昼食のあと、彼の部屋で猫と狼の姿でまったりしていた。転生の話はリチャード殿下にお茶の時間になったら、聞くと言われて緊張している。
「ミタリア嬢、どうした? 俺に甘えにこないのか?」
「え?」
甘えにこないだなんて、同じベッドの上で「いつでも来い」といった体勢のリチャード殿下と、体の中に前足をしまい香箱座りの私。
リチャード殿下は私との間に出来た、隙間が気になったらしい。
「少し、考え事をしていたのです」
ポフンと、空いたスペースに飛び込んだ。
「……ミタリア嬢の考え事は分かっている、お茶の時間に聞くといった話のことだよな」
「そうです、上手く説明できるか考えていました……」
「別に上手く話さなくてもいいんだ。ただ俺が、ミタリア嬢の事を知りたいだけだから」
そのリチャード殿下からの言葉に、話す勇気をもらった。
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メイド達がリチャード殿下の部屋で、テーブルにお茶の準備をしている。私は獣化から戻り、いまはソファで準備が終わるのを、本を読み一人で待っている。
リチャード殿下は先程、側近のリルに「国王陛下がお呼びです」と呼ばれたのでいまいない。国王陛下の執務室で、獣化研究所の結果報告をしているのだろう。
(早く戻ってこないかなぁ……退屈)
何度目かのため息を付いた。
「ミタリア様、お茶の準備が終わりましたので、失礼いたします」
「ありがとう」
メイド達も下がり、ポツンとリチャード殿下の部屋に一人残る。しばらく、お行儀よくソファーに座っていたけど、ゴロリとソファに寝そべった。
(ウチのソファとは違う肌触り……クッションの質まで違う。これは……良い)
メイドがいれたくれた、温かい紅茶を置いてけぼりにして、お布団とは違う心地よさに眠ってしまった。どれくらい経ったのか、こちらにかけてくる足音で目が覚めた。
リチャード殿下が戻ってきた? とソファ起き上がると同時に、部屋の扉が勢いよく開いた。今、扉を乱暴に開けたのはこの部屋の持ち主のリチャード殿下で、彼は少し興奮しているようだった。
「ミタリア嬢、聞いてくれ! 母上が産気づいたといましがた連絡が来た……お子が生まれるぞ!」
興奮して我を忘れているのか、肩を掴んだまま私をガクガク前後に揺した。
「わっ、リチャード様……おめでとうございます。あの、今、目が覚めたばかりですので……すみませんが、あまり揺らさないでください……」
起き抜けに力強く揺らされて、私はハンカチを取り出して、口元を押さえた。
「ごめん、寝起きだったのか……」
肩から手を離し隣に静かに座り、息を整える私の背中を撫でてくれた。
「ごめん……ミタリア嬢、大丈夫か?」
「はい、驚きましたけど大丈夫です。……リチャード様の話だと、王妃様が産気づいたのですね」
「そうだ、父上は獣化して既に母上のところに飛んで向かっていった。お子が生まれたらすぐに連絡をくれるそうだ」
隣で嬉しそうに笑うから。
私まで笑顔になっちゃう。
「リチャード様、お茶をしながら陛下の連絡を待ちましょう」
殿下と私はソファーから、お茶が準備されたテーブルに移った。ティーポットから紅茶を注ぎリチャード殿下の前にだして、自分のも注いだ。
リチャード殿下は、紅茶をひと口飲み。
「ミタリア嬢は弟、妹のどっちだと思う?」
「私ですか? 私は王妃様と赤ちゃんが無事に生まれてくだされば、どちらでもいいと思います」
「そうだよな、母上と赤ちゃんの無事が一番だ!」
そう言いながらも気になるらしくて『弟かな? 妹か?』と、お茶を飲みながらソワソワするリチャード殿下がいた。