぁ、冷蔵庫の中身はほぼ全滅やね。
「それに、お帰りになる際は現状の、此方に来ていただく時点の状態に戻りますので、ご心配なく」
「そっ、そうか!」
ん~嘘だなぁ~鑑定? あぁ、神眼かぁ、嘘判定できるのね。
しかし、修練しないと使えないって言ってたのに使えるじゃん!
「ちなみに、この場所はもし召喚者が人族でない者や、狂暴な者が召喚された場合の為、この腕輪が無いと出入りが出来ない様に結界が張られています」
と短い金髪イケメン野郎が、ニッコリとスマイル振り撒く、爆発してしまえ!
「皆様、まずは皆様の職業とスキルを確認していきたいと思いますが、ステータスと、声に出しても、念じても良いので試して下さいませ」
「おう! ステータス!」
糞ガキが、やってみるようだ。
「よっしゃー! 言った通り魔法剣士だ! スキルも剣術、
「おぉ! 上級職ですね。スキルレベルはいかほどですか?」
「ん? おっ両方レベル3だな!」
「良いですね。レベルはですね、1は見習い、2は駆け出し、3~5は一人前、6、7は上級者、8、9は達人、10は現在低級スキルの方1名のみとなりますが、そのスキルに関しては並ぶ者無しと、ちなみにその方は、身体強化で素手でも斬撃を掴み傷付かないといわれています」
なんと! それは凄いが、レベ3はとりあえず一人前なんやね。
俺はどうかなっと、ステータス!
名前 ユタ
性別 ♂
年齢 9
職業 鍛冶士Lv 2(神鍛冶士Lv MAX)▼
スキル
鑑定Lv 1(神眼)
身体強化Lv 2(神体強化)
アイテムボックスLv 1(無限収納)
HP 3(測定不能)
MP 3(測定不能)
STR 3(測定不能)
DEF 3(測定不能)
AGL 3(測定不能)
DEX 3(測定不能)
MIND 3(測定不能)
INT 3(測定不能)
LUK 3(測定不能)
おい······エライ事になってますな、途中の▼はとポチっとな!
ぶはっ!?
職業が並んでますやん!
スキルは······並んでますやん!
どないせー言うねん!
あら? スキル名が灰色? ポ······ポチっとな。
現在使用不可
【修練により解放されます】
あぁ、『入れとくの』って入ってるだけかい!
なるほど、いきなり最強スタートではなく、レベルを上げてぼちぼちな感じやね。んで、元々表示部分は、現状使えるって事なんやね。
まぁ、これに関しては落ち着いてから検証しますか。
「おー! スゲーな!」
「はい、しかも支援職の鍛冶士の方なので戦いはしませんが、なんでも真っ赤に焼けた鉄を素手で持っても大丈夫だそうですよ」
「最強じゃん!」
「しかし、武器の使用が、スキルが無い為に、素人に毛が生えた程度で、負けませんが勝つことは出来ないとおっしゃってます」
「勿体ねーな」
確かに勿体ないなぁ、覚えられないのかな?
「そうなのですよ、スキルとは修練で憶える事が出来るのですが、適正が無いといくら修練しても駄目なのですよね。アルバト様も残念がっておりました。」
アルバト様? あぁ、鍛冶士の方ね。
「ちなみに皆様は勇者でありますので、全てのスキルが獲得可能です。ですが、初期に出てないスキルは、Lv10まではまず上がらないでしょう、3~5くらいまでは上がりますので、手数を増やすために修練することをおすすめします」
ほうほう、まぁ、色々やってみますかね。
ってか、年齢 9
まだ腰を床に下ろしたままの姿勢で、目線を下に、着ている服等はそのままの様だが、ズボンの裾がペタンとなり、履いていた靴が脱げている。
手を上げてみる······袖から手が出てない? ドキドキしながら袖を捲ると? ん? 小さな手が? ん?
落ち着け! 深呼吸だ!
吸って~吸って~吸って~吸って~吐く~
も1度確認······。
「なんじゃこりゃー!」
皆が一斉に此方を向くが、そんなこと関係ない!
とりあえず立ち上がり頭から足先まで触診?
