セカンドホームに入ったすぐに、外へ通じる水路とちょっとしたプールがある。相変わらず、ここは変な造りだ。海なのか湖なのか、とにかくそれと隣接しているからな。……って!?
水しぶきが上がり、金髪褐色肌の女――シィラが水面に現れた。
「よう、お帰り、ヴィゴ」
「お、おう……」
一応さらしのような下着をつけているが、シィラの肌色の面積が多く、そのたっぷりあるお胸さまも窮屈そうである。水滴が肌について、艶めかしい。
「お前、何をやってるんだ?」
「何って、見てわかるだろう? 水浴びだよ」
あー、そう……そうだよな、うん。確かにそうだ。それ以外の何だというのだ。ここは水浴びに充分な広さがある。
「ヴィゴも休みか? なら、一緒にどうだ。気持ちいいぞ」
シィラが誘った。うん、俺……お前のその、最低限水着しかないパワフルボディを邪な目で見ないようにするので精一杯なんだけど。
本人にその気はない……とは言い切れないが、エキゾチックでセクシーで――俺の下腹部ごめんなさい。
反則だよ、その艶めかしい肌とお胸さまは。吸引力のある胸をあまり見ないように、シィラのお顔を見れば、あれ? 何だろう、いつもより顔が少女っぽく見える。
普段、歳の割にお姉さんな雰囲気があるが、よくよく見ると年相応の柔らかな顔だ。
「な、何だ? そんなジロジロ顔を見られると……」
つつー、とシィラが顔を逸らした。
「それで、入るのか、入らないのか?」
「あ、それね。どうしようかな……一度装備を外してくる」
「そっか。うん、そうだな……」
シィラはそこで黙り込む。何か気まずい沈黙。しかし口を開くのは彼女の方が早かった。
「もし、まだ私がここにいてお前が入りにきたら、水中マッサージをしてやろう」
「な、何、水中マッサージって?」
「水に浸かった体に触れてほぐすんだよ。気持ちいいぞ」
色んなところを触れて――というシィラ。ねえ、誘ってる、それ?
「いいのか、それ……?」
「ん? ヴィゴには積もる礼もあるからな。たまにはあたしに恩返しさせてくれ」
恩返し、か。そこまでお礼をされるようなことあったっけ、と思いつつ、ふだん長身の彼女から上目遣いの視線を受けることがないので、こう落ち着かないわけで――
「それじゃ、お願いしようかな……?」
「よしきた。じゃあ、早く装備を置いてこい! たっぷりほぐしてやるから、さ」
いつものカラッとした調子でシィラは笑顔になった。可愛い。大丈夫、性的なものは何もない……はず。
・ ・ ・
ホーム内は、家具が持ち込まれていて、それぞれの部屋まで用意されていた。俺の部屋まであるんだ。こっちをメインホームにするのも悪くないかな。
キッチンでは、ファウナが調理をしていた。いつも台所の主と化している印象のルカは、今は見張り番で外である。
「……守護者様、お疲れ様です。お食事にされますか? お風呂にされますか?」
美貌のエルフ巫女さんは、しかし表情に乏しい。だが最近はこれでも微妙に柔らかくなったと思えたりする。
「――と申し上げたいところですが、ただいまお風呂は使用中です」
聞けば、ヴィオ・マルテディが長湯しているらしい。ボーイッシュに見えて、お風呂好きなのかも知れない。あれでも貴族令嬢だし。
「プールに誘われているから、そっちへ行くよ」
ということで、俺の部屋へ。
ゆったり広々なくつろぎスペース。窓から差し込む柔らかな木漏れ日。王都と違って、周りに他の建物がないから静かだ。
装備を外して、濡れても大丈夫なアンダーパンツに履き替えて、入り口脇のプールへ。シィラはまだプールに浸かっていた。
「来たか、ヴィゴ。さあ、入れ」
お邪魔しまーす。冷たっ……。まあ、普通の水だもんな。風呂じゃないんだから。
「それじゃあ、始めるぞ――」
シィラの手が伸びて、俺の腕から肩に……。異性に触られると、肌がぞわぞわする。
「お手柔らかに」
「安心しろ。力を抜け」
そう言いながら、シィラとの距離が縮まる。その意外に少女っぽい顔も、豊かなお胸様も。彼女の手が俺の脇腹に触れてさらに腰へと動き、さわさわとほぐしてくる。何か頭の中が沸騰するような、よくわかんない感じ。何だこれ、何だこれ!
これが極楽……!
シィラは俺の後ろに周り、視界から消えるが俺へのタッチは続き、腰や背中に感触が。
「……おぉっ!」
何か今かなりの面積が接触しているような。彼女の手が俺の太ももに……。じゃあ背中のこの感触は――
頭の中が真っ白になった。ほぐしての際のツボを押す刺激が、適度に心地よい。
「あれ……? シィラ?」
抱きしめられてない? 後ろから。シィラさーん?
「少し、疲れた……」
「ええ?」
「……ヴィゴ、もう少し、このまま」
お、おう……。んー、気のせいかな。俺、彼女をおんぶしてない? 彼女の足、俺をホールドしているような……。体が水の中だから重さを感じさせないのはありがたいが。
背中にいろいろシィラを感じて、俺は血液が沸騰しそうなほど熱さを感じた。
・ ・ ・
「うわ、君たち、何をやってるんだ!?」
上から、ヴィオの声が降りかかってきた。1階入り口から、居住区画に行くには十段ほどの階段を上る必要があるので、自然とプールは上から見下ろせる格好にある。
「抱きついているのか!? き、君たちは!」
すっと俺の背中からシィラは離れた。さすがに人に見られるには恥ずかしかったか。
「た、ただのマッサージだ。な、なあ、ヴィゴ?」
「あ、ああ、そうだよ」
何もいかがわしいことはしてないぜ? ちゃんと下着はつけている。
ヴィオは疑うような目で、俺とシィラを見下ろしている。
「本当に? 裸じゃない?」
「ちゃんと付けてる!」
シィラが胸を見せるように水の上に出した。一応つけてはいる。彼女のお胸のボリュームからすると申し訳程度だけど。