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第49話

 昼食のあと、彼の部屋で猫と狼の姿でまったりしていた。転生の話はリチャード殿下にお茶の時間になったら、聞くと言われて緊張している。


「ミタリア嬢、どうした? 俺に甘えにこないのか?」


「え?」


 甘えにこないだなんて、同じベッドの上で「いつでも来い」といった体勢のリチャード殿下と、体の中に前足をしまい香箱座りの私。


 リチャード殿下は私との間に出来た、隙間が気になったらしい。


「少し、考え事をしていたのです」


 ポフンと、空いたスペースに飛び込んだ。


「……ミタリア嬢の考え事は分かっている、お茶の時間に聞くといった話のことだよな」


「そうです、上手く説明できるか考えていました……」


「別に上手く話さなくてもいいんだ。ただ俺が、ミタリア嬢の事を知りたいだけだから」


 そのリチャード殿下からの言葉に、話す勇気をもらった。




 ♱♱♱





 メイド達がリチャード殿下の部屋で、テーブルにお茶の準備をしている。私は獣化から戻り、いまはソファで準備が終わるのを、本を読み一人で待っている。


 リチャード殿下は先程、側近のリルに「国王陛下がお呼びです」と呼ばれたのでいまいない。国王陛下の執務室で、獣化研究所の結果報告をしているのだろう。


(早く戻ってこないかなぁ……退屈)


 何度目かのため息を付いた。


「ミタリア様、お茶の準備が終わりましたので、失礼いたします」


「ありがとう」


 メイド達も下がり、ポツンとリチャード殿下の部屋に一人残る。しばらく、お行儀よくソファーに座っていたけど、ゴロリとソファに寝そべった。


(ウチのソファとは違う肌触り……クッションの質まで違う。これは……良い)


 メイドがいれたくれた、温かい紅茶を置いてけぼりにして、お布団とは違う心地よさに眠ってしまった。どれくらい経ったのか、こちらにかけてくる足音で目が覚めた。


 リチャード殿下が戻ってきた? とソファ起き上がると同時に、部屋の扉が勢いよく開いた。今、扉を乱暴に開けたのはこの部屋の持ち主のリチャード殿下で、彼は少し興奮しているようだった。


「ミタリア嬢、聞いてくれ! 母上が産気づいたといましがた連絡が来た……お子が生まれるぞ!」


 興奮して我を忘れているのか、肩を掴んだまま私をガクガク前後に揺した。


「わっ、リチャード様……おめでとうございます。あの、今、目が覚めたばかりですので……すみませんが、あまり揺らさないでください……」


 起き抜けに力強く揺らされて、私はハンカチを取り出して、口元を押さえた。


「ごめん、寝起きだったのか……」


 肩から手を離し隣に静かに座り、息を整える私の背中を撫でてくれた。


「ごめん……ミタリア嬢、大丈夫か?」


「はい、驚きましたけど大丈夫です。……リチャード様の話だと、王妃様が産気づいたのですね」


「そうだ、父上は獣化して既に母上のところに飛んで向かっていった。お子が生まれたらすぐに連絡をくれるそうだ」


 隣で嬉しそうに笑うから。

 私まで笑顔になっちゃう。


「リチャード様、お茶をしながら陛下の連絡を待ちましょう」


 殿下と私はソファーから、お茶が準備されたテーブルに移った。ティーポットから紅茶を注ぎリチャード殿下の前にだして、自分のも注いだ。


 リチャード殿下は、紅茶をひと口飲み。


「ミタリア嬢は弟、妹のどっちだと思う?」


「私ですか? 私は王妃様と赤ちゃんが無事に生まれてくだされば、どちらでもいいと思います」


「そうだよな、母上と赤ちゃんの無事が一番だ!」


 そう言いながらも気になるらしくて『弟かな? 妹か?』と、お茶を飲みながらソワソワするリチャード殿下がいた。

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