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第42話

 リリネ君が話があると、学園内にあるリチャード殿下の休憩室へと移動してきた。


 庭園をさるとき「僕だけ、のけ者かよ」と、カーエン殿下が囁いた声が聞こえたけど、みんなは聞かないふりをした。――それは、リリネ君はカーエン殿下が庭園に現れてから、彼をズッと警戒していたから。


 休憩室に着くと、リチャード殿下の近衛騎士となったアラン様は「自分は扉の前で警備いたします」といい、休憩室の扉の前で警備をはじめた。


「では、お茶の準備をしてきますね」


 側近リルは休憩室の隣りの部屋に行き、お茶の準備を始めた。この休憩室は――リチャード殿下の休憩室というより、王城で見た執務室と言った方がいいだろう。来客用のソファも真ん中に置いてあった。


「さぁ、座って」


 2人掛けのソファにリチャード殿下と私、反対側にリリネ君が座った。


「それでリリネ、俺達に話ってなんだい?」


「この見つけてもらった指輪……もしかしたら僕が寝ているあいだに、故意に取られたかしれません……リ、リチャード殿下、ミタリア様、お気を付けてください」


 私とリチャード殿下の腕輪を見ながら、リリネ君の衝撃な告白には驚いた。この獣人だらけの学園で、獣化する魔導具を外す者など……あ、いたわ。私の腕輪を気にするカーエン殿下だ。


 それに今日、リリネ君の指輪を見つけたのも彼だ。

 かなり怪しいけど、カーエン殿下を疑えない……誰もカーエン殿下が、リリネ君から指輪を取ったところを見ていないのだ。


「偶然に外れたのではなく、故意に誰かがリリネの指輪を取ったかもと言いたいのだな……リリネ、指輪をはめた手を見せて」


「は、はい」


 リチャード殿下はリリネ君の指に、はまった指輪を見て「うん」と頷いた。


「リリネが考えている通り、故意に外された……そう言ってもいいかもしれない。指輪は君にぴったりのサイズ、簡単には外れないだろう」


「やっぱり僕の指輪は誰かに外されたんだ……どうりで、姉が学園を怖がるはずだ」


(姉? リリネ君にはお姉さんがいるの?)


「リリネの姉? 姉がいるのか」


「はい、実は学園には双子の姉と二人で通うはずだったんです……でも姉は学園を嫌がり、僕だけ入学することになったんです」


 ――お姉さんが学園を嫌がった?


「そうか……リリネは姉に、学園を嫌がる理由を聞いたことがあるか?」


「理由は何度、姉に聞いても話してくれませんでした……でも姉から、この学園にミタリア様という公爵令嬢がいると……その令嬢に手紙を渡してと頼まれました」


「え、私にお姉さんからの手紙?」


 会ったことがない私のことを知っているなんて、リリネ君のお姉さんは私と同じ……転生者。自分が乙女ゲームのヒロインだと気付いて、この世界を怖がる?


 乙女ゲームの攻略対象達に愛されるヒロインのはず、何も怖がることはないと思うけど。


「リリネの姉が、学園を怖がっている理由がわからないな。その――リリネの姉からミタリア嬢にあてた手紙か。その手紙に怖がる理由が記されているのか? ……だが、なぜミタリア嬢に?」


 リチャード殿下の問いに、リリネ君は首を振り。


「僕にもわかりません……姉はミタリア様が手紙を呼んで、手紙の内容が分からなかったら、そのまま手紙を捨てて欲しいと言っていました……ミタリア様、姉からの手紙を読んでください」


 リリネ君は胸元から姉――ヒロインからの手紙を取り出した。

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