ガヤガヤ······やかましいな。······ん? 何で寝てんの?
硬い床に横になり、寝ているようだ······。
ん? へっ!?
ガバリと上半身を起こすと石造りっぽい床と、十数名の子供達が、後は真っ白な空間が広がっている。
「ユタさん! 起きた! よかったよ~」
少し離れたところで座り込んでる紗々と話していた聖が俺に気付き駆け寄り、ダイブて!
「グハッ!」
目の前が真っ暗になり、僅かながらも『ふにょ』っとクッション······まぁ何がとは言わないが、俺は聖の
「何する! 鼻血出るやろが!」
鼻をさすりながら、まだコアラのように引っ付いて離れない聖の頭を空いてる手で撫でる。
「さっき紗々ちゃんが気が付いて皆が起きたのに、ユタさんだけ中々起きないから」
聖は涙を浮かべ、うるうるしている。
「はぁ、すまんな、······ってかここなに? 何やらおかしな所みたいやけど?」
『ふむ、最後の者は落ち着いておるな』
後ろから、声がかかり振り向くと、ふよふよと浮かぶ光の玉が······へ?
「どわっ! 何やこれ!? 何で光が浮いてる!」
『おお、そうじゃの、では姿を合わせるか』
パアッと光りが人の形をとっていく、光が収束し小さな男の子が目の前に現れた。あれ?
『これで良いかの? お主の若かりし姿を借り受けたが、どうじゃ?』
············はっ?
何? 何が何だか······頭の整理が出来ない。
『ふむ、混乱しているようじゃな』
どこかで見たことのある男の子が、俺のおでこに触れる。
『ついでに皆に説明した記憶も追記しておくかの』
パァと光が指先からおでこに近付き、そしてそのまま頭の中に。
なるほど、異世界召喚で······アモルファス王国の勇者召喚で喚ばれる途中、だそうだ。
この場所は神様から『職業』と『スキル』、技能ってことか、まあその『スキル』とやらを貰える場所なんやね。
既に他の皆は勇者や回復術士、魔道士などRPGのような『職業』と、限界突破、回復魔法、属性魔法などの『スキル』をもらったらしい。
『どうじゃ? 落ち着き理解出来たじゃろ? 特別に精神耐性を付けたからの』
「はい。神様。ところで俺はどうすれば良いのですか? 皆のように職業やスキルを頂き異世界へ行くのでしょうか?」
『そうじゃの。お主は少々年齢が皆より進んでおるの』
すると、俺と近くにいる聖と紗々。その2人以外で、少し離れた所にいた子達も、俺達の近くによってきた。そして神様に。
「神様、コイツおっさんだから、役に立たないだろうし、適当で良いんじゃ?」
おいコラ! 確かにおっさんやがムカつくガキだな!
「そうだよなぁ。購買の用務員だし、俺らに付いて来れないよ絶対」
そうだそうだと7人いる男の子の内の3人がうるさい。残りの4人は大人しいけど。
女の子達はその後ろに居て、心配そうにこちらを見ている。
俺の近くに来た3人の内1人がこそこそと神様に耳打ち。
『ふむ、そうじゃの確かに肉体的に厳しかろうの、では行くぞ』
「はっ?」
訳もわからない内に神様と2人? 1人と1柱? 以外見えなくなり、床に座っていたはずが宙に浮いている。
目の前で両手を俺の頭に置く神様も、同じく浮いている。
『お主も難儀よの、若返りは言われるまでもなくするのだが、職業とスキルは下級にしてくれとは、嫌われたもんじゃの』
はっ? あのガキそんなこと言ってたのか!
『じゃが、職業やスキルはその者に既に適性があるからのぉ、ほっほっほっ』
まあ、神様がそう言うなら、そうなんやろけど。
『告げに来た者はどうにか上級職、じゃが成長率は皆無じゃ、ほっほっほっ』
『しかし、お主はすごいぞ、低級職から上級職はもちろん特級、神級までの適性があるぞ、どうする? 適性があるからと言ってすぐには使えんが、何事にも修練が必要じゃ。そうじゃの全て入れとくかの。後はスキルじゃが、ふむ、こちらも入れとくとしよう』
「あの、何だかエラい事になりそうなんですが大丈夫?」
『大丈夫じゃな』
と
へっ?
