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第28話

 父上やみんなが『チココを食べなくて良かったよ』と、涙するミタリアに抑えていた感情が溢れて、気付けば彼女の唇を奪っていた。


(……フワフワで柔らけぇ)


 俺は彼女の唇にキスしたことには後悔しない、我が儘を言えば、元の姿に戻ったミタリアともう1度したかった。

 ミタリアの濡れた手を拭き、彼女のブレスレットとメイドが用意した服を渡した。


「俺も着替えてくる」


 脱衣所から出て濡れた服を脱ぎ、シャツとスラックスを履き替える……その間も鼓動は早まるばかりだ。


(……落ち着かねぇ)


 それと同時に牙がうずうずしている、ミタリアを噛みたい、甘噛みしたい。キスをした後から、その欲は大きくなるばかりだ。


 脱衣所から俺が選んだ服を着て出てきたミタリア、前も可愛いと思っていたけど、さらにミタリアが可愛いく見えた。


 ――抱きしめたい、ものすごく甘噛みしたい。腹のアザはムズムズして熱い。





♱♱♱





「お茶にしょう」


 メイドが準備したお茶と桃をテーブルに置いた。

 ミタリアが反対側に座ったのを見て、今日の話を切り出した。


「正直、驚いた――あの食べ物が俺たちにとって毒になるとは」


「そうですね。チココの他にも人族の国では食べられていても。私達、獣人には毒になる食べ物がまだ有りそうですね」


「有りそうだな、その逆もあるかもしれないから、一度、調べてみないといけない。あと食べてしまったときの、対処方も調べないと……ハァ、こればかりは人族のカーエン殿下の協力を仰がないとな」


 こればかりは人が嫌だとか言っている場合ではない。

 当初の話から半分以下とはなったが、ローランド国に援助してくれた人族……これからも人族と接触がある以上。やはり人族、カーエンの協力は鍵となるだろう。


 俺たちは人族の食文化は知らない。

 向こうだって俺たちの食文化は知らないだろう。

 このことに関して、父上とも慎重に話を進めて調べなくてはならないが、奴は嫌いだ。


(あいつは絶対に獣化できるミタリアを狙っている。奴とミタリアが二人きりにさせないよう、俺が無理なときはリル、近衛騎士に頼めばいい)


「ミタリア嬢、桃を食べる」


 俺がフォークにさして差し出すと、可愛く返事を返して、おずおず口を開けたミタリアの口に桃を放り込む。

 美味しいと食べる彼女の唇に着いた桃の雫、それを指先で拭いペロッと舐めた。


 ――甘いな。


 その俺の行動に一瞬で頬を染めた、ミタリアは席を立ち、遅くなるから帰ると言い出した。


(可愛い、頬が真っ赤だ、ミタリアは照れているなか……その頬に噛みついたい……今、気を抜けばゴクッと喉がなりそうだ)


 今日の俺はいつもより欲望が大きい様だ。


 ミタリアともう少し一緒に過ごしたかったが、時刻は夕方を回った頃か、止めることはできない。


「明日……(の午後、気を付けておいで)」


 と言おうとした、そのとき。


 部屋の扉がノックされ父上の伝達者が来た。

 そのあと伝達者は客間を用意したから泊まるようにと、ミタリアに父上からの言葉を告げた。それに断ることをせず、お礼の言葉を伝えたミタリア。


(嬉しい……ミタリア嬢と今夜、一緒に過ごせる)


 我慢できず抱きしめて甘噛みしたら謝ろう。

 俺はすかさず、彼女と夕食の約束をした。

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