舞踏会まであと五日となった。本日は王城てドレスをリチャード殿下と合わせている。殿下が私のために選んでくれた薄いブルーのドレスで、リチャード殿下が当日着る、ジュストコールも私と同じ色だった。
「嬉しい、素敵なドレスをありがとございます、リチャード様」
「似合っているよ、ミタリア嬢」
リチャード殿下が合図して、メイドと側近リル、近衛騎士を下がらせた。二人きりになる部屋で、いきなり頬に擦り寄られた。
――また、だわ。
舞踏会が近付くにつれて、殿下のスキンシップが激しくなってきている。そして、リチャード殿下は何かに焦っているようにも見え、早朝の騎士団との稽古も激しいのか、傷を付けて帰ってくる日もあった。
(殿下に聞いても、平気だって言って笑うだけ……心配だわ)
リチャード様……をはやく『オフトゥンの力』で癒したい。
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ドレス合わせ、ダンスレッスンと5日が経ち、舞踏会の日が来た。リチャード殿下の妹、シャロン様のお披露目会もあってか、舞踏会に訪れる貴族が多く王城は厳重な警備体制。
「ミタリア嬢、今日は俺から離れないでくれ」
痛いくらいに手を引かれ、殿下の胸に抱きしめられた。
前から変だ変だと思っていたけど、どうして? と聞けずにいた。聞いても多分、話してくれないだろうな。
(そうだ、オフトンを召喚してリチャード殿下を癒そう)
「リチャード様、舞踏会が始まるまで時間があります。私の特殊能力[オフトンを召喚』で、一緒にまったりしませんか? 誕生日を迎えたので特殊能力が使えます」
舞踏会の開催まで三十分くらいある。
そう聞くとリチャード殿下は頷き私の手を引いて、ご自分の部屋に行かず、殿下は近くの扉を開けた。
部屋の中は窓にカーテン掛かるだけの、空き部屋だった。殿下は部屋に入ると誰も来ないよう鍵をかけた。
「早く、見たい! オフトン召喚を見せてくれ」
「わかりました、オフトンを召喚しますね『ふかふかオフトンよ来い!』」
リチャード殿下が見守るなかそう唱えると、ポフンとふかふかなオフトゥンが目の前に召喚された。昨夜、誕生日が来たと同時に好奇心には勝てず、一応試しに召喚をやってみたのだ。このオフトン召喚は色、柄、大きさ、ふかふかさの度合いが私の思い通りになる。
一度やってみたいのは、分厚いオフトンの召喚だ。
「おお! 本当に真っ白なオフトンが出てきた」
「一番乗りはリチャード様です、オフトンの上に座ってください」
「では、失礼する」
緊張しながら、私の召喚オフトンに座った。
次にオフトンの上に私が座ると、リチャード殿下が癒されるはずだと隣に座った。
「オフトンが緑色に光った……何? 訓練で腕についていた傷が消えた……足のもだ! ミタリア嬢、凄いぞこれは!」
「フフ、あんまり褒めると図に乗ってしまいますよ」
それもそうかと、リチャード殿下は笑った。
表情が少しだけ和らいだ、殿下の緊張がほぐれみたい。
(リチャード殿下に役立つ、特殊能力で良かった)
だけど、時間が過ぎるのは早く、舞踏会の開催時間が来てしまった。リチャード殿下は懐中時計を見て、身だしなみを整え、部屋を出る前に殿下が聞いてきた。
「この、オフトンはどうする?」
「リチャード殿下、こうするんです『オフトン、戻って』」
目の前に召喚したオフトンが一瞬で消えて、元の何もない部屋へと戻る。
「凄いな、そして面白い。今日の舞踏会が終わったら、俺の部屋でオフトンの召喚をお願いするよ」
「はい、リチャード様」
殿下にエスコートされながら、空き部屋を後にした。