「ミタリア様すぐに着きますので、この中で大人しくしていてください」
と扉を開けられたのは、馬車というか檻だった。
「この檻はですね」と私を捕まえ、少々浮かれ気味のデンス所長は隣で楽しげに話す。この檻は特別な金属で出来ていて、いくら鼻と耳が効く国王陛下、リチャード殿下にも探し出せないと。
中は空気穴が数箇所空いているだけで、窓はなく、中には丸く光る玉が一つ二つプカプカ浮いていた。
「乗り心地は良くありませんが、すぐに着きますからお許しください」
デンス所長に押し込まれた檻の中は、私だけだと思っていたが。中に小さい虎の子、犬の子、私と同じ猫の子が檻の隅に固まり、カタカタ震えて泣いていた。
(この子達も私と同じで、獣化しているわ)
「……ウウッ」
「怖いよ」
「お家に帰して」
「無理な話ですね。それにしてもピーピー泣いてうるさいですね、静かに乗っていなさい!」
「「ひっ!!」」
まさか! この子達……扉を閉めようとするデンスに聞いた。
「あなた、こんな小さい子達をどうするおつもりですか?」
「おやおや、ミタリア様は気になりますか? ふふ、なにも心配はいりません。この子達はローランド国ではない隣国の、それも一般庶民から買ってきた子達です。みんな要らない子達なので私の実験に使います」
「実験?」
「えぇ、とても良い実験体です」
(この子達が実験体? イカれているわ……同じ獣人族なのになんて恐ろしい)
「さぁお喋りはここまでにして、楽しい人間の国へ向かいましょう。おい、馬車を出せ!」
「かしこまりました」
そう御者伝えると、デンス所長は扉を閉めて鍵を閉めた。
すぐ動き出した檻の中で、子供達の鳴き声が聞こえた……私だって怖い、だからって泣かない。そうだ私の『オフトン召喚』でこの子達を癒してあげよう。
そう決まれば、私は手を握り。
「みんな待っていてね。今、フカフカなオフトンを召喚するから!」
子供達に元気な声をかけて。
「『オフトン召喚!!』」
を唱えた。
檻の中にぽふんと、フカフカなオフトンが現れる。
突然、現れたオフトンに驚く子供達。
「うわぁ、布団だ」
「フカフカ」
「あったかい!」
「みんな、オフトンの上に乗って」
みんなは素直に、オフトンの上に乗ってくれた。
だけと、この中に隅っこで背を向けて座る子供が一人いた。私はその子にも話しかける。
「あなたも、みんなと一緒にオフトンに乗らない?」
「ワレは結構、獣人族の施しなど受けぬ」
(な、なに? この子?)
よく見れば背中に羽を生やして、鱗状の尻尾が見えた。
(竜人族の子……子ドラゴンだわ)
「君もおいでよ。みんなオフトンを楽しんでるよ」
「ふん、ワレを子供扱いするな!」
でも、この竜人族の子は羽と体に幾つもの怪我を負い……手当もされていなくて血が流れていた。
「あなた、ひどい怪我をしているわ……早くオフトンの上に乗って!」
「あ? オフトンの上なんかに乗ってなんになる!」
「なるわ、少しずつだけど怪我が治るの」
「何? お前は怪我を治せるのか?」
コクンと頷いた。
「少しずつだけど怪我を癒せるわ……だからお願い、オフトンの上に乗って!」
「わかった」と、子ドラゴンもオフトンの上に乗ってくれた。