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第40話


 "厄介な人が来た"と思ったのは私だけではないはず。

 隣にいるリチャード殿下は私の手を握り、側近のリルは私達の側に待機して、兎ちゃんは疾風が如く庭園の端に逃げていた。


 その様子を見てもカーエン殿下は相変わらず、笑っているのか笑っていないのか分からない、糸目をさらに細めているだけ。


 みんなの反応は当たり前だ、カーエン殿下は人族でこの前の舞踏会のこともあるから、余計に警戒してしまう。兎ちゃんなんて、さらに離れて、米粒くらいにしか見えない。  


 カーエン殿下はクスッと笑い。


「なんだかお邪魔だったかな? みんなが探し物をしているみたいだったから、僕も手伝おうと思って来たんだけど……ねぇ黒猫ちゃん、あの兎ちゃんって獣化しているの?」


「え、ええ、そうですけど……」


「そっか……今、庭園近くの廊下で指輪を拾ったんだけど」


「え、指輪ですか?」


「そう、これなんだけど、みんなの探し物ってこれかな?」


 カーエン殿下は赤い石がはまった、シルバーの指輪を私に見せようと、近付いて来たのだけど。その視線は私の付けている腕輪で止まった。


「あれ? 黒猫ちゃんの腕輪……この前のと、デザインが変わった?」


 え?


「ミタリア嬢!」


 リチャード殿下が私の手を引き、カーエン殿下から離した。


「カーエン殿下、失礼。だが、あなたが見つけた指輪をミタリア嬢が見ても、獣化専用の魔導具の指輪かどうか分かりません。俺ならわかるので指輪を確認させてください」


 立ち塞がるリチャード殿下に。

 ピクリと、眉をひそめたカーエン殿下。


「そうなんだ……獣化するから黒猫ちゃんも分かるかと思ったのになぁ、残念。あ、あれ? リチャード殿下の腕輪も変わったね」


「ええ、変わりしたよ。そんな事は今はどうでもいい……その指輪を見せてください」


「はい、どうぞ」


 リチャード殿下はカーエン殿下から渡された、指輪を確認した。


「これは……獣化専用の魔導具だ。おい、そこの兎!」


「な、な、なんですか?」


 声を裏返して、どうしてか? 私達の近くに来ない兎ちゃん。ピンと耳を立て庭園の端で、警戒している様な素振りを見せていた。


「この指輪はお前の探し物か、こっちに見に来い」


「……は、はい、わかりました」


 兎ちゃんはぴょんぴょん跳ねながら、私達に近付いてくるのだけど、オドオドしていて警戒は解かないままだった。


(兎ちゃん、何かに怯えている様な感じがする)


 側に来た兎ちゃんに、リチャード殿下はカーテン殿下が拾った指輪を見せた。


「あ、それ! 僕の指輪です!」

「そうか、よかった」


「ありがとうございます、よかった……見つかって」


「お礼は見つけてくれたカーエン殿下に言ってくれ。それと兎、獣化を解く魔導具は俺達にとって大切なものだ、今度からは無くすなよ」


「わかりました。皆さん、本当にありがとうございました」


 兎ちゃんは私達にお礼を言い指輪を受け取るさい、獣化解除の魔石に触れてしまい獣化が解ける。その姿をリチャード殿下が見た途端『見るな!』と、私を腕の中に抱きしめた。


「リチャード様?」


「まったく……こんな所で獣化を解くな! ……ごめん、ミタリア嬢。だが、彼も女性に肌を見られるのは嫌だろからな」


「彼?」


 ――え、兎ちゃんは男性なの?

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