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第195話、超長距離攻撃


 俺とダイ様、ゴムとその分裂体、そしてカイジン師匠を乗せたダークバードは、廃墟と化しているセッテの町へと飛んだ。


 レヴィアタンの一撃を受けた町の東南側外壁が、見事に抉られ破壊されていた。……凄ぇ威力だ。こりゃ他のメンバーを連れて来なくて正解だ。


 いくらSGアーマーが、サタンアーマー素材とはいえ、全身を覆っているわけじゃないから、肌の露出面はどうしてもカバーできない。


 それは俺も同じで、そこのところはゴムに守ってもらうしかない。


 壊れていない外壁より内側に降りる。外壁が一発で吹き飛んでいるところから見て、外壁の上からの攻撃は諦めたほうがよさそうだった。


「本当は高いところがいいんだがなぁ」


 ダイ様が、1羽のダークバードを飛ばした。


「上から観測してやる。46シーが外れても、修正を手伝ってやれるだろう」

「助かる! まあ、一発で当てればいいんだ」


 俺のそばにゴムが跳ね、その形を半球状に変えた。レヴィアタンの攻撃がきた時、俺を覆う壁を形成するためだ。


「では師匠。後ろは任せます!」

『うむ。アンデッドどもはわしと、ゴムの分裂体で防いでみせよう』


 ここにカイジン師匠を連れてきた理由。セッテの町にいまだ徘徊するゾンビやスケルトンからの襲撃に備えるためだ。


 レヴィアタンに集中している時に、背後から襲われてはたまらない。ここは敵地なんだから。


 カイジン師匠のベスティアボディはサタンアーマー素材。仮に壊れても魔力で修理できる優れもの。生身の仲間よりも生存確率は高い。ベスティアに比べて、師匠は経験豊富だから、一対多数でもうまく立ち回れる。


『レヴィアタンは、頼むぞ、ヴィゴ!』

「はい、師匠!」


 俺は魔剣と、さらに超装甲盾を保持。敵に攻撃された場合の保険で、神聖剣ではなく大盾を選択する。


「拗ねないでくれよ、オラクル……」

『フン、拗ねてなどおらぬ』


 呟いたのがいけなかったのか、鞘に収まっているオラクルセイバーから恨みがましい声がした。


 さて、やりますかね。瓦礫を踏み越えて、近くの半壊の塀の陰に膝をつく。そこからコーシャ湖が遠くに見える。目をこらせば、レヴィアタンの頭とその長い首が見える。


「……ちっせぇ」


 いくら剣先を向ければ真っ直ぐ狙えるからって、こんなに小さいんじゃムズい……。これ、わずか数ミリのズレでも、滅茶苦茶ズレるやつだ。


 慎重に狙いを定めて……行けっ、46シー!


 魔剣ダーク・インフェルノから火球が放たれた。それは遠方のコーシャ湖へと飛んでいき、そして爆発、大きな炎を撒き散らした。もくもくと白い煙だか水柱が上がった。


「……当たった?」


 何か手前くさかったんだけど。


『残念、湖に着弾だ。目標より手前、およそ1000メートル』

「ぜんぜん、遠い!」


 ダイ様の闇鳥がどの辺りに当たったか教えてくれるのはいいけど、これは思ってたより難しそう。


「レヴィアタンが反撃してくる前に、もう一発行けるか?」

『30秒待て』


 そうだった。46シーには次の発射までのチャージ時間が掛かるのだ。その間に剣先を修正。と言っても、直感頼りだけどな。正確に測る術はなく、ぜんぶ自分の目と勘をあてにするしかない。


 レヴィアタンが光ったら攻撃だろうから、即引っ込む。……光ってくれるなよ。


『30秒!』

「行けっ!」


 46シー、2発目発射! ――爆発。


『手前、目標まで350メートル』


 はずれだ。もう完全に奇襲効果は望めない。いくら何でも、レヴィアタンとそれを操る騎士は、俺が町から攻撃していることに気づいたはずだ。


 反撃が、来る……!



  ・  ・  ・



 魔騎士フームーは、レヴィアタン・ミウィニュアの頭の上で、それを目撃した。


 コーシャ湖の端で突然の爆発。最初は何事かと思い、しばし様子を見た。およそ30秒後、またも爆発が起きて、しかもそれがこちらに迫っていた。


「エクスプロージョン……! いや、それにしても範囲が広すぎる!」


 倒れるほどではないが、湖がなぎ、衝撃と熱が肌に伝わった。周囲には魔術師らしい姿はない。


「しかも、セッテの町の方から……?」


 馬鹿な、とフームーは思った。


 ここから町までどれだけ離れているというのか。ミウィニュアの熱弾ならば充分届くが、通常の魔法では遠すぎて届かないはずだ。


 だが現実に、2回も攻撃らしい爆発が起きている。もし3回目があれば、こちらも危ないのではないか?


「おい、マトス! 聞こえるか?」


 フームーは念話を飛ばす。


「こちらで正体不明の爆発が起きた! そちらには何か変化はないか?」

『……そちらのことは知らんが、町に侵入者がいるようだ』


 マトスからの魔力念話が返ってくる。何が起きたか把握する情報はない。そう思った時、火球が見えた。やはりセッテの町から、こちらへ――


「むっ――!」


 フームーは魔剣を握り、身構えた。爆発の衝撃に体が押し出されそうになるのを堪える。マントが重い。


 ミウィニュアの頭が動き、さらに踏ん張ることになる。レヴィアタンの胴体に爆発が当たり、真ん中の大突起付近が大いに焼かれた。震動に耐える、耐える、耐える!


「ミウィニュアを揺さぶるこの威力! 只者ではない!」


 脳裏に過るのは、ウルラート王国の魔剣使いヴィゴの名前。数々の邪甲獣を葬ってきた強者と考え、浮かんだのはそれだった。


「ダーク・インフェルノか? これほどの遠距離にも対応しているとは……。さすが伝説の魔剣ということか!」


 反撃せねば――そこでフームーは、ハッとなる。思い出されるのは、少し前にマトスと交わした念話の内容。


 ミウィニュアの誤射により、セッテの町の拠点の結界と障壁が破壊されてしまったと。いま、敵が潜んでいるだろう町にミウィニュアの攻撃を放り込めば、最悪マトスを巻き込んでしまう可能性があった。


「おのれ、それを見越しての町からの攻撃か!」


 フームーはミウィニュアを動かす。先の攻撃で態勢が崩れていた。すると、またも火球が飛来して、炎の花を広げた。針路が変わったことで外れたが、意外に近かった!

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