父上やみんなが『チココを食べなくて良かったよ』と、涙するミタリアに抑えていた感情が溢れて、気付けば彼女の唇を奪っていた。
(……フワフワで柔らけぇ)
俺は彼女の唇にキスしたことには後悔しない、我が儘を言えば、元の姿に戻ったミタリアともう1度したかった。
ミタリアの濡れた手を拭き、彼女のブレスレットとメイドが用意した服を渡した。
「俺も着替えてくる」
脱衣所から出て濡れた服を脱ぎ、シャツとスラックスを履き替える……その間も鼓動は早まるばかりだ。
(……落ち着かねぇ)
それと同時に牙がうずうずしている、ミタリアを噛みたい、甘噛みしたい。キスをした後から、その欲は大きくなるばかりだ。
脱衣所から俺が選んだ服を着て出てきたミタリア、前も可愛いと思っていたけど、さらにミタリアが可愛いく見えた。
――抱きしめたい、ものすごく甘噛みしたい。腹のアザはムズムズして熱い。
♱♱♱
「お茶にしょう」
メイドが準備したお茶と桃をテーブルに置いた。
ミタリアが反対側に座ったのを見て、今日の話を切り出した。
「正直、驚いた――あの食べ物が俺たちにとって毒になるとは」
「そうですね。チココの他にも人族の国では食べられていても。私達、獣人には毒になる食べ物がまだ有りそうですね」
「有りそうだな、その逆もあるかもしれないから、一度、調べてみないといけない。あと食べてしまったときの、対処方も調べないと……ハァ、こればかりは人族のカーエン殿下の協力を仰がないとな」
こればかりは人が嫌だとか言っている場合ではない。
当初の話から半分以下とはなったが、ローランド国に援助してくれた人族……これからも人族と接触がある以上。やはり人族、カーエンの協力は鍵となるだろう。
俺たちは人族の食文化は知らない。
向こうだって俺たちの食文化は知らないだろう。
このことに関して、父上とも慎重に話を進めて調べなくてはならないが、奴は嫌いだ。
(あいつは絶対に獣化できるミタリアを狙っている。奴とミタリアが二人きりにさせないよう、俺が無理なときはリル、近衛騎士に頼めばいい)
「ミタリア嬢、桃を食べる」
俺がフォークにさして差し出すと、可愛く返事を返して、おずおず口を開けたミタリアの口に桃を放り込む。
美味しいと食べる彼女の唇に着いた桃の雫、それを指先で拭いペロッと舐めた。
――甘いな。
その俺の行動に一瞬で頬を染めた、ミタリアは席を立ち、遅くなるから帰ると言い出した。
(可愛い、頬が真っ赤だ、ミタリアは照れているなか……その頬に噛みついたい……今、気を抜けばゴクッと喉がなりそうだ)
今日の俺はいつもより欲望が大きい様だ。
ミタリアともう少し一緒に過ごしたかったが、時刻は夕方を回った頃か、止めることはできない。
「明日……(の午後、気を付けておいで)」
と言おうとした、そのとき。
部屋の扉がノックされ父上の伝達者が来た。
そのあと伝達者は客間を用意したから泊まるようにと、ミタリアに父上からの言葉を告げた。それに断ることをせず、お礼の言葉を伝えたミタリア。
(嬉しい……ミタリア嬢と今夜、一緒に過ごせる)
我慢できず抱きしめて甘噛みしたら謝ろう。
俺はすかさず、彼女と夕食の約束をした。