「――こうして、シェイルは旅立つことになったの。念願の冒険者としてね」
暗闇の中、女性の声が響く。
凜とした澄んだ声。
それは、女性の強さと優しさを現しているかのようだ。
「うん……。冒険者となったシェイルは、この後、様々な出来事に遭遇するわ」
女性は、真っ直ぐこちらを見つめてきた。
「広い世界に飛び出したシェイルは、止まることを知らないから」
そう言って、クスッと笑う。
「――それでね、この後シェイルは……」
『ディアドラーッ!!』
女性の声を遮って、不意に響き渡る声。
「……もうっ」
女性――ディアドラは、唇を尖らせ天を見上げた。
そして、しばしの後、再びこちらに向き直る。
「それでね……」
ディアドラは、気を取り直して話し出そうとするが……。
『ディアドラってば――っ!!』
どうやら、そうはさせてくれないらしい。
切迫感のある声が、暗闇の中に響き渡った。
「まったく、あの子は……」
ディアドラは、小さなため息をつくと苦笑いを浮かべた。
「……ごめんなさい、ちょっと行ってくるわ。続きは、帰ってきてから話すわね」
その体が光に包まれる。
「それじゃ、またね……」
そう言って手を振り、そして彼女は消えていった。
シェイルとディアドラ、二人の声が、かすかに聞こえてくる……。
『何よーもう。これから、もっと面白くなるのに……』
『ちょ……ディアドラ! 呼んだらすぐ出て来てよねっ!』
『ん~?』
『は、早く、交代してってばっ!!』
『あなた……最近、私使いが荒くない?』
赤と金色のシェイル 第一部 完