検査結果を渡し終えた、所長の助手さんは私達に頭を下げた。
「リチャード様、ミタリア様お疲れ様でした。デンス所長、私はこれで研究室へ戻ります」
「ああ、忙しいところ手伝いありがとう。リチャード様、ミタリア様、特殊能力検査はこれで終わりです。何かわからないことがありましたら、気軽に獣化研究所までおいでください」
「デンス所長、今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」
私達は所長にお礼を言って、待合室で待っていたリル達と合流して、獣化研究者を後にした。
帰りの馬車の中でボーッと、検査結果の封筒を手に持ち考えていた。ヒロインの手紙に書いてあった通り、私の特殊能力は闇属性だったら、悩んだかもしれないけど……
実際の特殊能力が「おふとん召喚」って、変わっているけど、可愛いっちゃ可愛い特殊能力だ。
まだ誕生日前で、特殊能力は使えないけど。
おふとん召喚とお布団の上、限定だけど「癒し」は結構役立つと思う。
リチャード殿下の訓練帰りとか。
リチャード殿下の執務疲れとか。
リチャード殿下の疲れを取る……って、全部、リチャード殿下の事ばかり。
「なぁ、ミタリア嬢」
「はひっ!」
殿下のことを考えていたから、急に話しかけられて変な声が出ちゃった。
「フフ「はひっ」て驚かせたな……それでミタリア嬢の特殊能力はリリネの手紙の通り、闇属性だったのか?」
「闇属性?」
「さっきから、ずっと結果の入った封筒を見ているから……」
研究所からの帰り、馬車に乗ってから封筒片手に考え事をしていたせいか、リチャード殿下は私を心配そうに見つめていた。だけど、特殊能力はトラブルの原因になってしまうから、人には教えてはならない。
(でも、私の特殊能力って「おふとん召喚」だから、リチャード殿下になら見せてもいいかな?)
でも、この検査結果を殿下に見せたら……リチャード殿下は「なんだ、この特殊能力は!」って笑うだろうかり
――それとも変だと思う?
どうするか悩んでいたら、横から手が伸びてきて私の封筒を取り上げた。
「あっ、リチャード様、見ないで!」
と、止めたのだけど。
時は遅く、殿下は封筒を開けて、私の検査結果の紙を見ていた。
「もう、リチャード様」
「許せ、ミタリア嬢の特殊能力は誰にも口外しない。しかし、これは……フフ」
私の特殊能力を見て瞳を大きくして、口元は笑った。
なんだか嬉しそうなんですけど。
「ミタリア嬢の特殊能力……クックク、クク。まじか……これが、ミタリア嬢の特殊能力なのか、ハハハッ!」
「……もう、見ないでって言ったのに、結果報告書をを返してください」
「わかった返す……ハハッ、可愛い。ミタリア嬢らしい可愛い特殊能力だな……ククッ」
また、笑った。
でも、いま可愛いらしい特殊能力だとも言った。
「リチャード様。私の特殊能力を見たんだから、リチャード様の結果を見せてください!」
殿下の隣に置いてある、封筒を奪おうとしたのだけど、サラリと交わされた。
「ごめん……ミタリア嬢のを見といて悪いけど、俺のは見せないというより、見せられないんだ」
と言い、自分の封筒を背に隠してしまう。
「ずるい、リチャード様は私の特殊能力は見たくせに、いじわる」
私の言葉に、リチャード殿下はまた大笑いした。
「ハハハッ、俺がいじわるか……ククッ、ごめん、ミタリア嬢……俺は王族で第一王子だから、デンス所長たち以外に特殊能力を知られてはダメなんだ。母上も父上の特殊能力は知らない」
「えっ?」
王妃様も国王陛下の特殊能力は知らない。……リチャード殿下の特殊能力はそう易々と、見てはいけないものなんだ。
でも、私は偶然だけど……火属性だと知ってしまった。
「すみません、リチャード様の火属性は誰にも教えません」
「んっ、そうしてくれると嬉しい。ハァ――ミタリアの特殊能力が闇属性ではなくて……よかった。だが、カーエン殿下の事は、これからも気を引き締めて見張はるよ」
いきなり、リチャード殿下に引き寄せられた。
前より、たくましくなった殿下の胸に抱きしめられて、お腹の紋様もポッと熱くなる。
「俺の大事な、ミタリア嬢」
この言葉で、お腹と私の頬は真っ赤に熱くなった。