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第44話

「リチャード様⁉︎」


 私の叫び声に『どうされました!』と隣の給湯室と、入り口が開き、エプロン姿の側近リルと近衛騎士アラン様ともう1人、殿下の近衛騎士が部屋に入ってきた。


 彼らは、燃え上がるリチャード殿下を止めようとした。


「リチャード殿下、落ち着いてください」

「リチャード様、落ち着いて!」


「荒ぶる、気持ちを抑えてください!」


「うるさい、うるさい! 落ち着いてなどおれるか!」


 リチャード殿下の声と共に炎は勢いを増した。

 みんなは炎の熱さに吹き飛ばされて、殿下に近付けないでいた。


「……リチャード様」


「ミタリア様とリリネ君は少しでも離れて、炎が当たらない部屋の隅に避難してください」


 側近リルに部屋の隅へ行くよう、指示さてれた。


(目の前で燃え上がる炎、獣化する私たちは16歳ぐらいで特殊能力が芽生える。リチャード殿下の特殊能力は火なんだ、彼の怒りの感情に魔力が暴走してる)


 ――止めなくちゃ!


「リチャード様、落ち着いて」


 私は、怒り狂うリチャード殿下を腕の中に抱きしめた。



「「「ミタリア様⁉︎」」」



 それと同時に、私とリチャード殿下のアザがあるお腹が光る。嘘……炎が熱くない、これならばリチャード殿下を止められる。


「私は平気よ。みんなにお願いがあるわ……しばらく耳を塞いで、目を瞑っていてください」


 彼らは『かしこまりました』と、もふもふの耳を両手で押さえて、目を瞑ってくれた。


(今からすることは恥ずかしいけど……そんなこと、言っている場合じゃない)


「リチャード様……聞いて」


「…………」


 ――私の声も聞こえていない? 私は息を吸ってリチャード殿下に聞こえる様に声を張る。


「好きです、大好き。あなたが一番に好き」


「……ミ…………ミ、ミタリア嬢?」


 チュッと、怒りに燃えるリチャード殿下の唇を奪った。

 いきなりのキスに驚いた殿下に、もう一度キスして離れようとしたのだけど、ガシッと後頭部を掴まれた。


「んっ、んん?」


 リチャード殿下に「ちゅ、ちゅ」と何度も唇を奪われる。


「……はっ、リチャード様」


「ハァ、ハァ……ミタリア、ミタリア嬢好きだ。君を愛してやまない。ごめん……まだ、怒り狂う気持ちが収まらない……収めるのに君のが必要だ」


「へっ?」


 いまだ火を纏うリチャード殿下に、肩へと担ぎ上げられた。


「ちょ、ちょっ? リチャードさま、ま、まあぁってぇー!!」


 給湯室とは逆の扉を開けて入ると、私の腕輪を外してポイッと投げた。黒猫になった私はくるっと一回転して綺麗に着地する。


 ――もふん? この感触と、ふんわり感は高級お布団?


「ミタリア!」

「きゃっ」


 オオカミ王子にいきなりのっかかられ……ぎゅっと、もふもふの胸に抱きしめられた。そして、ほっぺをベロン、ベロン舐められる。


(は、激しい……)


 何度もベロン、ベロンして、気持ちが落ち着いてきたのか、殿下の火は消えていった。でも、まだ足りないらしく、グリグリ、グリグリと長い鼻でほっぺを力一杯に押された。リチャード殿下よりも小さい私には少し痛い。


「あ、あの、リ、リチャード様落ち着いて」


「ごめん、ミタリア嬢……気持ちが膨れ上がって、押さえきれなかった。クソッ、ミタリア嬢とみんなを危険な目に合わせてしまった……一歩間違えれば、うわぁっ――――っ!!!」


 悲痛な叫びと、リチャード殿下がガタガタ震えて、絞り出すように声を出した。


「本当によかった…………俺が燃え上がったき父上の部隊が『レジスト』をみんなにかけてくれた。俺に特殊能力が現れたときの為に……日々訓練してきたはずなのに。怒りに我を忘れるなんて……ぐっ」


 歯を食いしばり、涙声で、肩を落として落ち込むリチャード殿下。彼の頬を両手でモミモミして、頬を擦り寄せてスリスリした。


「……ミタリア嬢、ごめん。リル達は俺のことを怖がるかな?」


「リチャード様、悪い様に考えてはダメです」

「そ、そうだよな、ハハッ……ハハハ」


 ポロ、ポロッと殿下の瞳から落ちる涙を、肉球で涙を拭いたけど、リチャード殿下の涙は止まらない。


 しばらく殿下は『……よかった』と嗚咽を漏らして、体を震わせ泣いていた。私はそんな殿下の側に寄り添った。





 ♱♱♱




 泣いて、落ち着いてきたリチャード殿下と、並んでベッドに寝そべっていた。


「ねぇ、リチャード様」

「ん、なんだ?」


「リチャード様の特殊能力が判明しましたね」


「えっ? あ、あぁ、そうだな、俺は火属性か……ハァ、1度、獣化研究所に行き調べないと……な」


 渋い顔の殿下。

 わかる……研究所には嫌な思い出しかない。


「でしたら、私と一緒に研究所へ行きますか?」

「えっ、一緒に行ってくれるのか?」


「私は5月生まれですので……調べれば、私の特殊能力わかると思います」


「おお、そうだな……わかるな。よし、学園の休みの日に一緒に行こう……」


「はい」


 もうすぐ、私にも特殊能力が身にも付くはず。

 ヒロインの手紙にあった通り、私の特殊能力は闇属性なのかな。

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