『お主には借りがあるからの、猫を助けてくれたこと憶えているか? あやつはこれから行ってもらう世界の管理神じゃから、お主には最大限の祝福を頼まれておる』
へっ?
「学校に迷い込んだ猫?」
『そうじゃ。あやつは世界を渡った時、盛大に失敗しおって、あのままならあやつの世界が崩壊する所じゃ、ほっほっほっ。猫缶美味かったと言っておったぞ』
確かに、ひょろひょろガリガリになってたから、カリカリのキャットフードじゃなくて、缶詰にしたんだよな。
「すぐに居なくなったから心配してたんやけど、無事帰れたんか、なら良かった」
『ふむ。善き哉善き哉、よし、全て付与したぞ、後は、戻る前に当たり障りのない、見せる用のステータスにしておくかのぉ、ほっほっほっ』
はい?
『まずは、鍛冶士を職業に、スキルは、鑑定、身体強化、アイテムボックス、言語理解かの、ほっほっほっ』
『本当は、鍛冶士は神鍛冶士。スキルの方も鑑定は神眼、身体強化は神体強化、アイテムボックスは無限収納、言語理解は全言語理解じゃがの。ほっほっほっ』
そして俺を見て
『しかも、LV MAXじゃ!』
おいっ!
「や、やり過ぎちゃう?」
『構わん。あやつはの、お主にはのんびりまったり過ごして欲しいと言っておったのじゃ、簡単には死なない様にとしたまでじゃ』
「えっ? 勇者の手伝いとかしないと駄目なのですよね? しなくて良いの?」
『適当で良いと言っておったぞ。今回の召喚も魔物対策じゃったかな? 近隣の諸国との戦争の為? とか抜かしておるからのぉ。お主はすぐではないがその国を離れる事を進めていたぞ、女の子達は連れていって保護するのが良かろう。言ってはおらぬが職業、スキルを少し
はぁ、何か分からない内におかしな事に、ってか!
「もしかして、チラッと聞いたことある異世界とかなら奴隷とかにされたりしない?」
『されるぞい』
おいっ!
「そ、それは大丈夫なの?」
『大丈夫じゃ、お主はな。何時でも解けるのじゃ、他の奴もお主なら解ける』
ほっ、なら良い! 良いのか? まぁ何とかして逃げるって事だな。
『では、戻るぞ肉体は召喚時に若返るからの、後は奴隷の事は内緒に、あやつの頼みなのでよろしくな』
と言ったとたんに足元に床の感触が戻った。
皆が此方に注目し集まってくる。
『これで準備は終いじゃ、何か今のうちに聞きたいことはあるかの?』
「おっさんの職業は何になった?」
糞ガキ! コイツはそのうちキャーン言わしたる!
『ん? 気になるかの。向こうにつけばすぐ鑑定してくれるぞい。』
「あぁ、他の皆は話し合いでわかったから、おっさんのも聞きたいじゃん」
話し合いなら俺に聞け! こんな奴絶対逃げる時は置いていく!
他の皆は、······女子だけだが、すまなさそうに此方を見て小さく頭を下げている。
『まぁ、良いのかのぉ、支援職の鍛冶士を望んだのでな、その願いのままにしたぞい。お主達男子は戦闘職のみだ、女子もほぼ戦闘職だと支援職が少なく後々苦労するからの、良い選択じゃった、ほっほっほっ。』
なるほど、男子は戦闘職ばかり選んだって事か、まぁ召喚した国はその方が嬉しいだろうが、奴隷だぞ、やってられないな。
「おっさん、分かってるじゃん! 俺らの邪魔だけはすんなよ!」
はいはい、奴隷になって頑張ってくださいよっと。
『では、良いのかの。皆には帰ることの出来ない旅にはなるが、頑張るのじゃぞ』
床が輝き出す。
「えっ? 帰れないって?」
「嘘だ! ちょっと待て!」
「嫌ぁー」
「ふざけんなっ!」
へ? 帰れないってなに?
そして目が開けていられないほど光が強くなった。
パン!
『勇大が選んだ者以外はな、ほっほっほっ。』