私とリチャード殿下は王都から離れた、獣化研究所に来ている。研究所でさっき受けた特殊能力検査の結果を、応接間でリチャード殿下と二人待っていた。
「なぁ、ミタリア嬢、所長と助手が水晶玉に移されたミタリア嬢の特殊能力を見て、かなり驚いていたが……闇属性とはそれほど貴重な特殊能力なのだな」
「貴重かもしれませんけど……リチャード様、まだ私の特殊能力が闇属性とは、限らないのではないでしょうか……?」
「どうして、そう思ったんだ?」
「ただ、なんとなくです」
(私の特殊能力が闇なら……もっと、あの二人は深刻にならない? 何故か所長さんは笑みを浮かべていたし、助手の人は笑みを噛み締めてメモっていたもの)
「俺は、ミタリア嬢の特殊能力が闇でも気にしないぞ。ミタリア嬢を守る力を身に付けて強くなるから、安心して俺に守られればよい」
「ありがとうございます、リチャード様」
応接室で二人でたわいもない話をしながら、用意された桃のコンポート、果実水をいただいていた。隣に座るリチャード殿下が『あっ』と、声を上げ、何か思い出したのこ私をジッと見つめた。
(えっ、なに?)
「リチャード様? そんなにじっくり私の顔を見て、なんですか?」
「ん、いや、リリネの手紙に書いてあった事を思い出していた。ミタリア嬢に城に帰ってから聞くか、いま応接間で聞くか考えている」
「リリネ君の手紙? あ、リリネ君のお姉さんの手紙ですね」
「そうだ。あの手紙に『転生者』がどうとか書いてあったろ? 普通なら聞き慣れない言葉で『それはなんだ?』と気にするところ、ミタリア嬢は気にしていなかった。手紙を読んだ後のあの怖がりようは……俺にはわからない事ばかりだったが、ミタリア嬢は内容が分かったからだろう?」
「…………!」
――リチャード殿下、鋭い。
私は転生者で、この乙女ゲームが好き。
異世界に来る前の私にとって、このゲームは癒しだった。
(聞かれても、リチャード殿下に上手く説明できるといいのだけど……)
しばらく殿下はどちらにするか悩み。
「決めた、城に戻って俺の部屋でじっくり聞く事にした。ミタリア嬢、今日は城の客間に泊まっていけ」
「え、泊まるのですか?」
驚く私に「心配するな、両親には早馬を送る」と殿下は言ってくれた。学園は今日から三連休だからいいけど……
「ミタリア嬢。俺達はしっかり、話をしよう」
「わかりました……でも、リチャード様の執務は忙しくないんですか?」
「執務? それは大丈夫だ。学園に入ったから学業に専念しろと父上に言われてな、それなりにこなせる量になった……既に休み中の執務は昨日のうちに、リルと済ませてある」
と言った。
♱♱♱
応接間の扉が開き、デンス所長と助手が戻って来た。
所長が手に持つ封筒に、私たちの特殊能力検査の結果が書いてあるのだろう。
「リチャード様、ミタリア様、特殊能力検査の結果が出ましたので、お渡しいたします」
一人ずつに封筒が渡された。この中に私の特殊能力が何か書かれているんだ。王子は早速、紙を出して検査の結果を確認し始めて、私もと検査結果の紙を取り出して確認する。
「えっ?」
思わず検査結果に驚き声を出してしまった。
(えっ、これほんとなの?)
私の特殊能力はリリネ君が教えてくれた、闇属性ではなかった――全く別物。
私の特殊能力は「オフトゥン召喚」と「癒し」(お布団の上でのみ効果あり)なんだか、この特殊能力って……リチャード殿下専用にしか見えない。