俺たちリベルタは、セッテの町のアンデッドを攻撃する。
大通りを主戦場に選び、おびき出したが、さすがに町には多数のスケルトン兵士やゾンビなどがいた。
「タルナード!」
シィラの魔法槍が風の渦を巻いて、スケルトンやゾンビを吹き飛ばす。
ゴムの操る邪甲ゴーレムがその巨大腕を振り回し骸骨兵士を粉みじんに砕けば、路地から出てくるゾンビなどに、マルモがガガンを連射して封鎖する。
ベスティアがその豪腕ブレードでスケルトンナイトを、鎧ごと真っ二つにし、聖剣を手にヴィオは素早くソンビに肉薄し刺突を食らわせる。
「僕の聖剣に触れたら、最期だよ……!」
ゾンビが一瞬にして塵となって消える。
「不浄な者よ、大地に還れ!」
聖剣スカーレットハートが輝く。光を浴びてゾンビが砂と化した。
へぇ、やるじゃん。さすが聖剣だ。俺は、ヴィオの働きぶりに感心する。聖剣はアンデッドと相性がいい!
「ライトニングスピナー!!」
俺の神聖剣から、電撃の槍が飛ぶ。それは数体のアンデッドを貫通する。
『えぇいいいいいっ!』
カイジン師匠が駆け抜ける。
『疾風!』
目にも留まらぬ早業。スケルトン兵士が次々に分断され、さらに邪悪な魂が抜けたのかただの骨に成り果てる。
『我が魔断刀は、魔を断つ刀なり!』
さすがだ、師匠。俺は右手の魔剣から放つエクスプロージョンで敵を薙ぎ払いつつ、仲間たちの状況を素早く確認する。
視界の中にメイドさんがよぎった。セラータだ。アラクネ足のせいで目につく。と、その下半身の蜘蛛ボディが、もうひとりのメイドさん――イラを乗せていた。……ええっ?
民家の屋根へと飛び上がったセラータは、そこでイラを下ろす。イラは建物の上から長銃による狙撃を開始。味方を射線に巻き込みにくい高所でボジションを得た。
セラータは蜘蛛足を動かして、建物から建物へジャンプ。蜘蛛のジャンプ力は凄まじく、そして素早い。
手にしているのは炎の槍――ペルドル・ホルバの錬金屋敷から回収した魔法武器だ。
ぴょんぴょんと移動するセラータは、敵の側面から、または上方から襲いかかり、槍でひと突き。炎の穂先がたちまち対象を燃焼させると、周りの敵に攻撃されるより早く跳躍して離脱した。
アラクネの身体能力を活かした一撃離脱戦法。よくもまあ、あの体になって短い間に編み出したもんだ。
ディーとネムは、闇ドワーフ遺跡であるアンジャ神殿で手に入れた浄化の杖を使って、ファウナに近づいてくるアンデッドを除去している。ファウナは、亡霊戦士を多数使役しているぶん、他の行動がほとんど取れない。カバーは大事だ。
ニニヤは炎の魔法で、複数の敵を焼き払っている。さすが攻撃魔法を得意とする魔術師系アタッカー。師匠であるアウラの教えがいいんだろうな。まだこれで15歳、新人冒険者とは思えないほどの成長ぶりだ。
とはいえ、少し飛ばし過ぎな気がしないでもない。あれで魔力が持つのか?
「ダイ様、上から見た感じどうだ? 全体の様子は?」
『まだまだ数がおるよ。戦闘が激しくなっているせいか、大通り方面に向かっているアンデッドどもが増えているがな!』
まだまだいるってことか。いかんな。仲間たちが強いから、引き際を間違えそうになる。へばり始めてからじゃ、遅いんだよな。
「リーリエ、合図を鳴らせ! 撤収!」
そばにいた小妖精に声をかければ、彼女はポンと手を叩くと、角笛を召喚してそれを思い切り吹いた。
フェアリーの大きさからはとても想像できない音が辺り一面に響いた。仲間たちの耳には間違いなく轟いただろう音量だ。
……妖精ってのはイタズラ好きだ。これを耳元で鳴らして目覚ましをやられた身としてはね。利用しない手はないわけ。
俺は声を張り上げた。
「後退だ! 町の外へ後退!」
それを聞いて、リベルタメンバーたちは大通りを下がって、町の外へと引く。ガガンを撃ちまくっていたマルモがシィラと後退。町を飛び回っていたセラータが、ゴムの邪甲ゴーレムに飛び乗ると、ゴーレムが反転した。セラータは次いで、イラが射撃している民家の建物に飛び移り、メイド仲間を背に乗せて退避を始めた。
「ルカ!」
「下がります!」
ネムやディーが引き返すのを確認し、ファウナに声をかけて、彼女も下がる。……さあさ、来いよ、来い来い!
仲間たちが俺の後ろにいるのを確かめ、魔剣を構える。俺たちが逃げるとみたか、こちらへゾロゾロと駆けてくるゾンビやスケルトン。まとめて吹き飛ばしてやるよ……!
「46シー・トリプル!」
爆・発! 膨れ上がった火球が、アンデッドを飲み込み、塵に変えた。三つの巨大爆発は、通りに面した石壁の建物ごと破壊した。
大通りに集まっていた敵をかなりやっつけたようだ。
まだ奥に……と、今の爆発が引き金になったか、奥の方でわらわらとアンデッド出てきて、集団になった。
「もう一発、行けるかな……?」
46シーの射程内に百以上が入るまでに、余裕でチャージ完了。もう一撃46シーをぶちかまして、動く死体を焼却した後、俺も町の外へと走った。
「ダイ様、町の様子、監視頼むぞ!」
『わかっておる。任せろ!』
ダイ様の使い魔であるダークバードが一羽、セッテの町の上空を周回する。
とりあえず、1回目の襲撃は、ここまでだ。どれくらいやれたのか、戦況分析は報告待ちとして、引き上げよう。
・ ・ ・
町から離れて、仲間たちと合流。
「誰かやられた奴はいるか?」
「いない」
アウラがいつもの魔術師帽子を被りながら答えると、ルカが頷いた。
「怪我人なしです!」
「それは凄い。あれだけの敵を相手にして無傷とか」
「装備のおかげですよ」
ルカはサタンアーマー素材防具へと視線を落とした。
「装甲に当たっている限りは、町のアンデッドの攻撃は効きません!」
「大したものさ」
シィラが右腕を持ち上げて小手を見せつける。
「スケルトンの剣を弾いたんだ。なければ怪我したかもな」
さすがサタンアーマー素材。雑兵の攻撃も無傷ってか。きちんと防具を揃えるってことはこういうことなんだよな。
滑り出しとしては、いいんじゃないかなこれは。