目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第36話

 リルと視察を交代したあと、リチャード殿下の部屋で昼食ように出店で買った、まんまるジャガイモをテーブルに座り食べていた。


 この、まんまるジャガイモの見た目がたこ焼き。

 外はカリカリで中はホクホク。真ん中には甘辛に味付けされたお肉が入っている。


(味はまったく違うけど……見た目はたこ焼きね)


 そのまんまるジャガイモを食べる私に、リチャード殿下は感想を聞いてくる。


「どう? まんまるジャガイモ美味しい?」


「はい、美味しいです。でも、さっきから私ばかり食べていますけど、リチャード様は食べないのですか?」


 いつもだと一緒に食べるのに、今のリチャード殿下はテーブルの反対側に座り、まんまるジャガイモに手をつけず見ているだけ。


「え、食べてるよ。ミタリア嬢、もっと食べて」


(なんだかおかしい? 前に、リチャード様はジャガイモが苦手だとおっしゃっていたわ)


「もしかして、リチャード様は私が美味しいとジャガイモを薦めたから、苦手だけど食べてくれたのですか?」


 そう聞くと。

 ブンブン、リチャード殿下は首を振る。


「違うミタリア嬢、ジャガイモは苦手だったが、今は好物だ」


「ではなぜ?」


 殿下は、一呼吸おいて話してくれた。


「このまんまるジャガイモは……俺がミタリア嬢に食べてもらおうと思って、城の料理長と一緒に考えた料理なんだ」


「え、リチャード様が考えた料理なのですか?」


 驚きの告白。


「ミタリア嬢は、ジャガイモ好きだろ?」


「ええ、好きです。リチャード様、それならそうだと早く言ってください、ゆっくり味わって食べたのに……」


「ごめん。ミタリア嬢の、素直な感想を聞きたかったんだ」


 謝るリチャード殿下に首を振り。


「まんまるジャガイモ、とても美味しいです。リチャード様も一緒に食べましょう?」


 と、まんまるジャガイモ一つ取り、彼の前に差し出すと、照れならパクッと食べてくれた。


「……ん、やっぱり美味いな」


 と、笑ったリチャード殿下は可愛かった。




 ♱♱♱




 収穫祭が終わると、寒い冬の時期がやってくる。


 私達が住むローランド国では雪が降り、いつもの馬車で王城には行けない。だけど、リチャード殿下は時間を作り、屋敷まで雪馬を走らせ会いにきて来てくれ、冬の間も時間がある限り一緒に過ごした。


 私のお腹のアザは、以前よりも模様の様なものが浮かび、そのことを王妃様に手紙で伝えた。返ってきた手紙に「リチャードと順調のようね」と書いてあり、王妃様のお子様もスクスクと育っており、春先には生まれるとも書いてあった。


(……何事もなくてよかった)




 時期は12月――リチャード様が時間をつくり、会いに来てくれている。私はナターシャが持ってきてくれた、紅茶とクッキーをテーブルに準備していた。


「リチャード様、お茶がはいりました」


「ありがとう、いただくよ。ミタリア嬢、この冬が過ぎて、春が来たら学園が始まるな」


「はい、学園楽しみです」


 クローゼットの横にかかる、サラーロン学園の制服に目をやる。制服はブレザー紺色のジャケット、学年でリボンとネクタイの色が変わり、チェック柄 の赤いプリーツスカートだ。


 そして、ヒロインの登場する。


 彼女と出会い、私達の関係はどう変わるのだろうか。

 乙女ゲームの通りに私は嫉妬で悪役令嬢となり、リチャード殿下はヒロインに攻略されるのかな。


 少し怖いけど、学園は楽しみでもあった。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?