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第32話『エピローグ』

「――こうして、シェイルは旅立つことになったの。念願の冒険者としてね」


 暗闇の中、女性の声が響く。

 凜とした澄んだ声。

 それは、女性の強さと優しさを現しているかのようだ。


「うん……。冒険者となったシェイルは、この後、様々な出来事に遭遇するわ」


 女性は、真っ直ぐこちらを見つめてきた。


「広い世界に飛び出したシェイルは、止まることを知らないから」


 そう言って、クスッと笑う。


「――それでね、この後シェイルは……」

『ディアドラーッ!!』


 女性の声を遮って、不意に響き渡る声。


「……もうっ」


 女性――ディアドラは、唇を尖らせ天を見上げた。

 そして、しばしの後、再びこちらに向き直る。


「それでね……」


 ディアドラは、気を取り直して話し出そうとするが……。


『ディアドラってば――っ!!』


 どうやら、そうはさせてくれないらしい。

 切迫感のある声が、暗闇の中に響き渡った。


「まったく、あの子は……」


 ディアドラは、小さなため息をつくと苦笑いを浮かべた。


「……ごめんなさい、ちょっと行ってくるわ。続きは、帰ってきてから話すわね」


 その体が光に包まれる。


「それじゃ、またね……」


 そう言って手を振り、そして彼女は消えていった。




 シェイルとディアドラ、二人の声が、かすかに聞こえてくる……。


『何よーもう。これから、もっと面白くなるのに……』

『ちょ……ディアドラ! 呼んだらすぐ出て来てよねっ!』

『ん~?』

『は、早く、交代してってばっ!!』

『あなた……最近、私使いが荒くない?』



 赤と金色のシェイル 第一部 完

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