ペタペタペタペタペタペタ······。
「若返るって若過ぎじゃー!」
「何だ! デカい声出しやがってガキ! ってお前誰だ!?」
「あんな子いた?」
「ちょっとかわいいね!」
「······」
なんだよこれは、俺なのは間違いないが······。
「ねえねえ。君って迷子かな? お母さんは?」
「おい、聖」
「君! お姉さんに呼びすては駄目だよ!」
「俺だ」
「オレ君て言うのね! 中々カッコいい名前ねぇ~」
聖が俺の頭を撫でてくる。
「最近のキラキラネームってのかしら? でも可愛い~!」
「けっ! ガキが」
はぁ、気づけよまったく······何かテンパったのが虚しくなるな······ペシッと聖の手をはたき
「おい、聖、俺だ、勇大だ!」
「へっ!?」
「なっ!? おっさん!?」
「ぶはっ! 神様ナイス! 神様におっさんは年寄りだから若返させろって、今の神様くらいって言っといたんだけど······ぶはっ、ナイス!
あかん、ブチ切れそうや······一発シバク! 糞ガキに向かって走りだし!
バタン!
ズボンの裾を踏み見事に顔面ダイブしていた。
「痛っー」
と鼻を押さえるが痛みが······ん? 痛くないぞ?
「あー! 大丈夫ー! ユタさんー!」
声の方見ると聖が突進して来る······おい! ちょっと待て!
ズシン!
「グハッ!」
ぐっ! コイツは! ってこれも痛くない?
あっ! 身体強化! ってか神体強化か! スゲーな、完全に鼻から転けたのに、それに聖のタックルは大人の時でも結構しんどいのが、ふわっと触ってきた程度とはこれ、バレない様にしないと面倒くさい事になりそうやなぁ。
あかん整理出来やんから、とりあえずは痛いふりしとこかね。
「おい! 聖、どけ!」
またコアラ状態の聖の頭をナデナデ······しながら糞ガキに目を向け
「糞ガキ! いらん事しやがって何考えてんだ!」
「はぁ~! おっさん若返って良かったじゃん! 感謝しろよ? ギャハハ!」
よし! やっぱり2発シバク! 聖をひっぺがえし立ち上がり糞ガキに向かって走りだし!
「駄目!」
聖が事もあろうにズボンの裾を······。
ズルっ! スポっ! バタン!
「痛っ!」
って痛くないって! すぐさま立ち上がり
「キャー!」
ん? 声を上げる方を見ると、顔を手で隠した女の子達が、指の隙間から見えてますよね?
ってか何か······スースーする······。
ん、下半身が······俺は目線を下に······。
パオン? 大丈夫だ! シャツで見えてない! はず!
足元に3組1000円のトランクス······。
その向こうには俺のズボンを胸に抱えこんでいる聖······。
そっとトランクスを拾い履くがブカブカ······。
「ユ、ユタさん······ごめんなさい」
皆の沈黙が痛い······。
「聖、ズボン返せ」
膝立ちのまま近くに来て、そっと渡してくれる。
何とかズボンを履き、ベルトを目一杯しめる。
ベルト穴で調節するタイプだと詰んでいたが、フリー調節のタイプで助かった。
裾は何重にも折返しクリア!
上着は中に入れるとゴワゴワで気持ち悪いから外出し······
わーい! ワンピースみたい! ってやってられるか!
とりあえずは! ダッシュ! 糞ガキにこのやり場の無い怒りもついでに3発だ!
ドンッ! ギャッ! (鳩尾に正拳1発目)
ゴンッ! グハッ! (アッパー気味に顎へ2発目)
グシャ! ギョピ! (膝蹴りを下から突き上げる様にゴールデンボールへ)
オマケに前屈みになった糞ガキの顔面に
ビシュッ! 返事は無い(鼻を掠めるように肘打ち)
糞ガキはそのままうつ伏せに、お尻を上げた状態でピクピクしている。
「よし! とりあえず今はこのくらいにしといてやる! 次は男の娘になるくらいに潰してやるから憶えておけよ!」
ん? 周りが静かだね。
「あー、すまないが、今の状況を説明して頂けますか?」
イケメンが、そんな事聞いて来るので説明してやった。
「······というわけで、その糞ガキに躾をしたって感じですね」
とイケメンに負けないように微笑み返してやった。
「な、るほど? では貴方は48歳だったが、その、そこで動かなくなっている少年のせいで肉体的に9歳であると? そういう事ですか、ね?」
納得いってるのかいってないのか複雑そうな顔で苦笑している。
チッ! 苦笑もイケメンか!
