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第43話

 ヒロインからの手紙内容は私が「転生者」なら分かると書いてあった。


 その内容はカーテン殿下は自分の欲望に忠実で、獣化する女の子を狙っている。……知っているかもそれませんが、この乙女ゲームには続編というか、追加ボックスがあったと書かれていた。


(え、追加ボックス?)


 この乙女ゲームが好きだった、私が知らないと言うことは……発売された時期は多くの仕事を抱え、会社から帰れない日々を送っていたときかな。――だって、知っていたら絶対買っていたもの。


 それか、追加ボックスの発売を知らないまま、私がミタリアに転生したとも考えられる。


 発売された追加ボックスの内容は大人向けで、18歳未満は買えなかったらしい。ゲームの内容はヒロインと悪役令嬢を手に入れた、鬼畜王子カーエン殿下が主人公の話。


(鬼畜王子って嫌な予感しかしない。それに何故、不人気のカーエン殿下が主人公なの?)


 息を整え、手紙の続きを読むと。


 このゲームを作っていた乙女ゲーム会社が、大人向けのゲーム会社に買収されたこのにより、キャラだけを使い、血迷った内容の追加ボックスが発売されたそうだ。


 元の乙女ゲームはヒロインの獣化をメインに作られていたから、ミタリアは獣化するとは書かれていない。


 だけど、追加ボックスでミタリアは獣化でき、特殊能力は闇属性。死ぬほど愛してやまない婚約者リチャード殿下に罵られて、捨てられ……カーエン殿下に連れてこられたとき、既にミタリアの心は病んでいた。


 それ以上にカーエン殿下の執拗な行為で、崩壊寸前のミタリア。このゲーム内のミタリアは獣化のまま、カーエン殿下と過ごす。


 さらに、壊れてしまったミタリアの心には「リチャード殿下が憎い」だけが残る。そして最後にミタリアは闇属性の魔法を使い、生まれ育った国を滅ぼしてリチャード殿下を道連れにして生き絶える。


(ヒェ……そのミタリアは怖い。それに特殊能力が闇属性って、もしかして黒猫が横切ると不吉? 魔女の使い魔だから、とかで決めてない?……そんな事ないよ、黒猫は可愛いよ)


 ヒロインからの手紙の最後にミタリア様、私が思い出した内容は以上です。この世界がゲームだけとは言えませんが……私はカーエン殿下が怖いのでお先に逃げます。


 ――ミタリア様も逃げて! 

 ――絶対にカーエン殿下に捕まらないでぇ!


 と、ヒロインからの手紙は終わった。


(こんなに必死だなんて、続編のゲームでヒロインも酷い目に合うのね)




 ♱♱♱




 ヒロインからの手紙を読み終わり、無意識にグシャッと手紙を握りつぶして、尻尾をパンパンに膨らませた。


 この手紙の内容からして、ヒロインも転生者なんだろう。しかし、思い出したのが追加ボックスの内容とは……ヒロインも怖かったね。


(でも、手紙の内容が乙女ゲームの中だからといっても安心できない。だって、カーエン殿下は獣化する子を狙っている)


「ミタリア嬢……平気か?」


「はい、リチャード様へいきです、リリネ君、お姉さんに「教えてくれて、ありがとう」と伝えてください」


「わかりました」


 ヒロインからの手紙は嬉しい。乙女ゲームでのカーエン殿下の本性もだけど、何度も読みたくない手紙の内容だった。で終わる話しだったけど。


「待て、そこで話を終えるな。その手紙は、尻尾をパンパンにするほどの内容なのか? ミタリア嬢、俺に手紙を寄越せ!」


 と、手紙を取ったリチャード殿下が途中まで読んで、怒りのオーラを纏ってしまった。


「はぁ? なんだ内容はぁ――俺のミタリア嬢を奴が狙っているのは分かっている。そんな事より……俺がミタリア嬢を捨てるだと、絶対にありえん! こんなに愛してやまないミタリア嬢を俺が罵るだと? ふ、ふざけるな! リリネ、こんなふざけたことをぬかす、お前の姉を今すぐここに呼べ!」


 こんなにもリチャード殿下が怒るなんて、いまにもリリネ君に掴みかかりそうだ。


「落ち着いてください、リチャード様」


「落ち着けるか! 嫌だ、俺がミタリア嬢と別れる話しは、嘘でも嫌なんだよ――絶対に!」


 リチャード様が声を上げたあと。リチャード殿下が持つヒロインからの手紙にボウッと火が付き、燃え尽きてしまった。


(えっ、火⁉︎)


 リチャード様は「グルルルルッ」と低く鳴き、体が炎に包まれた。

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