「はい。まぁ、その糞ガキの自業自得ですな! はっはっはっ」
「はははっ。で、では、少々ゴタゴタしましたが、話を進めてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、いいんじゃない。」
「えっ! ユタさん良いの? ピクピクしたままだけど······」
「はぁ、しゃーないか!」
糞ガキの後ろに回り肩を持ち起き上がらさせ背中に手のひらを添え。
「ふんっ!」
格闘技を習った時に教えてもらった気付けを見様見真似で試してみる。
「ぐはっ!」
「おっ、成功やね。よし起きろ! 話を進めるからシャキッとしてろ!」
まだダメージが残っているようだが知らん! 大分手加減したからいけるだろ。
「準備出来ましたよ」
イケメンさんに笑顔を向けてやった(|笑《ニヤリ》)
「は、はい! で、では話を進めますね。まずはご自身の職業とスキルは確認して頂いたと思います。しかし、私共や、他の皆様は他者の事が分かりません。それを調べる道具を用意してありますので、部屋の移動をしたいと思います。そこで先ほど? あぁ、少しゴタゴタしましたのでお忘れかも知れませんが、この部屋から外ヘ出る為の腕輪の装着をお願いします。後、この腕輪は生活魔法と、小さいですがアイテムボックスが使える様になってます」
そしてさらに奴隷にするスキルもついてますよって事ですね、中々やりますなぁ、神様に聞いてなかったら普通に騙されるよ。
「では、出口前の両脇にいる兵士から腕輪を受け取り、装着後、隣の部屋に移動をお願い致します」
皆がゾロゾロと出口に向かい、糞ガキは内股でヒョコヒョコ。よし俺も行くか。
「はいこれを装着お願いいたしますね」
と兵士さん。
「結構デカイですね! これ、手でないと駄目ですか? 俺は、鍛冶士ですので手にはなるべく何も着けたくないのですが、足首では駄目ですかね?」
「鍛冶士でしたものね。少々お待ちを」
兵士さんは白髭爺さんに聞きに行って。
爺さんと一緒に戻って来た。
「ふむ。確かにその体格で鍛冶士の作業、······難しいか······おい、今アイテムボックスに何か入ってるか?」
「はっ! 予備の剣が入っております!」
「よし! 1度手首より外し足首に着けてみよ!」
「はっ!」
兵士さん腕輪を外し、おぉっ! デカくなった!
足首に······入らないですよね、ブーツ脱いで装着!
シュッって! ほうほう今度は縮むとサイズがピッタリだ。
「排出!」
何も無いところから、手のひらの上に剣が瞬間的に現れた! おぉっ! スゲー!
「うむ。問題ないようだな、よしご苦労! 元に戻し装備を整えよ!」
「はっ!」
「では、問題ないようなので足首で宜しいですよ、しかし、先ほどの話は本当のようですな、気の使いようは素晴らしい。ふざけておるように見えて話はきちんと理解しておる、48歳と聞こえたのだが、私と同年、これから宜しくお願い致します」
はいはい、奴隷にするしね。今だけかな優しくするのは馬鹿なら、賢いなら暫くは優しくして、修練がある程度まで進むまではこのまま、その方が自主的にもやる気が出るから、スキルの成長も良いよな。
さて、どっちに転ぶか······。
「こちらこそ宜しくお願い致します。よいしょっと! おおっ! ピッタリですね! 歩くのも······はい! 邪魔にならないようです!」
「では、隣の部屋ヘ移動しましょう」
おいおい白髭爺さん、一瞬悪い顔したよ。その後はニコニコ。······なるほど、賢い方だって事か。
しばらくは情報を集め、良いタイミングで脱走って行きますか!